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冒険者ギルドに着くと、リリリュビさんは一目散に報告へと行った。多分、最初はわたしたちの空気を少しでも朗らかにしようとわざと明るくふるまっていたのだろうけど、途中から完全に素材等の換金に思考が持っていかれたのだと思う。いい人ではあるんだけど、お金とかお宝とか、そういうのに夢中になりやすい人だから……。
「私はリリちゃんのところに行くけど、皆はどうする?」
一応、と言わんばかりに、マルコラさんが聞いてくる。ギルド受付への依頼達成報告は、一人行けば十分なのだ。わたしたちがぞろぞろと着いていく必要はない。
「あー……オレは……うん、適当に飯でも食ってくるかな!」
ザフィールは、ちらっとわたしたちを見て、言った。多分、暫定喧嘩中のわたしとマグラルド様と一緒にいたくないのだと思う。マグラルド様の活躍によって、予定よりも随分早く帰ってこられたから、夕食の時間にはまだ早い。
「じゃあ、ボクは風呂行ってくる!」
わたしは半ば投げやりに言った。
この時間はギルドに併設されている個室風呂が空いているので、今のタイミングを逃すとすごく混んでいる中で順番を待つか、大浴場に行くしかなくなる。性別を偽っている身としては、大浴場は使えないので、個室風呂が空いているタイミングを狙うしかない。ギルド併設以外の風呂屋は高いところか大浴場のみ、あるいは逢引宿屋しかないので、安く個室風呂を使おうと思ったらギルドのものを使うしかない。
「……では、僕は剣の手入れでもしていよう」
わたしが怒っている理由が分からないのか、それとも、どうでもいいと思っているのか。表情一つ変えずにマグラルド様は言った。その態度が余計に火に油を注いでいるわけなんだけど!
「そっか。じゃあ、皆今日はこのまま解散かな。明日また、集合しようね」
そう言ったマルコラさんは、そのままリリリュビさんの元へと行ってしまった。
――……ああやって見ると、マルコラさんって、いい人だよね。なんでもかんでも恋愛話に持っていこうとする悪癖さえなければ、一途で気の利くいい人だ。わたしも、ああいう人を好きになったら、幸せだったのだろうか。
……少なくとも、あのまま、マグラルド様と結婚したとしても、リリリュビさんとマルコラさんのような夫婦にはなれなかった気がする。
現に、わたしの心配なんて、何一つ気が付いていなかったような方なわけだし!? ちょっと顔がよくて、腕っぷしが強くて、地位があって、その地位に見合うだけの努力を怠らないからって、全部が全部、許されると思わないでよね。
怒りが収まらないままに、わたしはそのまま個室風呂へと、体を清めに行くのだった。




