成功した男
心から成功したいと思っている男がいた。
野心にあふれ、貪欲だった。
成功のためなら、周りの人間などどうでもよかった。
友情は利用するもの。
信頼は踏み台。
男にとって他人は、上へ登るための足場にすぎなかった。
男はキャラクタービジネスを始めた。
一度当たれば利益は莫大
商品化、映像化、海外展開。
笑いが止まらないと踏んだからだ。
そのキャラクターは、ずんぐりとした体に、丸い鼻。
小さな目、愛嬌のある笑顔。
誰にでも親しみやすく、子供に受けそうな姿だった。
男は徹底的に売り込んだ。
ぬいぐるみ。文房具。菓子。アニメ。
街にはその顔があふれた。
読みは当たり、大成功した。
男は豪邸に住み、高級車に乗り、
テレビでは「夢を叶えた男」ともてはやされた。
ある日、男は巨大テーマパークの開園式に招かれた。
中央には、十メートルを超えるキャラクター像。
自分の成功の象徴だった。
男が満足げに見上げた、その時。
像がゆっくりと動いた。
ざわめく観客。
報道陣の悲鳴。
キャラクターはぎこちなく首を回し、
まっすぐ男を見た。
そして、甲高い声で言った。
「ボクのおかげで、成功できてよかったね」
会場は笑いに包まれた。
だが男だけは笑えなかった。
キャラクターは続けた。
「ところで、キミは誰のおかげで生まれたの?」
男は答えられなかった。
気づけば、親も友人も
誰一人として開園式に来ていなかった。




