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転がり落ちたのはわたしも悪かったし、そもそもよたよたと歩いていたわたしを心配して様子を見に来てくれたのだ。マグラルド様には何も非はない。
むしろ、どんくさいことをわたしが謝るべきでは……?
なんて考えていたが、全然違った。
「手を差し伸べてくれたのに、はじいてしまっただろう」
……そういえば、そうだった。
マグラルド様の上半身の衝撃がすごすぎて、その記憶はどこか彼方へと飛んで行ってしまっていた。
「……結局、怪我はなかったんだよね?」
「ああ。――……打ち所が悪く、少しむせたんだろう。今はどこも痛くない」
そういうマグラルド様は、確かに顔色は悪くない。あの真っ青な顔が見間違いだったのでは、と思うほど。本当に、怪我を隠している様子はない。
「――……今回は、許してあげる」
すぐに謝ってくれたし、再度謝罪もあった。もう気にしていない、とは言えないけど……それでも、いつまでも引きずっていたら、わたしたちの現状に差し支えてしまう。
攻略難易度の高い山ではないとはいえ、普通に山は舐めていると危険だ。少し我慢すれば消えるわだかまりなら、いつまでも根に持つべきではない。
「今度、何かおごってね」
わたしがそう言うと、それでこの話はおしまい、というのが向こうも分かったんだろう。マグラルド様は「好きなものをおごろう」と了承してくれた。
「それで、ディアンの話は何だったんだ?」
「え? ああ、えっと……」
わたしは少し考えてから、「夜の見張り、順番どうしようか」と言った。本当は、妙な間を埋めたくて話しかけたかっただけだから、大した話題もなかったのだ。
とはいえ、これは決めておかないといけないことだったから、ちょうどよかったかも。二人そろって寝るのも、逆に二人で徹夜するのも無理な話だ。
「ボク、先にちょっと仮眠を取らせてもらったし。今度はマグラルドが休みなよ」
二人で見張り番を回すのは、ちょっときつい。リリリュビさんたちがいれば、五人で順番を回すから、結構まとまって睡眠を取れるんだけど。
「そう……だな。ありがたく、そうさせてもらおう」
マグラルド様と話し合い、夕食は二人で取って、陽が沈んだらマグラルド様が先に休んでわたしが一人で見張り番。ちょうど同じくらい休めるように、夜中に一度交代する、ということになった。
山に生息する生き物には、そこまで困らなそうだけれど、夜に警戒すべきはそれだけじゃないからね。しっかり見張りを頑張らないと。
そんなことを考えながら、わたしは携帯食料が入ったカバンに手を伸ばした。




