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「まず、『エーデルヴルフ』が使う、外に逃がすためのルートはいくつかあるんだけど、ここ何年かは、陸路しか使われていないみたいなの」
「そこまでのこと、どうやって調べたんだよ……」
わたしの考えていたことを、ザフィールが代弁してくれる。確かに、『エーデルヴルフ』に依頼した際、陸路で隣街へ行くか、船を使ってもっと遠くへと行くか、尋ねられた。
この街の外れには、大河がある。主に行商のために使われているが、望めば商品を装って乗せてくれるらしく、船に乗るともっと遠くへと行くことができる。その分、逃がしてもらうための料金は高かったんだけど。
国外へと放り出される際、王城聖女として勤めていたときの給金は全て持ち出せたから、払えなくはなかったんだけど……。わたしは少しでもマグラルド様から離れたくない、という一心で、街に残ったので、船には乗らなかった。
この街に残る選択をする娼婦は当然いないが、船に乗るだけのお金を払えず、近隣の街に陸路で逃がしてもらう人もいるそうだ。
「まあ……これ?」
リリリュビさんは、右手で丸の形を作り、目の前にかざした。
「いくら娼館に秘密で動いてくれるとはいえ、ある程度、記録は取っておくみたいだねえ」
これは……『エーデルヴルフ』の人たちがいる拠点に忍び込んで情報を盗み見てきたな……。リリリュビさんならやりかねないし、やれるだけの技術がある。
「あたし、隣街にはまだ行っていないから、隣街からさらに別の場所へ、って転々としている可能性もあるけど、それなら船でぴゅーっと行った方が早く遠くに行けるし。歩きだと時間もかかって、旅費とか食費とかその他もろもろをトータルで考えたら、金額的にはトントンになりそうだし?」
「そう考えると、確かに案外近場にいるのかもしれないね」
リリリュビさんの言葉に、優しく賛同するのはマルコラさんだ。
「というわけで、隣街のアルレームに行こうかなって思うんですが、ついでに依頼をやっていこうと思いまーす」
そう言ってリリリュビさんが取り出したのは、一枚の依頼書。見れば、薬草を一定数集めてほしい、という、普段よく受ける採集依頼だった。ただ、その薬草が生えているのが、ちょうど、アルレームへいく道の一つの近くによく茂っているようだった。
よく使われる、馬車の通る道ではなく、山道の方ではあるけれど、隣街へと行きながら受ける依頼にはぴったりだ。抜け目ない。
正体をばらすのか、ごまかすのか、いっそパーティーから逃げるのか、それすら決められないままに、わたしは、情報を求めて隣街へと行くことになってしまった。




