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少し早いけれど、どのみちこの山を一日で突っ切って隣街へと行くのは不可能なので、夜を過ごす準備を始めてしまってもいいかもしれない。魔法で怪我をなんとかしたとはいえ、山の斜面を結構な距離転げ落ちたわけだし。
時間的にはまだ進めるけれど、体力的には結構つらい。
「マグラルド、今日はもうあそこで休んでしまおう」
わたしの提案に、マグラルド様は異を唱えない。
ああいう場所がこの山に一つしかないとは思えないけど、わたしたちが進んだ先にあるとも限らない。大体の場所は使ったことがある先輩冒険者か、作った本人そのものに教えてもらえることもあるけれど、休憩所が正確に記された地図なんかは存在しないし。作った側が場所とか考えて建てるわけじゃないから、余計に。
休憩所のところまで下り、様子を確認する。中は、そこそこ汚かったけれど、あくまで雨風にさらされたような土汚ればかりで、明らかに人の不始末で汚れているわけではないので、そこまで不快感はない。
というか、屋根があって、ちゃんと寝られる平地があるだけでありがたい。山の中の野宿って、結構大変なんだよね……。
軽く休憩所を掃除してから、わたしは備え付けの椅子に腰を下ろす。椅子というか、サイズが丁度いい切り株がいくつかあったので、それに座っただけだが。でも、このあからさまなサイズ感は腰をかけることを想定して置かれているのだろうから、実質椅子。
一度腰を下ろしてしまうと、集中力が切れたのか、一気に疲れが襲ってくる。やば、座る前に、たき火の準備しておくべきだった。
「少し休んでいるといい。たき火はこちらで用意しておく」
荷物を置いたマグラルド様が、入口に立ちながら言った。これからたき火のために木を拾ってくるのだろう。
いや、流石にマグラルド様にそんなことをやらせるわけには……!
「い、いや、ボクも行くよ!」
「問題ない。僕はまだ体力が残っている。それに、いざというときのために、回復役が一番元気でいてもらわねば困る」
正論を言われて、わたしは言葉に詰まった。マグラルド様の残り体力云々はともかくとして、パーティーでは回復役が一番のかなめ。言い方が悪いが、パーティーが全滅に近い大怪我をしたところで、それを治せる回復役が健在ならば、体勢は立て直せる。
王族たるマグラルド様に下っ端のような仕事をさせ、平民のわたしが休むなんて、とんでもないことだが……マグラルド様がそう言うのであれば、従うほかない。
「ご、ごめん……。じゃあ、お願い――するね」
わたしは彼の提案に甘えることにした。




