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012 蠢く夜の王《ナイトメア》 改稿版

どうしても納得がいかなかったので一部書き換えさせてもらいました。



「はっ!」


 僕は大きく後ろに跳躍し、一度大きく距離を取ってから詠唱を行う。


「聖なる光よ、我が右手に集い、闇を切り裂く刃と成れ。 シャインエッジ!」


 右手に作り出された光の刃を、僕は蠢く夜の王(ナイトメア)に向かって放つ。

 放たれたそれは、蠢く夜の王(ナイトメア)に当たり、その体を切り裂き、その体の一部を分断する。分断されたそれはびしゃりと地面に液状に広がると、また本体の方にへとにじり寄る様に戻り、また一つにへと形を形成する。

 限が無い。だけれど、攻撃が通らない訳でも無い。

 無敵の怪物ではなかったと言うだけでも、救いではあった。

 小一時間戦闘してみて、物理的攻撃は当然の様に通らなかったが、攻撃魔法、特に光魔法は目に見えて効力を発揮している。

 このまま魔法攻撃を続ければ、勝ち目はあるだろう。 

 そう、勝ち目はあるのだ。


「このまま続けられればの・・・話だけれどね」


 確かに、攻撃は効く。その証拠に蠢く夜の王(ナイトメア)の姿は戦闘開始時点より、幾分小さくなっている。こういった、実体のないタイプの魔物は実体のあるタイプの魔物たちとは違い、目に見えて血が出たり損傷したりはしないが、その造形に変化が現れる。その中でも一番一般的な造形の変化は体の縮小で、蠢く夜の王(ナイトメア)もその例に漏れていないようだ。

 だけれど、蠢く夜の王(ナイトメア)はあまりにも大きすぎた。

 蠢く夜の王(ナイトメア)の造形は分かり易く言うなら『真っ黒なスライム』といった具合。だけれどその様は・・・小さな山一つ動いているかの様だった。

 これが、少しばかり小さくなったところで何が違うと言うのか?

こんなものを相手して、MPが持つ訳がない。

実際問題、今の僕の手持ちのMP回復のアイテムは、マジックボトル一本しか残されてはいなかった。回復アイテムだって、もう底を尽きていた。

 それに悪夢を見せる能力。その攻撃の方法が分からない以上、無暗に接近できず遠距離からの魔法攻撃しか出来ない為、威力も弱いものばかりで戦うしかない。

 救いだったのは、動きの鈍さと攻撃の種類の少なさ。自分の体を切り飛ばしたような黒い塊を飛ばしたり、鞭のように伸ばしたりすることしかしなかった事だが、それでも僕の体力はジリジリと削られた。

 もう、どう考えても勝ち目など無かった。

 

「全く、締まらねえな、僕の人生は」


 僕は、刀を地面に突き刺し立ててから、最後の一本のマジックボトルを取出す。それを煽る様にして飲んだ

 もちろん、マジックボトルは酒ではなくMPを回復させる薬だ。

 だけれど、今は酒でも煽りたい気分だった。


「魔界最強の騎士とか、凶暴な魔物なんかに殺されるなんてなら、勇者の最後に相応しいだろうけど、こんなどうしようもない化物にやられて終わるなんて、これじゃあ犬死じゃないか」


 僕はマジックボトルを一気に飲み干し、地面に投げる。

 カラカラとマジックボトルの空き瓶が転がって行った。


「全く、なんだったんだろうな。

勇者として育てられて、仲間を連れて旅に出て、戦い続けて、何度も死にそうになったのに、まるで強くなれなかった。

 なんだよ、勇者が足手まといって? 力は僧侶のミルラと大して変わらないし、身の守りなんて魔法使いのマリーにも劣った、素早さだって、戦士のアーク以下、HPもMPもパッとしない。これの何処が勇者だって言うんだよ」


