17
お風呂に入るとさっぱりするもので、わたしは少しばかり、冷静になっていた。マグラルド様の、あの言い方は腹が立つけれど、それはそれとして、いつまでもギスギスしているわけにもいかない。冒険者パーティーの仲間は命を預ける相手。何一つ秘密なく、心を開いていかなければ、とは言わないけれど、最低限のコミュニケーションは取れるようにならないと、自分の身が危ない。
本当なら、ちゃんと、わたしが何に怒った、だとか、そういうことも話した方がいいのかもしれないけど……全部話すとなると、わたしの正体まで明かさないとならないので、それはナシ。
とりあえず、マグラルド様を見つけないと、声をかけることもできない。
でも、剣の手入れをしに行く、っていなくなっちゃったし、もう借りた宿の部屋にに帰っちゃったのかな。一応、どの部屋に泊まっているかは聞いているから、行こうと思えば行けるんだけど……。でも、もう夜になった、部屋には上げてくれないかもな。そうなると、廊下で話すようなことでもないし……。
いや、ギリギリセーフな時間? 王族のマグラルド様的にはどうなのだろう。
どうやって仲直りをするか以前に、ちゃんと話をすること自体が難しそうだ。でも、こういうのって、時間が経つほどこじれたり、和解するタイミングを逃すよね。
どうしようかと考えながら歩いていると、ドン、と誰かにぶつかってしまう。
「あ、ごめ――」
「ってえな!」
とっさに謝ろうとしたが、それにかぶせるように怒鳴られた。よく見れば、相手の証明タグには青色の石が埋め込まれていた。うわ、だる、わたしより一つ上のランクだ。
しかも、あまり素行がよろしくないことで有名な冒険者パーティーの一人だ。暴力的で、野蛮と、もっぱらの噂。戦闘力だけ見れば、もう一つか二つ、ランクが上でもおかしくない実力を持っているが、素行が悪いことと、討伐依頼しか受けないことで、ランク昇格ができないと言われているパーティー。
既定の依頼全てを受けて、さっさともっと上に行って、この辺りではなく、高ランクの依頼を出すギルドに行ってほしい、と思っているのはわたしだけではない。
「お前のせいで、俺の剣が汚れちまったじゃねえか!」
「え……」
お風呂入ってきたばかりですけど!? むしろそっちの方が、依頼帰りで汚くない!? と思って男の方を見ると、確かに彼の剣は血で汚れている。刃の方ではなく、柄の方。思わず手を見れば、肘の部分が切れていて、血が流れていた。おそらく、ぶつかったときにツバの装飾に当たって切れたのだろう。
そこまで深い傷でもなく、ぶつかったときの衝撃の方が大きかったから、全然気が付かなかった。




