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追放されたので理想の職場を創った  作者: 相野仁


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第十話

「あ、あの、あっし以外みんな後衛ですか?」


 というアロンの指摘はもっともである。


「この都市でも募集しなきゃダメかな」


 うなずきながら俺は答えた。

 あとひとり、できれば男が欲しい。

 

「し、したほうがいい気はします」


 キーラが遠慮がちに言ってくる。


「盾役とアタッカーを兼任できる前衛、魔法使い、支援職、神官だから粒は揃っているんだよね」


 物は言いようだなと自分で言っていて思った。

 同じ考えなのか、キーラとアロンもあいまいな笑みを浮かべる。


「もしかしてみなさんは知り合ってから、あまり長くないんですか?」


 ラタは何かを感じたらしく、質問をしてきた。


「知り合ってまだ数日ですね」

 

 アロンがまず答え、


「ラ、ラタちゃんを見かけたときが、このメンバーでの初仕事でしたから」

 

 キーラも説明する。


「え? そうだったんですか?」


 かなり意外だったらしく、ラタはスットンキョウな声を出す。


「グレックさんがサポート上手なので」


 アロンが俺を持ち上げてくれた。

 何か気を遣われてるのかな?


「グ、グレックさん、パーティーの位置取りが上手だし、支援魔法のタイミングも理想的で、組んでいてストレスフリーでした」


 キーラがそんな風に俺を言う。

 あれ、絶賛されてる?


 というか俺の支援を一回組んだだけでしっかり評価してくれるんだね。


 先代やロレントたちと仕事したとき、わからない奴は全然わからなかったというのに。


「支援をみなさんにストレスを感じさせずやるって、とても難しいですよね。すごいです」


 ラタはキラキラと尊敬のまなざしを向けて来て、照れくさい。

 褒められっぱなしなのは何か悔しいね。


「アロンはみんなの盾をしっかりやってくれるから、後衛として安心だ」


「えへ」

 

 褒め返しをやると、アロンは真っ赤になって後頭部をぽりぽりかく。


「キーラは死霊系魔法特化だけど、実はかなり柔軟だし微調整も得意で、頼りになる魔法使いだ」


「は、恥ずかしいです」


 続けてキーラに褒め返しをすると、同じく真っ赤になってもじもじしてる。

 ふー、褒め返ししてやったぜ。


「仲がよろしいんですね」


 ラタはうらやましそうな顔で言う。

 彼女は仲いい相手を持てなかったんだろうか。


「問題ないようなら、普通にウチのギルドで採用するけど」


 と俺は告げた。

 まずはお試し運転ってだけである。


「ほ、本当にわたしなんかが?」

 

 ラタはまだ信じ切れてないらしい。 

 相当自己評価が低くなっているみたいだ。


「だ、大丈夫ですよ。グレックさんのフォロー力は信じて」


 とキーラが言う。


「そうそう、グレックさんがきっと何とかしてくれます」


 アロンも続く。

 あなたたちふたりの評価がそんなに高いのは、俺としてもすこし意外である。


 そりゃ低いより高いほうがいいに決まってるけどね。


「はい。ほかに頼れる相手はもういないので」


 ラタにじーっと熱をこもった目を向けられる。

 パメラさんは信用できそうだし、いっしょに次の策を考えてもよさそうだけど。


 いま言ってもおそらくラタには響かないと判断したので言わないでおく。



 俺たち四人は林の中に入った。

 人の手が入っているとわかる道があるので、素直にそこを歩いて行く。


「いまのところ異常なしです」


 と前を行くアロンが言う。


「俺の魔法でもとくに何もないね」


 俺も続けて話す。


「魔法での探知はすごいですね。どれくらいいけるんですか?」


 俺の左隣をキープしているラタに訊かれた。


「半径二十メートルほど。隠ぺいが上手い相手を見落とすリスクはあるから、過信は禁物だね」


 一応釘をさしておく。

 万能な魔法なんてものはないのだから。

 

「はーい」


 アロンたちは素直に返事する。

 一応俺たちの存在に気づいて、逃げていく獣と思われる気配はあった。


「そ、そんな獣がいるくらいなら、大丈夫かなという気はしますけど」


 キーラが自分の意見をしゃべる。

 まあ、やばい奴がいるなら、とっくにこの林から逃げ出してるだろうしね。

 