 新月だからか、夜空には数えんばかりの星が輝いていた。

 そんなん些細な事まで忌々しく感じられた。

 僕は、あまりにも器の小さな男だった。


「挙句の果てが『旅を辞めよう』だもんな。

 そうだよな、俺みたいな出来損ないの勇者なんかといたら死んじまうもんな、旅なんて続けられないよな。

 だけどさ、俺は勇者なんだよ。

 俺が死なないと、次の救い手が生れないんだよ。

 使えないなら早いとこ死なないと、世界に迷惑がかかるんだよ。アーク。

 お前は優しいから、黙って消えずに僕を説得しようとしてくれたが、駄目なんだよ、僕は死なないと。

 足手まといの勇者なんて、世界は望んでいないんだよ」


 夜空の星々を裂く様に、一本の黒い線が入る。

 それが、僕に目掛けて落ちてくる。

 だけれど、僕は動かない。


「全く、嫌な人生だったよ」


 そうして、僕は目を閉じた。









「トウヤァ!! にげてええええええぇ!!」






「ぐはぁ!?」


 僕の体は、突然の衝撃を受けて、右に吹き飛ぶ。

 二度、三度と地面に体を打ち付け、ゴロゴロと転がり止まる。

 なんだ? 何が起こった?

 僕は身を起こして、それを見た。


「ううう、あううう・・・」


 その足に、黒いものに巻きつけられたギンカがそこに居た。

何がどうあって、こうなったかは分からない。

 だけれど、ギンカが僕を助けてくれたことだけは確かだった。

 昨日の内に、ここから離れたんじゃなかったのか? なんでここにいる? なんで僕の様な奴を助けた? いくつもの疑問が僕の脳裏を過る。

 いや、そんな事は、どうでもいい。

 はやく、助けなければ。

 僕は、彼女に駆け寄ろうと足を踏み出す。

 だけれど、


「に、にげて、はやくにげてぇ!」


 そのギンカの口から出たものは、拒絶の言葉だった。

 死を覚悟し、死を受け入れようとした僕に逃げろと、恐怖に震えた声で言う。

 

「うっ、うううううう」


 恐怖に引き攣った顔からは、大粒の涙がボタボタと落ちる。

 ギンカの体は、ズルズルと後ろにへと、あの化け物にへと引き摺られていく。

 それに近づいてくるように、本体の方もまるで押し寄せる津波の様に、地響きを上げながら這い寄ってくる。

 それに抗おうと、ギンカは爪を地面にたてる。

 だけれど、止まらない。

 ズルズル、ズルズルと、ギンカの体は引き摺られていく。

 それでも、


『逃げて』


 泣きながら、顔を涙でぐしゃぐしゃにしながら、ギンカは言う。

 僕には、それが耐えきれなかった。


「なんで、なんで僕を助けた! 僕なんて生きる価値のない人間をなんで助けた!! 僕はもう死にたかったのに、早く終わらせてしまいたかったのに・・・なんで、なんでだよ!!!」


 気が付いたら、僕は叫んでいた。

 僕は死んでしまいたかった。

 せめて、誰かを守って死んでしまいたかった。

 なのに、なんで守ろうと思った奴に僕は救われている。

 それは、あまりにも酷いじゃないか。

 僕は、最後の最後まで己の無力さに打ちひしがれなければならないのか?

 死の寸前まで、僕は、己の弱さを悔いなければならないのか?

 そんな思いが、口から出る。

 ギンカを責める様に、呪詛を吐く。

 僕を助けようと、そう思ってくれた少女に浴びせる。


「お前は、僕の邪魔をしただけだ!!」


 ああ、僕は何処まで堕ちればいいのだろうか。

 もう、死んでしまいたい。





「・・・ごめん、なさい」


 彼女は泣いていた。


「ごめんなさい」


 ズルズルとその体を引きずられて、たてた爪に力を籠めず、力無く泣いていた。

 この世に絶望したように、その眼を濁らせて。

 それはまるで、僕の眼の様だった。






 僕は、ギンカにあんな眼をさせたくて喚いたのか?

 僕の様に、死にたいと思わせたかったのか?

 だったら喜べ、成功した。

 ギンカはもう死んだような眼をしている。

 まるで、僕の様にこの世に絶望しているぞ。

 喜べ。

 喜べ。

 喜べよ、僕。

 喜んでみろよ!






「ふぅざけるなぁああああああああああああああああああ!!!!」







 僕は、全身全霊を込めて己の頬を殴った。

 そして、吼える。


「うがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 僕は駆ける。

 少しでも早く、脚を動かす。

 僕は一体何がしたかったのだろう。

 死にたい死にたいと喚いて、他人もそれに巻き込みたかったのか?

 そうだとしたら、僕は救いようのない馬鹿だ。

 この世の不幸を背負った気にでもなっていたのか?

