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追放されたので理想の職場を創った  作者: 相野仁


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第二話

 いきなりだが俺は異世界転生してきた日本人だ。

 とは言えすでにこっちのでの暮らしには慣れてしまった。


 子どもの頃はエアコンやスマホがない生活に困惑したが、「住めば都」というのはよく言ったものだと思う。

 

「困ったな……」


 問題はこれから先のことだ。

 俺にはツテもコネもなく、すべてがギルド頼みだった。


 先代の跡を継いだロレントがこれからギルドが縮小させていくなら、この街も大きな影響を受けるだろう。


 この街に留まったところでおそらく仕事は難しいと思う。


 先代は強引なところも無茶をするところもあったが、優秀な人材を集めて勢力を拡大していく手腕を持っていた。


 ……反動なんて想像したくもないな。

 なるべく遠くへと行ってみるか。

 

 俺以外にもギルドを離れる人はいるだろうし。


 幸い先代のときから給料はよかったし、散財するヒマはなかったので蓄えがある。


 遠方への路銀、当面の宿代は充分のはずだ。

 ずっとここギーズで住んでいたから、よその街には詳しくない。


 せっかくだし、知らない街に行ってみよう。

 どこに行こうとも地球からこっちに転生した衝撃に比べたら、誤差みたいなものだ。


 


「うーん。事務職? あんまり必要はないかなあ」


「うちが欲しいのは専門職なんだよな。事務職も専門? そうだけど、手は足りてるんだよね」


「うちは女性専門ギルドなんだ」


 せっかくだからと西部地域最大の都市ラヴェンドに寄って、求人がないか調べてみた。


 大都市なら雇われるチャンスがあるんじゃないかって思ったけど、どうやらかなり甘かったみたいだ。

 

 小さな酒場でおやじさんに話を聞いてもらう。


「やっぱり甘かったのかな?」


 都市の酒場には情報が集まることが多く、酒場の店主は情報屋を兼ねていることが多い。


 だから俺の考えをジャッジしてもらうにはうってつけの相手だった。


「まあな。たしかに大都市に仕事のチャンスは多いが、そんなことを考えるやつが周辺の村や小さな町からいっぱいいるからな」


 おやじさんは俺に水を出しながらうなずく。


「そっか」


 同じような考えの奴がいるのはすこしもふしぎじゃないね。


「すぐに仕事を見つけたいなら、何らかのコネがあったほうが確実だぞ」


 思わず俺は店の天井を見た。


「何のコネもないからこそ来たんだけど。そんな奴らであふれ返っているから、コネが大事になってるのか」


「そんなところだな」


 重々しく親父さんは肯定する。

 

「いっそ雇う側になるほうが話は早いかもな。もっとも、コネがないときついのは変わらんが」


 親父さんの言葉にハッとさせられた。

 

「そうか。俺は雇われることばかり考えていたけど、道はひとつじゃないんだ」


 さすが酒場の親父さんはいいアイデアを出してくれる。


「最後まで話を聞いていたか? 結局コネは重要になるぞ?」


 親父さんの呆れた視線が突き刺さった。

 人手集めも結局コネか。


 ああ、先代が俺みたいな奴を拾っていたのは、コネがいらないからって先代本人が言っていたな。


 あれはロレントみたいに悪ぶっているだけだと思っていたけど、意外と事実でもあったりしたのか?


「ぐう……」


 言われてみればたしかに、無名の人が雇い主だと不安が大きいよね。

 ギーズなら知り合いは多いから、ある程度信用あっただろうけど。


「やるならお前さんに最低限ノウハウがあって、参入ハードルが低い分野にしておくんだな」


 親父さんは哀れに思ったのか、さらに助言をくれた。


「なるほど」


 ノウハウがない仕事をはじめるのはこわすぎる。

 特にラヴェンドみたいな大都市では。


 参入ハードルが高いとそもそもはじめることすらできないもんね。

 

「俺にノウハウあるとしたら、冒険者ギルドなんだけど」


 おそるおそる言ってみた。


「正気か? この都市にいったいいくつの冒険者ギルドがあると思ってやがる?」


 親父さんには心配そうな顔をされてしまった。


「ぐう……」


 二回目のうなり声。


「ざっと見た感じでは三十は固いかな」

 

 就職活動のために都市を見て回っただけでこの数である。

 実際はさらに多いかも。


「それだと小さいところが入ってないんだろうな。ほとんど便利屋扱いになってるような奴らだよ」


 親父さんの遠慮ない言葉が俺の心に突き刺さった。


「便利屋なのは冒険者ギルドの宿命だけどね」


 基本面倒事や危険がありそうなことは全部回ってくる。

 たとえば地下道の大ネズミ退治なんて、冒険者じゃなくてもできるはずだ。


「他の仕事がいいぞ。お前さんが有名な冒険者なら話は別だが」


 と親父さんは言ってこっちを見る。


「だったら就職先に困ってないよ」


 俺は肩をすくめた。

 

「だろうな」


 親父さんはふんと笑う。

 超級や上級と呼ばれる冒険者なら引く手あまただ。


 貴族の専属護衛になったり、何なら武力を重んじる国では貴族に登用されたりもする。


 上級冒険者なら一国の軍勢を凌駕する強さを持っていたりするしね。

 人間の姿をした災害か竜みたいな存在だ。


「やるならもうすこし冒険者ギルドの需要がある町にするんだな」


 親父さんの助言はありがたい。


「まあ、ダメもとでやってみるよ。どうせ立ち上げや人員勧誘は、いつかは経験しなきゃいけないことだから」


 俺は考えをまとめた。

 時間はどうせあるしね。


 失敗を経験したとしても、今後に活かせばいいのだ。


「上手くいくイメージができないが、お前さんの人生だし好きすればいいさ」


 親父さんは肩をすくめた。

 絶対に無理だと思っているんだろうね。


 実のところ俺も厳しい戦いになると思っている。

 しかし、せっかくこんな大都市に来たのだし、試しに何かやってみたい。


 上手くいかない?

 そんなの俺の人生だとわりと日常だよ。

 


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