「一応、獣が感知できないタイプ、あるいは卵があるという線は捨てられない」


 決めつけはよくないので、考えられる可能性をあげておく。


「な、なるほどです」


 キーラはハッとする。


「さすがよく考えてますね」


 アロンに感心された。

 

「経験した数の違いじゃないかな」


 と俺は答える。

 謙遜したつもりはない。


 先代やロレントたちといっしょに、それなりの苦労をしてきた結果、モンスターのタイプは多彩だと学べたからだ。


「おお、何だかデキるオトナって感じです」


 ラタがキラキラした目で見て来る。

 ピュアな子なんだなーという印象しかない。


「おっと、敵の気配かな」


 さすがに遭遇ゼロとはいかなかった、と俺は告げる。

 みんなの表情が引き締まったころ、額に一本角がはえた黒い熊が現れた。


 体長は三メートルほどとかなり大きい。


「おっきい」

 

 アロンが感嘆する。


「ワイルドベアーでしょうか」


 とラタが言ってからこっちを見る。


即効化ジャストクイック


 俺が支援魔法を唱えると、彼女はホッとして自分も唱える。

 うん? 治癒魔法のタイミングじゃないし、呪文も違うようだけど?


「キーラ、頼んでいいかな?」

 

 ラタは何をしたいのか考えながら、キーラに指示を出す。


「は、はい。──ワルプルギス」


 キーラが呪文を唱えて、死霊を大量に呼び出してワイルドベアーにぶつけた。


 死霊系魔法のおそろしさは、耐性を持ってないと恐怖でショック状態にされた挙句、生気を抜き取られることにある。


「!?」


 ワイルドベアーは強烈なショックで棒立ちになってしまった。


「アロン、とどめを」

 

 俺は指示を出す。


「は、はい」


 コンバートの呪文を唱えて死霊を変化させ、アロンへの強化に使う。

 アロンは手にした斧でワイルドベアーの首をはね飛ばした。


「す、すごいです、みなさん。ワイルドベアーって二級パーティーでも苦戦するのに」


 ラタがポカンとしている。

 

「キーラもアロンも実力を発揮さえすれば、個人で三級相当の強さはあるからね」


 と俺は答えた。

 本当はもっと強いと思うけど、全部話すのはタイミングを見てからにしよう。


 俺は血抜きやはぎとりを手早くおこなう。


「グ、グレックさん、慣れてますね?」


 キーラが怪訝そうに言った。


「以前いたギルドではこれらも支援職の仕事のうちだったからね」


 と俺は話す。


 もっとも、戦闘員は周囲を警戒したり次の敵に備えてたので、単なる役割分担だけどね。


「そう言えばワイルドベアーの肉って、工夫すれば美味いって知ってる?」


 作業を終えて支援魔法の一環「収納」を発動させ、毛皮と肉をしまいながら問いかけた。


「え、知らないです」


 アロンとラタはきょとんとする。


「お、美味しいんですか?」


 キーラもびっくりして聞き返してきた。


「ああ。よかったら作ってみようか」


 親睦を深めるためにもアリだろうと提案してみる。


「は、はい」


「ぜひ」


 三人とも興味津々という表情でうなずく。

 やっぱり美味しい食べ物は正義だよね。


 林の中を進んで行き、ときどきモンスターと遭遇したけど、たいていはキーラの魔法で解決だった。


 死霊系魔法、便利すぎる。


「魔力は大丈夫?」


 俺が問いかけるとキーラは、


「は、はい。わたしは魔力量には自信あります。まだ一割も使ってません」


 とちょっと得意そうに答えた。


「あれだけで一割未満か。かなりすごいんだね」


 俺は感心する。

 下のほうの魔法使いなら、そろそろ魔力切れが見えているだろう。


 キーラって死霊系特化という外聞の悪さを除けば、とても優秀なのでは?


「えへへ」


 キーラは照れくさそうに笑う。


「キーラさんはすごいですね」


 ラタとアロンも感心している。

 

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