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<雲に隠れた一閃>

今回はとうとう決着がつきます!!

 3日という俺が提案した期間が終わり、ついにリノの力を左右する時がやって来た。

 工業の盛んなエルエスの街も深夜帯はすでに静まり返っており、昼間人の通りの絶えない中央広場でさえも静寂のケープに包まれていた。

 現時刻午後11時。夜も去り、その余韻も去り、昼間のように空は青かったが、青い光が北で輝きやや肌寒かった。

 今日はリノを先頭にして、俺とヘネスとなっていた。

リノが先頭というのは少々心配だが、今に限っては仕方がないことだ。

「師匠、いました!」

そう言って指を指した方向には、間違いなくエルエスの亡霊――具現化したリノの魔力――が立っていた。

 どうやらあいつも約束の期間は動かなかったらしく、そんな噂話もなにも聞かなかった。

「私が、あなたを倒しに来たわ」

リノはすでにやる気のようで、真剣な表情に代わり、鞣し皮で作られたくすんだ色の鞘から水色の刃を抜いた。

また、相手のほうも同様に鞘から黒い刃を抜いていた。

 リノの剣が≪ブルーテイル≫なら、亡霊の剣はさしずめ≪ブラックテイル≫といったところだろうか。

 両者相手の顔を睨み合いながら、仕掛けるときを狙っていた。剣の先は常に敵へ向け、いつでも攻撃へと転じることのできるようになっている。

 細剣(レイピア)の長所は非常に軽く小回りがきくことで、刺突剣(エストック)までとはいかないが刺突攻撃に優れているため、敵に剣先を向けるか前は有効的だ。

 それに比べ短所だが、刀身も細くかるい所為で武器破壊されやすかったりする。他にもパリィの難易度が激上したり、斬撃の重みがなかったりする。

 しかし、今俺の前で繰り広げられ戦闘の場合は武器の優劣は関係ない。重要視されるのはそのものの腕のみ。

 そして、今の状況、3日間リノの面倒を見ていたが、勝てる見込みがあるとはとても言えないのだ。そのことは当の本人にも話してある。

 もしリノに勝つ手があるとすれば、それは試行錯誤を繰り返した末の結果だ。リノはクールかと思いきや若干天然なところがあることもわかったし、煩いことは身をもってよくわかった。しかし、リノは物覚えはかなり良かった。おそらく集中しきっていればかなり頭が冴える。もう、そこに賭けるしかない……。

 雲の切れ間から指した光を合図に、戦いの火蓋は切って落とされた。両者地面を蹴り、一気に標的へと近づく。

 先行は動きの早かった亡霊。勢いを殺さないまま相手の懐目掛けて切り込んだ。その攻撃のキレは目を見はるもので、リノも回避が遅れ左腕をかすってしまった。しかしリノもただではやられない。左腕をかすめた剣を追うようにして剣で弾き、亡霊のバランスを崩した。

 その隙を逃すことはなく、リノは最初に教わった技術であるスキル≪スラスト≫を放つ。真剣勝負にやや抵抗があるのか俯いていたものの、右手に握られたブルーテイルが亡霊の脇をえぐるように突いた。

 今の一撃はおそらくリノにとって大きな一歩となるだろう。そうなることを祈っている。

 先攻後攻ともにダメージを受け息が荒くなり始めているが、勝負はまだまだこれからだ。再び、武器を構えつつお互い睨み会う。

 しかし、前と違って今度はリノが斬る構えになっている。利き足を一歩後ろへ運び、剣先を下へ向け腰を低くした。なにか索を思い付いたのだろうか……。

 リノはその後まるで動かなくなり、カウンター狙いであることを俺に予想させた。しかしあの技はまだ一度も成功しておらず、リノがそれをこの状況で考えなしに行うとは思えない。だとすれば、別の可能性がありえる。

 そして、その可能性は早く現れた。リノは近づいてきた黒い刃に対し、剣を振り上げた。おそらく狙いは以前俺が広場で披露した≪武器破壊≫だろう。

 しかしそういきなりうまくは行かず、振り上げられた剣は標的とぶつかり合うのみで破壊することはできなかった。

 しかも自分の剣までもが浮いてしまい、相手と同じ隙ができてしまう。さすがは天然少女といったところだろうか。

 剣筋も乱れていて、当たったのが奇跡としか思えない。

 だがしかし、亡霊もこの程度では倒れない。脇をきられていようともなにもないかのように立ち上がった。

 リノが少し遅れ立ち上がるとそこにはすでに次の一手があった。タイミングを見計らったかのように必殺の≪スピニング・スプラッシュ≫を放つ亡霊。この戦いに水を指すような真似はけして許されない。けれども、今俺の腕は千切れて飛んでいくのではというくらいに力が入っている。

 こらえろ。こらえるんだ。リノはけして負けはしない。あいつは俺に言ったんだ。「絶対に力を取り戻しますよ!」って。

 俺は深く呼吸をして、自らの気を静めた。

 背後では、ヘネスが戦いの一部始終を見届けるかのような真剣の眼差しで戦いを眺めている。

 そして正面では、≪スピニング・スプラッシュ≫の舞うような攻撃を必死で受けるリノがいた。次から次へと迫る攻撃を剣で弾きながら、一歩、また一歩と押されていた。しかしすべてを弾き返すことはできず、着実に斬られ、完全に形勢逆転されている。

 そして、俺の覚えている限り最後の攻撃。ひとつ前の攻撃の所為でバランスを崩したリノにクリティカルヒットした。

 左肩を深く貫かれ、力なくリノの体は広場の西の大きな支柱に腰を落として倒れた。

「…………」

声がでない。叫びたくても本能がそれをさせない。ここで叫んでしまえばリノはきっとなにもかも失ってしまうだろう。今はただ、信じて運命を見届けるのみ。

――そして、とうとう最後の瞬間。バランスを崩し、左手が動かないリノに亡霊の怪しく光る黒い刃が迫った。そして、そのままリノの心臓へ……。


――この日、世界は絶え間ない闇にのみ困れた――。


 その時耳に届いたのはリノの雄叫びと、剣の交わり会う甲高い金属音のみだった。

ご閲覧ありがとうございました!

次回も是非読んでください!

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