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追放されたので理想の職場を創った  作者: 相野仁


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第七話

 俺たちが次に向かったのは薬草摘みだ。


「採取した数で報酬が増えるんだからやらない手はないですね」


 都市の外に出たところでアロンが言う。


「生態を確認してからだね。採りすぎたらあとで困るから」


 俺は一応たしなめておく。


「あっ」

 

 アロンはうっかりしていたと舌を出す。


 青い癒し草は効能が高くないかわりに生えやすいと言われているので、滅多なことはないと思うけど。

 

 都市の城壁から離れたところで、男女四人が何か話し合っている様子を目撃した。

 

「何か言い争いっぽいです」


 アロンが苦手そうに顔を伏せる。


「わ、わたしもあんな経験が」


 キーラもトラウマを刺激されたようだった。


「なるべく速めに移動しようか」


 下水道の仕事を無事終えたいい雰囲気が、あっという間に吹き飛ばされてしまった。


 彼らには彼らの事情があるんだろうけど、間が悪い。

 自分たちのメンタルケアのためにも、さっさと離れてしまおう。




 都市ラキーザから一時間ほど歩いた林に着き、目当ての薬草を探す。


「見つけました」


「こっちも」


 さすが初心者向けの依頼だけあって、わりとあっさり俺たちは目標達成した。


「次はどうしますか?」


 キーラが訊いて来る。


「この林の生態的に、採取してよさそうなのは『黄色月枝草』かな」


 俺は推測した。


「ああ。解熱薬を作るときに使うらしいですよね」


 キーラは知っていたらしく納得する。

 

「他はラキーザで需要があるかわからないし、今日はやめておこう」


 ひとまず様子見といこう。

 薬草の品質管理はけっこう難しいのだ。


 ふたりは賛成してくれたので、『黄色月枝草』だけ数本採る。


「何か起こる前に林を出ようか」


「さっきウィルオウィスプに遭遇したばかりですもんね」


 と言ってキーラが笑う。

 まったくである。


 対処できたのでまだマシな部類だっただろう。


「林だと熊くらいはあり得るしね」


 と俺は言う。


 都市があって冒険者協会の支部が設置されているんだから、冒険者の手には負えないバケモノはいないはずだ。


 いるなら注意喚起があるし。


「遭遇したくないです」


 キーラが困った顔をして、アロンがうなずく。

 だから俺は「探してみる?」というジョークを口にするのはやめた。


 何となく会話が途切れて、林から出たら空が茜色になっていた。


「日が暮れる前にはラギーザに戻れそうだね」


 と俺はつぶやく。


「それは大事です」


 アロンの声には真情がこもっていた。

 キーラも彼女の隣でこくこくとうなずいている。


 何かいやな目にでも遭ったのだろうね。

 俺にだって心当たりはある。


 城壁が見えてきたところで、例の男女四人組はまだ残っていた。


「もう信じられない! ラタはパーティーから追放だ!」


 リーダーらしき男性が叫び、もうひとりの男性と魔法使いらしき女性が賛成する。


「神官なのにありがたみを感じないにもほどがある」


「ラタには悪いけど、もうちょっと効果を実感できる人がいいのよ」


 彼らは口々に言い放つ。

 うなだれているのは白い神官服を着たひとりの少女だった。


「神官が追放なんて、そんなことある?」


 冒険をするうえでの生命線になるポジションだぞ?

 信じられない状況に思わず俺の口は動いていた。


「か、関わらないほうがいいのでは」


 キーラが不安そうにそっと言ってくる。


「同感です。あの人たち、気が立ってますし」


 アロンもキーラに同意見のようだ。


「そうだな」


 好奇心猫を殺すって先代が言っていたし、ここは避けておこう。

 神官職なら勧誘したいんだけど、はたしてあの少女と縁はあるだろうか?



