第12話 世界で一番のヒーロー
真っ白な部屋の中でリオは目を覚ました。
どうやら、病室のベットの上みたいだ。
「私…」
しばらく、頭がぼ〜っとした。
そばに置いてあるケータイが鳴った。
『起きたか?』
カイからのメールだ。
すぐに返信した。
『今気が付いたよ。カイ、大丈夫?』
『心配ないよ。みんなも大丈夫だよ。』リオは、安心した。
ドアが開き、みんなが入ってきた。
「リィ姉。大丈夫?」
シノブが、聞き、みんな集まった。
「うん。何とかね。」
リオは笑顔で答えた。
話しによると、岡部に連れて行かれた時、何とかリオ達は助け出されて、3日間寝ていたようだ。
カイからのメールで、カイも大丈夫だと思いリオは安心した。
「リィ姉。傷もないし、明日には退院出来るみたいだよ。」
すっかり、よくなったワタルが答えた。
あの事件から3日、いつもと変わらない日だった。
「そういえば、カイの病室ってどこ?」
リオは、みんなに聞いた。
一瞬、間が空き
「今は…面会出来ないんだ。」
シノブは、後ろを向きながら言った。
多分まだ、傷が癒えてないんだなと思い、気にはしなかった。
次の日、リオとワタルは一緒に退院した。
カイとメールのやりとりをして、まだカイは退院出来ないみたいだ。
リオは、その日は家でおとなしく眠り、次の日に、カイの病室に行こうと思った。
『カイ、どこにいるの?』
カイにメールを送った。
『今は…オレは、いつでもリオのそばにいるよ。どんな時も…』
カイのメールを不思議に思いつつ、リオは寝た。
次の日、リオはカイの家に行った。
そこに、みんなは集まっていた。
「ヤッホー。今からさ、カイの所に行くけど、みんなも行こうよ。突然行ってカイを驚かそう。」
リオは明るく言った。
しかし、みんなの反応はなかった。
重い空気が流れ、沈黙が続いた。
「リオ、お前にさ、話さなきゃいけない事がある。」
リョウは、真面目な顔になり話した。
「あの日、実はお前達を助けたのは、消防士の人じゃなくて、カイなんだ。外に出てきた時は、もう…カイは、今でも意識が回復してないんだ。」
リオは話の意味がわからなかった。
「ウソだよ〜。じゃあ病院に行ってみようよ。」
みんなを連れて病院にでかけた。
長い廊下を歩き、着いた所でリオは驚いた。
そこには、色んな機械が体に付いてるカイが眠っていた。
「ウソ…だって、メール来ていたんだよ。」
カイからのメールを見せた
みんなは、また下を向いた。
「信じられないかもしれないけど、カイはもう意識は回復しないんだって。医者が言っていた。あの炎の煙りで脳がやられ、いつ死んでもおかしくないって…
そのメールは、カイの思いが多分来たんだよ。」
タカシは泣きながら話した。
「ウソよ…」
リオは、目の前の現実を受け止められなかった。
それから、一週間後。
まだカイは、意識は回復してなかった。
リオもショックで、家から出て来なかった。
突然ケータイが鳴り響き、リオが出ると
「リィ姉。カイ兄が…」
リオは病院に走った。
カイの様態が急変したみたいだ。
病院に走って、みんなと合流した。
「カイは?」
息を切らし、聞いた。
「まだ…」
まだ手術室から出てきてないみたいだ。
すると、扉が開き、先生が出てきた。
「カイは?」
リョウは、医者に近づいたが、医者は首を横に振り
「残念ですが…」
みんなは耳を疑った。
全員中に入り見た。
機械が外され、眠るようなカイがいた。
「おい、冗談だろ?カイ!!」
リョウは、近寄り体を揺すったが、反応はなかった。
「いやだ。カイ〜」
リオの鳴き声が響いた。
目の前の現実に、みんなは泣いた。
「くそ。」
タカシは、壁を殴りつけた。
「カイ兄…」
ワタルも泣きながら、カイを見た。
リオは、しばらく泣き、ゆっくり立ち上がってカイに近づいた。
「カイ…」
カイを見て、リオは微笑みを浮かべた。
「カイ…おはよう。早く起きなよ。みんな待ってるよ。」
リオはカイに語りかけたが、変わらなかった。
「リオ…もうやめろ。」
リョウは、リオを離そうとしたが、リオはリョウを拒んだ。
「カイ…早く起きなよ。カイ?」
リョウは強く拳を握り
「やめるんだよ。リオ…カイは…もう…」
リョウは、リオに叫んだがリオは聞かなかった。
「早く起きないと、みんな待ってるよ。カイの好きな宴しようよ…」
それでもリオは、カイに話した。
「リィ姉…もういいよ…」
た〜け〜は、泣きながら言った。
「早くしなきゃ、置いていくよ。カイの好きなお菓子だってあるんだからさ…
みんなもいるよ。
た〜け〜も、ホクトも…」
みんなは、泣き続けた。
「シノブも、ほらワタルも元気になったんだよ。トキもいるし、タカシやリョウだっている。みんな、カイが起きるのを待ってるよ。
早く起きなよ。
私だって…私だっているよ…」
リオの涙がカイの頬に落ちた。
「ほら、またみんなで、お酒飲んで、騒いでさ…またカイがバカやっちゃうね?また、みんなで楽しく過ごしてさ…イヤな事とか忘れようよ。
みんな、ここにいるんだからさ…
だから…お願い…起きて…」
どんどんと、リオの声はかすれた。
リョウは、涙を流しながら、
「カイ!!」
叫び続けた。
「カイ兄」
「カイ兄!」
みんなも、カイの名前を呼んだ。
リオは、ゆっくりと深呼吸して
「カイ…お願い…起きて…
カイ…愛してる…」
カイの胸に顔をうずめた。
「…リオ?」
みんな、泣き声を止めた。
リオは、ゆっくりと顔を上げた。
「リオ…泣いているのか?どうした?
