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とまあ、緊張していたのもほんの一瞬で。ザフィールの強化魔法もなしにマグラルド様はサクッとホルンシャフを倒してしまった。これだけ余裕に動いているところを見ると、もう少し上のランクの魔物の討伐でも大丈夫かもしれない。同じことを思っていたのか、リリリュビさんの目が輝いている。
マグラルド様が強いのは分かっていたけれど、彼よりもずっと体の大きなホルンシャフをあっさりと討伐してしまうところを見たのは初めて。頭ではそうなるだろうな、と予測できていても、実際に見てしまうとやっぱりちょっと驚く。
「ええと……け、怪我はない?」
怪我なんてしていない、と分かりきってはいるけれど、パーティーの回復役としては、戦闘を終えた仲間に声をかけないわけにはいかない。
それにしても、こんな口調でマグラルド様に話しかける日がこようとは。
リリリュビさんとマルコラさんにはわたしよりも年上だから敬語を使うようにしているけど、マグラルド様は違う。
わたしと年が近いマグラルド様には、ザフィールと同じく、砕けた口調の方が自然なはず。だから敬語を使わずに話しかけたけれど……とても緊張する。こんな風に話しかけていい人じゃないんだよ、本当は。
わたしの脳内の抵抗とは裏腹に、マグラルド様はわたしの態度に何も思うところはないようで、「すべて返り血なので問題ない」と答えた。
「……だろうね」
こっちも離れた後方とはいえ、彼の動きをしっかり見ていた。ホルンシャフの攻撃は全て華麗に避けていたので、文字通り、かすり傷一つないと思う。……というか、ホルンシャフが負った傷に対して、マグラルド様の浴びた返り血の量も少ないんだよね。
もしかしたら、返り血の飛ぶ方向まで考えて攻撃してたのかな? そうだとしたら、わたしが考えている以上に、ホルンシャフ相手だったら余裕だったのかも。
わたしがそう思っている間に、リリリュビさんたちはホルンシャフのツノを取るために解体作業を始めていた。解体、っていってもツノを根本から切るだけだけど。体の方は魔物や動物の餌になるので持ち帰らない。肉が回収素材の場合もあるから、例外も存在するけど。
倒したホルンシャフは三体もいるから、わたしも解体作業に加わらないと、と腰に下げたナイフを抜こうとしたとき――。
ザリ、と不自然な、地面を擦る足音が耳に届く。遠い場所から聞こえてくるのにも関わらず、妙に大きい。
「ディアン、マグラルド! 後ろ、何か来る!」
リリリュビさんが叫ぶのが聞こえた。パッと顔を上げると、ザフィールとマルコラさんがすでに解体の手を止め、戦闘態勢になっている。
慌てて振り返ると――そこには、先ほどのホルンシャフたちと比べて、一回り以上大きな体をした、毛並みの色が違うホルンシャフがいた。




