009 再び洞窟へ
デコリさんとの話が終わってからある場所に寄り、その後食料と女性物の服を一式買って洞窟へと向かった。
二度目という事と昨日の様に警戒する必要が無い為、半分ほどの時間で難なくギンカが生活している洞窟の入り口まで辿り着く事が出来たが、僕はそこで尻込みしていた。
どんな顔をして会えばいいのだろうか?
僕は一人頭を抱える。
乙女か僕は、とも思ったが。僕にとっては切実な問題だった。
というか、昨日の話を聞いて何食わぬ顔で会えるか! という話である。乙女関係ないし、誰だって頭抱えるわ。
一応「明日も来る」と入っておいたが、もしかしたら昨日の内にここを出て行ってしまったという可能性もある。
だったら行く必要ないんじゃない? と、臆病な僕は言う。
馬鹿野郎! まだいるに決まってるだろ! ちゃんと責任とれよ! と、責任感の強い僕が言う。
尻尾もふもふしたい・・・と、煩悩全開の僕が言う。
・・・耳だって触ってみたい! と、僕は思った。
「よっしゃあ! いくぜ!」
僕は、洞窟へと突撃した。
中に入ると、ギンカが隅の方で丸くなってガタガタと震えていた。
え、何この状況?
「お、おい、どうしたんだよ?」
僕が堪らずそう問いかけると、ギンカはビクッを反応して顔を上げる。
その顔は、泣き腫らしたように腫れ上がった目をしていた。
「と、トウヤ・・・?」
「ああ、そうだよ。トウヤだよ。お前どうしたんだ? 一体何があった?」
僕はギンカに近寄り、屈んで目線を合わせてもう一度問う。
ギンカはしばらく僕を見つめた後に「な、なんでもないよ」と僕から視線を逸らした。
僕には、とても何にもなかったようには見えなかった。
「・・・そうだ。腹減ったろ?」
だけれど、僕にはこんな事しか言えなかった。
僕には、どうしていいか分からなかったのだ。
「村で食い物買ってきたんだ、ギンカは果物が好きなんだっけ? ほら、リンゴなんてどうだ?」
僕はそう言って、袋からできるだけ色好きの良く大きなリンゴを取り出して、彼女に差し出した。
我ながら美味そうなリンゴを選んだと自負できる。正直、僕自身で食べたいとさえ思う逸品である。
さあ、これでも食べて落ち着きたまえ!
作戦名『困った時の食べ物』である。
ギンカはそのリンゴを見て、泣き出した。
僕は本当にどうしていいか分からなくなった。
「な、泣くほどリンゴが嫌いだったのか!? ごめんな、他にもいろいろあるから―――」
どうすれば、どうすれば、と女の子の涙に耐性の無い僕は見っとも無く狼狽る。
「ち、ちぎゃう、ちがうの、そうじゃないの!!」
「おおう!?」
急な大きな声に驚いて、僕はギンカを見据える。
「ごめんなさい、ごめ、んなさい・・・・う、うあああああああああああああああん」
耐え兼ねた様に、彼女は泣き出した。
ボロボロとボロボロと大粒の涙を流して。
僕はギンカの頭を撫でながら「大丈夫、大丈夫だから」と言う事しか出来なかった。
訳も分からぬまま、僕はギンカを撫で続けた。