 冒険者協会の支部に報告に行けば、また例の美人のお姉さんが対応してくれた。


「ウィルオウィスプが出たそうですね?」


 俺たちを見るや否や、いきなり確認される。

 たしかに大事なポイントだ。


「は、はい。これが証です」


 キーラが返事をして、青白い結晶を袋から取り出す。


「確認しました。討伐報酬が別途支払われます」


 受付のお姉さんは青白い結晶を見ると、うなずいて告げる。


「え、そうなんですか」


 キーラとアロンのふたりがなぜか俺を見た。


「討伐が推奨されるモンスターを倒したなら、依頼と関係なく報酬はもらえるよ」


 お姉さんが知らないはずはないけど、ここは俺が説明しておく。

 

「ウィルオウィスプの報酬は二百万デナリですね。あと調査不足の詫び料が五十万デナリです」


 お姉さんの言葉にキーラとアロンは絶句している。

 仕方ないことだけど、初心者向け依頼の報酬よりはずっと高いね。


 ウィルオウィスプの報酬が高めなのは、対抗手段がないと手に負えない死霊系モンスターだからだろう。


「じゃあ倒してくれたキーラに多めに渡すかな」


 それが妥当だと思ったけど、キーラはぎょっとする。


「ま、待ってください。そんな大金受け取れないです」


 首を横にふりながら受け取り拒否。

 まさかの展開だった。


 わらに縋る思いで俺の求人に応募してくれたくらいだから、お金は欲しいと思うのだが。


「グレックさんが拾ってくれたからこその成果ですし」


 キーラが言うと、アロンが共感した様子でこくこくとうなずく。


「うーん。でも、俺が採用を決めたのはあなたの実力だし、おかげで難なく勝てたわけだし」


 俺は困ってしまった。


 実力を見て採用して、その実力を発揮してくれた人に報酬を払えないのは、ギルドマスターとして気まずい。


「え? でも、グレックさんなら、ウィルオウィスプを倒せましたよね?」

 

 キーラにきょとんとされる。

 …………何でわかるんだろう?


 俺の表情を見たキーラがあせって、


「わ、わたし、何となくそういうのわかるんです。死霊系限定で。べ、べつに探りを入れたとかじゃなくて」


 必死に説明をはじめる。

 両手をわたわたと動かすのは余裕がないからか。


「……報酬の話はあとでしようか」


 冒険者協会の支部内でこれ以上話さないほうがいい気がする。


「そ、そうですね」


 キーラも何かを感じ取ったか賛成した。

 

「すみません、次に薬草の話なのですが」


 俺たちは気を取り直して、採取した薬草を見せる。


「はい、確認していきます」


 受付のお姉さんは気にせず対応してくれた。

 冒険者同士のトラブルには慣れっこという様子である。

 

「規定により五千デナリの上乗せになります」


 受付のお姉さんは薬草チェックを終えてから言った。

 妥当なところなのでうなずき、


「ありがとうございます」


 と告げる。


「グレックさんは薬草鑑定ができそうですね?」


 受付のお姉さんに訊かれた。

 隠すことでもないので、


「本職ほどじゃないですけど」


 と謙遜しながらも認めておく。

 いざとなったら何か仕事を回してもらえるかもしれない。


 持ってる技能は適度にアピールしておくのが、生活していくためのコツだ。

 

「では査定は以上です。報酬はこちらですね」


 大きめの革袋を受付のお姉さんがカウンターの上に置く。

 なかなかの重量だと思える。


 念のため中身をたしかめてみるが、二百五十万デナリ分の貨幣が強烈だ。

 本来の報酬分は二万五千程度なのに。


「この分ならふたりに小遣いを渡せそうだね」


 と言うと、キーラはちょっとうれしそう。

 対してアロンは申し訳なさそうに、


「あっしはまだお役に立ってないので」


 と言ってくる。


「ぜ、前衛がいてくれるのは安心感が違いますけど」


 キーラが言いながらこっちを見て来た。


「キーラの言う通りだ。それにいずれアロンがいないと困る状況が来るさ」


 俺がきっぱり言うと、アロンはしぶしぶと言った感じで受け入れる。


「とりあえず、晩ご飯を食べよう。今日は一品増やせるよ」


「やった」


 俺の発言にキーラが無邪気に喜ぶ。

 想定外の臨時収入の一部を、仲間のために使うのは正しいはずだ。


 俺たちが出て行こうとした矢先、見覚えのある神官服の少女が目に涙を溜めて入って来る。


「あら、ラタちゃんどうしたの?」


 受付のお姉さんは知り合いらしく、心配そうに声をかけた。

 

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