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<3日目の戦いⅡ>

更新遅くなってすいません;

今回はなんか自分も寝ぼけながらでよく覚えていません……。

「リノ、行くぞ! 戦闘開始だ」

「はい」

 シルバークロスを左寄りに構えるエルナードと青い刃のレイピア≪ブルーテイル≫を構えるリノ。駆け出す2人の後方には街で買った魔導師用槌矛(スタッフ)≪レイ=ルジカル≫を左手にもったヘネスが立っている。

 そして前方、揺れた茂みからは、いまだになにも出ては来ない。

「まずは煙玉」

リノはエルナードに教わった索敵術ファインディングスキルを実行した。主に魔獣なんかが空気中の魔力を取り入れ自ら使用できるよう変換する器官|《魔性気道》――人間には存在しない器官――を通ると強い刺激を与える煙、気道流痛煙(ペインスモーク)を手のひらサイズまでに凝縮させた煙玉。

 これにより隠れることがままならなくなった魔獣が茂みから出てくるという寸法だ。

がしかし……

「でて、来ないですよ?」

「そう、だな……」

茂みからは一更になにも出てこない。もはやいないのではと思わせるくらいに。

「なんだ、なんも出てこねえじゃねえか」

「おかしいな、確かに何かの気配が……」

「夜の余韻で若干暗いから間違えたんじゃないのか?」

そうなのだろうか? 本当にただの勘違いなのだろうか?

 考えすぎと、自分に言い聞かせながらも、曖昧な最悪の可能性が脳裏を行くのを許してしまう。俺はそれを振り払うように首を左右に振るが、先ほど揺れた茂みから漂ってくる微かな血の匂いが曖昧な可能性をどんどん具体的かつ現実的なものに変えていく。

――それが俺たちに目に映るのに、大して時間はかからなかった。

 地平線を隠していた、揺れた茂み周辺の木々から青白い肌が顔を出し、大きな2本の角が草の中から出て、徐々に全身を現した。

 全長4mはある青白い巨体がこちらを眺め、そして、口から何かを吐き出した。

「これは、骨か?」

リノはその骨を見て、何かを悟ったように問いかけてきた。

「これって、まさかあれがレインファングを捕食してたってことですか?」

「そうなるな……」

 そう、姿を現した『アレ』が口から吐き出したのは、捕食したレインファングの骨だった。

「おいおい、こんなやつ見たことないぞ……。おいエルナード、こいつってもしかして――」

「……そうだ。こいつは原獣、《蒼炎山羊 プロム=リエス》。俺が知ってる中で最悪の原獣だ。そして、集えば災厄に匹敵するほどの力を発揮すると言う十二災獣(ゾディアック)の中の一匹だ……」

「おい、まじかよ」

この状況、もう逃げるしかない。正直言って俺たちにどうこうできるような相手じゃない……。

 俺は手に持つ剣の柄を強く握り、背後にいるリノとヘネスを見る。もしかしたらヘネスならリノを離脱させる事ができるかもしれない。

 背中を冷たい汗がそっと流れ、時間がまるで止まったかのように呼吸が落ち着き、辺りは静寂に包まれる。決断を迫られる圧迫感と原獣からくる威圧感からくるプレッシャーに押しつぶされそうになる。

 ここで決断を間違えれば、後ろにいる2人の未来を奪う結果になる。それだけは何があっても絶対に駄目だ。

 今は……

「即刻退避だ!」

俺の叫ぶ声音と共にリノとヘネスは後ろに向き直り、走り出した。途中リノが悪あがきをしようと、煙玉を投げようとしたがそれを止めた。原獣には魔獣と違って《魔性気道》が存在しないのだ。

「追いかけては来てないみたいだ。何とか逃げられるかも……!?」

 一瞬の安堵の言葉がでた刹那、目の前に驚きの光景が写った。左右から蒼い炎が迫り、行く道を完全にふさいでしまった。

「くっそ……。簡単にゃ逃がしてくれないか」

 いまのこの状況を打開する術を頭で考えつつ、俺は背中に納めた剣にてを回した。

 もし、ここで囮になればあとの2人は助かるかもしれない、と、そう考えたからだ。

「――誰かを見捨てるくらいなら、俺が囮になって食い止める……」 俺は剣を引き抜くと、足を止め振り返った。

「し、師匠何を?」

「お、お前まさか……」

…………。

「俺が食い止める。お前らは隙を見つけ次第逃げろ……!」

「待てよ。お前が強いのはわかったけど、勝算はあるのかよ?」

俺は顔を逸らし俯く。

「勝算は……ない」

「師匠それじゃ……」

 俺は口許を緩ませ、一瞬リノに向いてから、原獣へ振り返った。

 剣を肩のところへと運び、地面を強く蹴った。原獣の正面に立つのを極力避けるように右回りに駆ける。

 けして倒す必要はない。倒せなくても、逃げる隙さえできれば……!

 対大型魔獣戦闘法その1――足元を崩す。

 俺は原獣の背後まで回ると、勢いを殺さずに剣を降り下ろした。

 しかし、その一撃は高く跳躍した原獣を捉えることができず、いきおいは空へと空しく消えた。

 跳躍した原獣はどこにいくわけでもなくそのまま地面へと落下する。しかしただの自由落下ではない。驚くべき速度で、俺の頭上へと落下してきたのだ。

 紙一重で直撃は避けたものの、俺は地面との衝突からなる風圧と衝撃にいとも簡単に吹き飛ばされてしまった。

 リノとヘネスからの距離は十分にある。でも、まだ遠ざけたい。この距離ならまだこいつに埋められちまう……。

 俺は込み上げる焦りに歯を食い縛りながら、原獣を睨み付ける。この原獣をどうにかする術はないのかと頭をフル回転させながら。

――そして、導き出された答え……。

 目を潰す――。

 ガキの考えるようなものだが、それでも試す価値は十分にあった。

 もしこれが成功すれば逃げる時間が稼げる、と心のうちで確信した。

 頭めがけて直進するわけにはいかないので、やや側面よりで移動する。

 剣は斬るというより刺すための持ち方をしている。

 目の前から横凪ぎにするでもいいが、今は確実に仕留めたい。

 その為にも、突き攻撃で集中的に目を狙う。

 原獣の頭部は高い位置にあるため、俺は原獣の右前足付近で一度大きくステップを踏み跳躍した。怪しく光る両の目を目掛けて、銀色の刃を一閃したその瞬間――

「オオオオォォォッッ!!!」

「……!?」

剣が命中する1呼吸前、突如何かの叫ぶ轟音が耳に響き、その音の重圧感に体が言うことを聞かず、そのまま地面に落下した。

「なんだ……今の……」

俺は今の出来事を全く理解できないまま、ただ呆然と伏せていた。

 この場にはもう原獣はおらず、そこには焼けた草木と荒れた肉塊が転がるのみだった。


 この日、とあるルートが生まれた。

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