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ザフィールが、元々は別の冒険者パーティーにいたけれど、もめて、リリリュビさんとマルコラさん二人でやっていたパーティーに加わることになった、という話は、わたしがパーティーに加入するときに聞いている。ただ、そのもめごとの詳しい内容は知らない。
リリリュビさんが、「ザフィールくんは悪くないし、ここじゃあ起きようがないから心配しなくても大丈夫だよ」と言っていたので、あまり詳しく聞くようなことはしなかった。
あっさり話せる内容であれば、わたしがパーティーに加入するときに言うだろうし。パーティーリーダーがそういうのなら、大丈夫なのかな? と信用するしかなかった最初とは違い、二年もザフィールとの、仲間としての関係が構築されていけば、当時のリリリュビさんが言っていたことが間違いないのは分かってくる。ザフィールが悪い奴じゃないって。
だから、聞かれたくないことならそのままにしておいた方がいいかな、と、わたしはこれまで、ザフィールに言及したことはなかった。それでも、問題なくやってこれたし。
「オレが前のパーティーを抜けることになったのってさ……恋愛絡みなんだよな」
「……れんあい」
「そう。なんつーか……男のパーティーリーダーと、取り巻きの女たち、あとオレ、みたいな構成でよ」
……ものすごく居心地が悪そうなパーティーだ。
「元々、オレとあいつ……男のパーティーリーダーの二人で始めた冒険者パーティーだったんだけどよ。女が一人、二人と増えるたびに、おかしくなってったっていうかさ」
ザフィールの中では決着がついているのか、真剣な表情で話しているけれど、未練とか、恨みとか、そういうものはなさそうな雰囲気を感じる。
「最終的には、男のオレがパーティーにいるのが嫌になったんだろうな。出て行ってくれ、みたいな……」
「お、おーぼーじゃん」
あんまりにも、あんまりな結果だ。取り巻きの女たち、という表現をザフィールがしているあたり、女性たちも納得の上なんだろう。複数交際の良さが分からん。
ああ、でも、なるほど。確かに、それならリリリュビさんとマルコラさんのパーティーには、起きえない問題だ。あの二人は夫婦だし、マルコラさんはあまりにもリリリュビさん一筋。マルコラさんの愛情表現が大げさだから分かりにくいけれど、リリリュビさんも、マルコラさん以外の男を、『異性』として意識している節はない。
そういう、ドロドロとした恋愛事情には無縁な二人だ。
わたしの予想は当たっていたようで、「そんなわけで、あの二人のパーティーメンバーに入れてもらったんだよ」とザフィールは言う。
そして、わたしの方を、まっすぐ見た。
「だからさ。また、恋愛ごとでもめて欲しくねぇんだ」
ザフィールの声音は、いつもの軽い調子の彼からは想像できないほど、圧のあるものだった。




