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リリリュビさん持ってきた依頼書の薬草――アーバリ草は、結構な山道に生えているようで、しっかり準備をしてきた分、荷物が重く、足元に気を取られてしまう。
先を行って危険を確認する役目を果たすリリリュビさんが一番身軽。次に身軽なのは、剣をふるうマグラルド様だ。パーティーの中で一番体格がいいのはマグラルド様なのだが、物理攻撃、しかも接近戦をする役職の人間に、あれもこれも、と荷物を持たせることはできない。
わたしとザフィール、マルコラさんの三人で、荷物を分担して持つ。男で通っている分、わたしの荷物だけ減らしてもらう、ということはできない。好きな時間に、自由に風呂に入れないことと並ぶくらいに、本当の性別を隠して冒険者をすることの中で、大変なのが荷物持ち。
山道でなければそこまで疲れはしないんだけど……。あまりにも険しいので、一歩進むたびに削られる体力が段違いだ。
「――大丈夫か」
遅れがちなわたしを心配してか、マグラルド様が声をかけてくれる。
「な、なんとかするよ。ボクだって男なんだから」
ぜぇぜぇと、息が上がっている中でそんなことを言っても、情けない強がりにしかならないことは分かっているが、そう言うしかない。
山道じゃなければ、わたしだって、このくらいの荷物はなんとかなったのに。……カバンへの詰め方、間違えたかな……。
「――っと、一本見っけ」
わたしは足元に、アーバリ草を見つける。斜めがけの鞄から、スコップを取り出し、根っこごとアーバリ草を取り、細ビンに入れて、ビンの蓋を閉める。
アーバリ草は根っこの部分も使い道があるから、納品するときは根ごとのものを提出しないといけないし、麻袋に適当に詰めていくわけにもいかない。生命力が異常に強いアーバリ草は、全部まとめて麻袋に入れると、それはもう、とんでもなく絡まって大変なことになるのだ。
ただ絡まるだけならまだしも、小さいアーバリ草に絡みついた大きなアーバリ草が、小さいアーバリ草の栄養を吸いつくし、小さいものを枯らしてしまうことがあるのだ。
日帰りや一日くらいならば流石に麻袋に詰め込んで、提出する際に絡まった根をほどけば十分だが、今回は隣街のアルレームに行って、調査をして、それでから帰って提出……ということを考えると、採集したアーバリ草の半分くらいは駄目になってしまうだろう。
なので、こうして細ビンに一つずつ詰めねばならず……。その大量の細ビンが、こんなにも重たいのだ。割れないように保護の魔法がかかっているから、結構雑に扱っても大丈夫なのは助かるけど。
「よっと――、おわぁ!」
アーバリ草を取れたし、立ち上がろう、としたところでバランスを崩してしまった。




