表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ニュース・ライター 〜明日を照らす放送局〜』  作者: さらん
番外編:永田町の灯(ともしび)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/10

第4章:記者の矜持、国民の選択


 翌週。堂本の法案審議が大詰めを迎える中、ある週刊誌がスキャンダルを報じた。


 『堂本議員、政治資金収支報告書に記載ミス! 5万円の不明瞭な支出』


 たった5万円。しかも事務的な記載漏れだ。法案の中身とは何の関係もない。

 しかし、今のマスコミにとっては格好の餌食だった。


 緊急記者会見。

 フラッシュの嵐の中、堂本が立ち尽くしている。

 記者たちが次々と手を挙げる。


「5万円の使い道は!」

「管理責任をどう考えているんですか!」

「議員辞職の可能性は!」


 いつもの光景だ。揚げ足を取り、怒らせ、失言を引き出し、ワイドショーで消費する。

 堂本が疲弊した顔でマイクを握る。

 その時、最前列にいた剣崎がスッと手を挙げた。


「東西テレビの剣崎です」


 堂本が身構える。一番の「天敵」が来たと。

 剣崎はマイクを握りしめた。脳裏に浮かぶのは、あの深夜の会議室。ボロボロになりながら未来を計算していた、政治家と官僚の姿。


 (俺は、何を伝えるべきだ?)

 (5万円のミスか? それとも、彼らが命を削って作った100年の計か?)

 剣崎は、大きく息を吸い込んだ。


「総理、失礼。堂本議員。記載ミスの件は、修正して謝罪すれば済む話です。もう結構です」


 会場がざわつく。剣崎は構わず続けた。


「それより、お聞きしたい。

 あなたが今、財務省と協力して進めている『教育支援法案』。

 そこには、官僚たちのどんな知恵と、あなたのどんな『願い』が込められているのですか?

 批判や政局ではなく、その『中身』を、我々国民に聞かせてください」


 堂本が目を見開いた。

 一瞬、時が止まったようだった。

 やがて、堂本の表情から「政治家の仮面」が剥がれ落ち、一人の人間の顔になった。


「……ありがとうございます」


 堂本は語り始めた。

 派閥の顔色を窺う言葉ではない。あの夜、氷室と語り合った熱い想いを。

 いかにして財源を見つけ出したか。官僚たちがどれほど苦労して条文を練り上げたか。そして、これが実現すれば、どれだけの子供が救われるか。


 その言葉には、嘘がなかった。

 会場の空気は一変していた。他の記者たちも、ペンを走らせていた。「失言」をメモするためではない。「政策」を記録するために。


 会見場の隅。

 こっそりと様子を見に来ていた氷室が、微かに口元を緩め、無言で会釈をして立ち去るのを、剣崎は見逃さなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