一
街が灯りを忘れた頃に路地を歩いている僕は、非行児であろうか。傍から見ればそれはそれは十分に非行している高校生である。もしも学業に関わる理由なら悠々と胸を張って言えたであろう。如何せん嘘を吐くのは得意ではない。なので僕は声を大にして言った。
「怪人を探していました」
これには流石に警察の格好をした人も困惑の色を隠せずいた。
「君ねぇ。嘘をつくならもうちょっとマトモな嘘があるでしょう。例えば塾に通ってました、とか夏期講習を受けてました。とかね」
「嘘では無いです。本当に探してました。その証拠にホラ、今日は赤い月が出ているでしょう。怪人は必ずいるはず」
「月が赤くなってるのは大気散乱のせいだよ」
そんなことは分かっている。
「まあ怪人がいたとしても、こんな夜更けだ。きっと床に付いている。だから君も帰りなさい、夜道は危険だ。何なら家まで送ろうか」
「いいえ、お気遣いは結構です。では、これで」
僕はそそくさと帰路へ向かう。今夜もう一度あの人に止められたら面倒なことになる。
厄魔は必ずいる。姿を隠している魑魅魍魎め、早く僕の所にやってこい。出会っても別に何をするわけではないのだが、厄魔を認識すれば淡々と流れるつまらない日常が非日常に変わると信じている。
その日は、家に帰ると直ぐ自室に篭りインターネットに明け暮れた。その日は、といったのだが、実際はこの所毎日である。一体全体何をやっているのかというと、ある都市伝説を探している。吸血鬼やスカイフィッシュなど大層なものでは無いのだが、無名という訳でもない。