<青髪の少女Ⅲ>
今回は前回の続きです。
俺は今、中央広場にて助けた少女と共に、エルエスの街中を歩き回りながら情報収集していた。それも、またかなり突飛な話で……。
まぁとりあえず、日中の事だ。少女が俺の弟子になると言い出して聞かなくなったときからの話。
あのあと、俺はミディアムブルーの髪に、少しあせた金眼の少女に名前を聞いたのだ。
「んで、君、名前は? 弟子になるって言ったって、急には無理だろ? 親とかは?」
すると少女は俯いてこう答えた。
「名前は、リノ。リノ=セルメニー。両親はずっと昔に死んだわ……」
「そうか。悪い、変なこと聞いたな。んで、リノ、ん……リノ?」
ここで俺は昨日、いや一昨日のやり取りを思い出したのだ。あの黒い少女の言っていたリノとはこの子だったのだなと。それと、同じレイピアを持っていることにも驚いていた。あとから気づいたのだが、あの日見たものと同じものをリノは持っていたのだ。
「悪いんだけどさ、リノに姉か妹はいるか?」
その質問にリノは少し首を傾げたが、すぐにいないと答えた。姉妹という線はないこととなった。
次に気になったのが、褪せてはいるものの金色をした瞳だ。これはほぼ知られてはいないが、俺と同様、闇の力を継承している者の特徴だ。
ということから、今センスと特にへネスがいる状況で詳しい話をするのはいろいろと不味い。
「自分で連れてきて悪いんだけど、ちょっとはずしてもらえないかな?」
「訳ありみたいだね。行くよヘネス」
「襲うんじゃねえぞ?」
やや冗談めいた台詞を捨ててその場を去るヘネスを確認すると、俺は視線をリノに戻した。
「それで、君も闇の魔力を継承しているね?」
「…………」
俺のその言葉にリノは1度目を見開くと、何か悩んでいるようで顔をしかめる。だが、俺にはその理由はなんとなく分かったので1言加えた。
「大丈夫。俺も同じだから」
同じ、という言葉にリノは再び目を見開くと、今度はじーっと観察し始めた。
「そのようには見えませんけど?」
「ああ、そうだな。俺はハーフなんでな。普段は金色じゃないんだ」
リノは半信半疑といった様子だが、少し納得した感じで口を開いた。
「そうですか。私は闇と氷の魔力を……持ってました」
「過去形?」
持っている、ではなく持っていた。なぜ過去形なんかよく分からないが、リノの深刻になる顔から見るに、何らかの理由で失っているのかもしれない。それならば、瞳の色が褪せているのも分かる。
「それで、君はこの街に何しに来たんだい?」
「私は、この街にいるって噂されてるエルエスの亡霊を倒すために……」
再び俯いて声がかすれてくるが、ここで聞くのを止めるわけにはいかない。
「どうして?」
「そ、それは……」
「心配しなくても誰にも言わないし、俺も昨日遭遇してるし――」
「それは本当ですか!?」
これでもかというくらいに目を見開き、リノは俺に詰め寄った。正直先程からの表情の変化に驚き、つい情けない声で「あぁ」と言ってしまった。
「そ、それで、師匠はどうやって逃げのびたんですか?」
「え、いやぁ、逃げたってより、向こうから消えた」
そうだ。あの日あの少女は俺が闇の力を継承していると知るやすぐに姿を消したのだ。
「ということは、闇の継承者には何もしないってことか……」
「何か訳ありっぽいな?」
リノは先程からしばらく深刻な顔を続けており、それや褪せた瞳などから予想されるものはかなりのやっかい事だろう。いつもなら即刻退場したいところだが、おそらくこれは自分にも深く関わる事だ。逃げるわけにはいかない。
「話してくれないか?」
「……はい。実は、数週間前のことで、私が自分の村で朝目が覚めると、私がもう1人そこにはいて、復讐をすると1言いって出て行ってしまったんです。理由や方法原因などもよく分からず、それで聞いた噂を元にここに来たんです」
リノという少女はいままで何の魔力も持たずにこの街に来たのか。このあたりに村という村はないし、相当距離はあったはずだ。これといった武器もレイピアしかないし、先程の様子からして、あまり剣の腕も良さそうではない。この子はこれまでどうしていたのだろうか。
「そうか。俺も、その亡霊には用がある。夜までは出てこないから、宿で休むか?」
「て、手伝ってくれるんですか!?」
「お、おぅ」
俺は再び詰め寄るリノに情けない声で言った。
てな訳で、宿屋の相部屋で夜まで休み、今に至る。
女の子と同室というのはかなり抵抗があるが、俺もリノももう1部屋借りる金は持ち合わせておらず、相部屋になった。もちろん襲ってはいない。センスが途中立ち寄り、冗談めいた顔で笑って去っていった。俺はそこまで親しくなった覚えはないのだが……。
今日もまた足元には肌寒い風が通り、街全体が不気味な雰囲気をかもし出している。
それにしても……
「なんで俺は君を肩車してるんだ?」
「女の子になれるためですよ師匠」
この子は何を言っているんだか。だいたい、なんで敵を探して危ない道を歩いているのにこんなに陽気なんだ? そもそも俺よりリノのほうがあの少女に対する気持ちは強いはずだろ。どうしてこんなことしているんだか。
「あ、師匠、師匠」
「ん?」
先程まで騒がしかったリノの落ち着いた声につい首が動き、人差し指の指された方向を俺はじっと眺めた。
そこには昨日見た、黒いローブに身を包み、腰にレイピアを収める背の低めの少女の姿があった。
俺たちは、その姿に固唾を呑み、そっと歩み寄った。リノの表情はすでに真剣になっていて、何も言う事はできない。
ここからだ。大事なのはここから。力を持たないリノは俺がセーブしなくてはならない。
「はああああ!!」
「えっ、ちょっ!?」
今までの緊張は何処へという勢いでリノは駆けていった。
俺はそのあとを、意味も分からず追いかけた。
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