辛い事でもあったのか?
オレが守ってやるから…だから泣くな」
カイの手が、リオの涙を拭った。
静かに首を横に振り、
「ううん。カイが…いることが幸せだからだよ。カイ…おはよう。」
リオは笑った。
「ああ、おはよう」
カイの言葉を聞いた瞬間に、みんな声をあげ喜んだ。
奇跡的にカイが生き返った。
それから、1ヶ月後。カイは退院した。
「やっぱり、外だな。」
大量のお菓子を持ちながらカイは、病院をあとにした。
「ったく…普通退院した直後に、お菓子を買い尽くすかよ。」
リョウは呆れていた。
「まったく、カイ兄、生まれ変わって来いよな。」
た〜け〜も、呆れていた。
何はともあれ、カイは生き返り無事に退院出来た事が、みんなは嬉しそうみたいだった。
あれから、5ヶ月がたった。
「よし、こんなものかな?」
カイは荷物をまとめていた。
「若…明日いよいよ出発ですか?」
小早川はカイに聞いた。
「ああ…明日は、みんなで見送りに来いよ。」
カイは、高校を辞めて前から決めていた、海外留学に行く事にした。
その事は、みんな知っている。
青龍会の人達も賛成した。
次の日。
空港には、みんな集まっていた。
「カイ、元気でね。ちゃんと電話はするように!」
リオは、カイに言った。
「リィ姉。浮気をしないように注意したほうがいいよ。」
後輩達は、2人をからかった。
「若、私に青龍会をお任せください。会長の名に恥じないように、しっかり守ります。」
小早川は、カイに決意した。
「ああ、オレがいない間頼むな。」
カイは小早川に言うと、隣にいたリョウやタカシも見た。
「あのさ、あそこに持って行くのか?それ…」
リョウが指差した場所には、大量のお菓子が入ってる袋があった。
「だって…飛行機で食べたいからさ。」
カイは、笑顔で答えた。
「そろそろ行くか…」
カイが荷物を持ち、後輩達の前に行った。
「しっかりやれよ。頼むぜ。」
そう笑顔で言った。
「カイ兄じゃないから平気だよ。」
みんな笑顔で言った。
「じゃあ行ってくる。」
カイは後ろを向き、歩いた。
しばらくカイの姿を見ていた。
「バカ…泣くなよ。」
た〜け〜は、シノブに言った。
「そんなお前も…」
後輩達は、みんな泣いていた。
カイが、見えなくなろうとすると、
「カイ兄!!」
ワタルが呼び止めた。
カイは、立ち止まった。
「カイ兄!オレ、いつまでもカイ兄の弟でいるからね。」
ワタルは、涙を流しながら叫んだ。
ホクトも前に出てきて
「カイ兄。オレ、彼女を絶対に守ってみせるからね。」
次はシノブが出た。
「カイ兄。オレは、仲間を大切にするからね。」
トキも出た。
「カイ兄。今度は、みんなを守るように強くなるからね。」
た〜け〜も、出た。
「カイ兄。オレ、親父を絶対に超えて見せるからね。」
それぞれ、カイに約束した。
「頑張れよう!またな。」
そう言って、カイは旅立って行った。
三年後…
「ったく…何してんだよ。アイツ…」
スーツ姿のリョウは、廊下にいた。
「まあまあ、そろそろ来るんじゃないか?」
タカシは、言った。
三年の月日で、みんなは変わった。
た〜け〜は、ジムを継ぎオーナーとして、若い奴らを鍛えていた。
ホクトは彼女とできちゃった結婚し、今は育児に奮闘中だ。
シノブは、高校を卒業した途端に料理人になると言い出し、板前の見習いとして修行していた。ワタルは、夢だった海上保安官になるべく、勉強していた。
それぞれ、夢に向かって過ごしてきた。
今日は、久しぶりに集まっていた。
「マジに遅いんだけど…誰の結婚式だっつーの。」
リョウはイライラ度MAXにきていた。
そんな時。
「ゴメンゴメン。」
カイが走って来た。
「遅い。つーか、自分の結婚式ぐらい遅刻せずに来いよ。」
リョウはカイに怒鳴った。
「とにかく、早く会場に行こう。」
タカシとリョウとカイは走って、会場に行った。
扉を開けると、懐かしいメンバーが揃っていた。
「本当に何も変わってないなぁ。カイ兄は。」
カイが、ゆっくりと前を見るとカイの結婚相手がいた。
「逃げ出したと思ったよ。」
カイは、その人を見ると驚いた。
「本当にリオか?」
リオは、キレイなドレスを着ていた。
「早くしなよ。あなた」
リオは笑いながら、カイに言った。
そして、結婚式は無事に終了して、二次会が始まった。
「何はともあれ、ここまで来るのに、いろいろあったな。」
た〜け〜は、今までの事を思い出していた。
「本当だよ。」
後輩達はみんなカイを見た。
「バカで、子供っぽくてエロくて、そして、やっぱりバカだけど、世界で一番のオレ達のヒーローだよ。」
ワタルは、カイを見た。
カイは、ケーキを持ちながら叫んだ。
「よっしゃ〜。騒ぐぞ〜。」
大切な仲間達とともに、いつまでも…