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「……別に、お前が誰を想うかは自由だと思うんだけどよ。……あー……えっと……」
言葉を探しているのか、先ほどまでの真剣な表情とは変わって、目線を泳がせ、もどかしそうに頭をかきむしっている。
「マグラルドが聖女を見つけてさ、そいつと幸せになろうとしても……パーティーに迷惑をかけるレベルで邪魔しないでほしいっつーかさ。オレは、今のままのパーティーが――」
「――それはないよ」
今度は、わたしの言葉が、冷たく、重いものになってしまった。さっきまでろれつが回らず、へろへろとしたしゃべりしかできなかったわたしが、急にちゃんと話し始めたからか、ザフィールが驚いたようにこちらを見る。
「そんなことは、絶対、ない」
そもそも、わたしがその聖女なわけだし、邪魔のしようがない。いや、それよりも――多分、マグラルド様は、わたしに対して、恋愛感情とか、そういうものはないはずだ。……わ、わたしとの婚約指輪は持っていてくれたけど。でも、そういう意味でないのは、分かる。
もしも、彼に、少しでもわたしへ恋愛感情を持っていたのならば、あんなにも、あっさりと婚約破棄を認めなかっただろうから。
マグラルド様は、国のことを一番に考えているお人。だから、最終的には、「伯爵令嬢と結婚する方が国益になるというのならば、そのように」と、わたしとの婚約破棄をし、伯爵令嬢の求婚を受け入れただろう。
でも、その前に、少しくらい、抵抗したはず。一言、二言、「なんとかならないのか」みたいなことを、言ってくれたはず。
現実は――そんなこと、何も言ってくれなかったし、婚約破棄を回避するような行動は、一つも取ってくれなかったけれど。
だから、マグラルド様と、国を出た聖女が恋愛的にくっつくことはないのだ。
……自分で考えてて、悲しくなるなぁ。
わたしはベッドに寝そべり、脚を上げた。
「靴、脱がせてってば」
「……おう」
わたしはマグラルド様と聖女がくっつくことはない、という思いで、そんなことはない、と言ったけれど、ザフィールは、わたしが邪魔を絶対にしない、という意思表示に取ってくれたらしい。
「……信じるからな」
そう言って、ザフィールは、わたしの靴をサクッと脱がせて、ベッドの横へ、綺麗に並べた。
「当たり前だよ」
わたしは、部屋を出て行こうとするザフィールに、そんな言葉を投げかけた。
ザフィールがいなくなったのを確認すると、胸元を少しくつろげて、わたしは目を閉じた。
ザフィールの心配事が起きえない、聖女であるわたしとマグラルド様が結ばれないなんて事実から目をそらしたくて。




