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なんとなく気まずい雰囲気が流れるわたしとマグラルド様とは裏腹に、リリリュビさんはご機嫌だった。……いや、わたしたちが悪い空気を作っているから、あえて明るくふるまっているのかもしれない。ザフィールも少し居心地が悪そうだ。マルコラさんに関しては、通常運転だが。
「いくらになるかなーっ♪」
鼻歌を歌いながら、リリリュビさんが帰路を歩く。その隣を、歌うリリリュビさんを可愛いと思っているのだろうマルコラさんがにこにこしながら歩き、中間地点にはザフィールが歩いている。その後ろをついていくわたしからは、ザフィールの背中から気まずさを感じ取っていた。
そして、マグラルド様は、無言でわたしの隣を歩く。
「特別そうなホルンシャフの素材もとれたし、一杯報酬もらえるといいねぇ」
浮かれたリリリュビさんに、マルコラさんが「そうだね。思ったより売れたら、今夜は少し豪華なもの食べようよ」と答えていた。
討伐依頼は、討伐に加えて素材の分の報酬も上乗せされるので、中々にいい金額をもらえる。いつもの採集依頼や調査依頼よりは、ずっと高い金額の報酬になることだろう。
わたしとしては、わたしが聖女だとバレる前に、そしてマグラルド様に未練がある女だと知られる前に、さっさとマグラルド様をパーティーから追い出したいのだが……リリリュビさんの様子を見るに無理だろう。
マグラルド様の実力は、わたしたちがずっと求めてきた戦力以上のものだ。彼がいれば、冒険者パーティーのランクを上げることもたやすいだろう。
たとえ今、ちょっとマグラルド様とわたしがギスギスしたところで、リリリュビさんは全力でわたしたちを和解させ、マグラルド様がパーティーに残るよう動くだろう。
リリリュビさんに、冒険者パーティーに誘ってもらった恩があるわたしとしては、彼女には弱いのだ。
娼婦になるのも、娼婦に片足突っ込んだ女給になるのも、ジュダネラル王国から遠く離れた土地へ行くことも、全部嫌だったわたしは、戦えもしないのに冒険者を選んで。
右も左も分からず、ろくに依頼を受けることもできずに困っていたわたしを助けてくれたのは、リリリュビさんなのだ。彼女の大抵のお願いは、聞いておかないと、恩が返せなくなってしまう。
「――……あの」
わたしは隣にいたマグラルド様に声をかける。ちら、と彼の方を見上げれば、返事こそなかったものの、こちらを見て、話を聞く気になった、彼の表情がうかがえた。
リリリュビさんのためだ。街に着く前に、和解しておかないと。




