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わたしは、気まずさから、少し、彼から目線を逸らす。
「……ボクの行動が、褒められたものでないのは分かるよ」
わたしより、マグラルド様の方が生き残るべきで、そう思って行動したけれど、両方助かるならそちらの方がいいに決まっている。わたしは何も死にたがりではない。
「ただ――……パーティーを組んだばかりで、ボクは、貴方の実力を知っているわけじゃないから」
実際には、見誤った、というのが正しいのだけれど。対人の戦闘能力が非常に高いのは分かっていたつもりだったけれど、まさかそれが魔物にも通用するとは思わなかったのだ。人間とサイズ感が近い生き物ならまだしも、あんなにでかい魔物に立ち向かえるなんて。
わたし自身に戦闘能力がないので、見る目自体もないのだろう。
「――心配くらいは、し……たよ」
思わず敬語になってしまいそうになり、慌てて修正する。そこまでおかしな言い方にはなっていないはず。
彼の方を再度見ると、少し、驚いたような表情をしていた。あまり表情がコロコロ変わるような人じゃないから、多分、これで相当驚いているのだと思う。
「心配……か」
「そうだよ、仲間なんだから。……なりたてだけど」
だから、勝手に体が動いた。
そう言おうとしたが――。
「初めて言われたな。そんなこと、考えもしなかった」
「――は?」
――自分でも驚くぐらい、自らの口から低い声が出た。
でも、何、え、今、この人なんて言った?
心配されたのが初めて? は? 本気でおっしゃってる?
公務で仕事を詰め込み過ぎたときも。明らかにオーバーワークな訓練をしているときも。聖女時代のわたしはずっと、心配して、進言もして、見守って、そんなのばかりだったのに。
心配されたのが、初めてだって?
かつてのわたしのことは、全部なかったことになるの? それとも、何も聞いてなかったの?
「もう知らないっ」
わたしは会話を切り上げて、足を少し早めた。前を歩いていたザフィールに追いつく。
ここで怒るのは不自然極まりなかったけど、気が付けば、わたしはマグラルド様に怒りをぶつけていた。
バシ、とザフィールの背中を叩く。
「いって! オレに当たんなって。仲間扱いされないのが悔しいのは分かっけど、入りたてなんだからしょうがねーだろ」
わたしに八つ当たりされたザフィールが、少し大げさに騒いだ。
わたしが怒ったのは、初めて心配されたって部分。でもまあ、勘違いしてくれるならそれに越したことはない。
こんな人に、未練たらたらな自分に、むかついてしょうがなかった。