 そうだとしたら、僕はどれだけ思い上がっていたんだ。

 僕はただの勇者だ。

 勇者なんて大それた名前の付いたただの人間だ。

 そんな事が、できる訳も無い。

 僕は、自分が可哀想な奴だと思いたかっただけ。

 不幸を背負って見たかっただけ。

 そんな馬鹿だ。


「この世に住まう光の聖霊達よ我が言霊に答えたまえ、我が右手には聖なる木槌を、我が左手には真実の剣を与えたまえ―――――」




 己の全ての魔力を、その一つ一つの言霊に注ぎ込む。

 己の全ての生命力を、その一つ一つの言霊に捧げる。

 枯渇する魔力に、脳が悲鳴を上げる。

 失われていく生命力に、肉体は破壊を告げる。




「聖なる木槌は罪深き者に鉄槌を下ろし、断罪する真実の剣は罪深き者を断罪す――――」




 脳は、沸騰するように熱を持ち、その中身をかき回されたような痛みと吐き気を催す。

 肉体は、ブチブチと筋肉の繊維が切れる音を鳴らし、体中には亀裂のような切り傷が生れ、血が噴き出す。

 それでも、僕は唱え続ける。

 僕は、唱えなければならない。




「神の裁きは闇を切り裂く大いなる閃光と成りて、天より降り注げ―――――」




 途切れようとする意識を、無理やり止め、唱え続ける。

 倒れ行く体を、無理やり起こし、走り続ける。

 死んでも構わない。

 だけれど、死にたいとは思わない。

 あいつに、ギンカに、僕は謝りたかった。

 ギンカに、心の底から謝りたかった。

 



「神の怒りをその身に受けよ――――」




 だから僕は、あいつを救おう。

 たとえ、死んだとしても。

 救ってみせる。




「ホ―リージャッチメントォ!!!」
















 

 ここより西の王国、グレルリア王国ではこんな目撃証言が集まった。

 闇夜を切り裂く光の洪水。

 神がこの世に舞い降りた。

 この二つは、後々語り草として、広く世に知ら締められる事となる。



 

 そうして、この日から歴史上最後にして最弱の勇者の伝説は、始まった。


今回使用した魔法

シャインエッジ 光魔法 MP5

生成した光の刃を放つ攻撃呪文。

使用MP、威力共に優秀で遠、中、近距離にも対応できる。

トウヤのお気に入り。


ホ―リージャッチメント 極大光魔法 MP80

天空より、神の裁きを振り下ろす。

勇者のみが扱える極大光魔法。

威力、範囲に優れているが、その使用MPの多さで使い勝手は悪いがトウヤが扱える魔法の中で一番の威力を有する。


今回使用した特殊技能

代償術式 応用魔法

代償を払うことにより、特殊効果の付与、威力の強化、詠唱の破棄を可能にすることができる術式。

本文中では記載されていないが、今回トウヤはホーリージャッチメントに代償術式を組み込んでおり、全魔力と全生命力を代償にし威力の強化を行っている。


一般的に多用される詠唱の破棄についての説明。

使用魔力を増やすことで行われる事の多い詠唱の破棄だが、使用者の魔法の実力によって威力、射程距離、命中精度が下がる。

トウヤは魔法の使用に長けており、また一人旅の関係上詠唱の破棄を多用していたため、代償術式は得意としている。


術式についての補足説明。

説明をしていなかったので、この場で簡単に説明したいと思います。

術式とは魔法に組み込み効果を付けるもの指す言葉です。

これは詠唱などとは違い、言葉にするようなものではなく頭の中でイメージして、魔法に効果を付属させます。

詠唱の破棄で説明すると、詠唱を言葉としてとして口に出さず、頭の中で詠唱をしている自分をイメージし魔法を発動させる、という感じです。

これは上記で説明している詠唱の破棄をした場合の威力、射程距離、命中精度が下がる事と関係しており、つまり、イメージが上手くいかないと威力、射程距離、命中精度が下がるという結果に繋がります。



後書きの後書き


もしも、前のものそして今回のものも読んでくださった方がいましたら、本当にありがとうございます、そして、申し訳ありません。

後々に読み返してみて、これはないと僕の中で結論がついてしまい、こういったことになってしまいました。

前の方が良かった、今の方がいい、どっちも糞、などいろいろ思うところはあるでしょうが今後ともよろしくお願いします

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