39
ぱち、ぱちち、という、火花が爆ぜるような音で、意識が浮上する。ぼんやりとしたまま目を開ければ、目の前に、たき火があった。
たき火を見て、寝ぼけていた頭が、一気に覚醒する。
いつの間にか寝てしまっていたようだ。わたしは慌てて立ち上がる。
一体どのくらい寝ていたのか分からないが、たき火が完成しているということは、そこそこ寝入ってしまったに違いない。
「ご、ごめ――わぁっ!」
マグラルド様を放って、勝手に寝てしまった罪悪感から周りが見えていなかったが、マグラルド様が上半身の服を脱ぎ、体を拭いていた。非常に鍛え上げられた体は、わたしには毒だ。
ばち、と思い切り顔を手で覆う。
「男同士なのだから、そこまで気にしなくとも構わない」
なんて、マグラルド様は言うけれど、わたし、本当は男じゃないから!
とは言えない。
わたしは後ろを振り向き、しゃがみこむ。絶対に見ないぞ、という姿勢だ。
背後から聞こえてくる、ちゃぷちゃぷと、布が水につけられる音が、妙に生々しくて、心臓が痛いくらいに早まる。
「ご、ご、ごめんね。あの、ボク、どのくらい寝てた……?」
動揺からか、自分の声が情けないほどに震える。
カチン、と何か、金属が擦れ合うような音がする。剣の音にしては軽いし小さい。なんだろう、これ。
「そうだな……一時間弱、と言ったところか」
マグラルド様がそう言うと、カパ、と今度は何かがハマる音がした。……ああ、これ、懐中時計の音か。
――……って、一時間!?
「ごっ――、ごめん!」
わたしは反射的に振り返りそうになって、ギリギリのところで、立ち上がるだけに留まる。外を見れば、陽が沈み始めている。
まさか、こんなところで寝てしまうなんて……。
「気にするな。休んでいいと言ったのは僕だ。それよりも、ほら。お前も体を拭くか?」
「湯を沸かしたから、使うといい」とマグラルド様が言ってくれる。たき火の準備をして、たき火を作り、湯まで沸かすとは、もしかして、一時間眠っていたというのは嘘なんじゃないの……? 絶対もっと寝てたって……。
「あ、や、体はいいかな……。あの、ほら、えっと……そう! ボク、体に傷跡があって、あんまり他の人には見られたくないっていうか……」
わたしは手探りで言い訳を探し、断る。
いや、言い訳自体はいつものものなんだけど。リリリュビさんたちにもこれで通して、肌が見えるようなことは避けている。実際は傷なんてなくて、性別を偽っているから脱げないだけなのだが。
普段ならすんなり出てくる言い訳も、今は出てこない。一時間以上も眠りこけっていたことへの罪悪感もそうだが、なんというか、その、マグラルド様の上半身裸の姿が、刺激が強すぎるんだよ……!




