最終章:正解のない投票用紙
その夜の『ニュース・ライター』は、異例の構成となった。
前半は、堂本の記者会見のノーカット映像。
後半は、相馬とヒカリが取材した、深夜の官庁街の様子だ。
画面の中で、ヒカリが語りかける。
『私たちはよく、政治家や官僚を「敵」だと思ってしまいます。
でも、カメラが捉えたのは、私たちと同じように悩み、苦しみ、それでも「明日の日本」のために戦う、ひとつのチームの姿でした』
映像には、山積みの資料に埋もれて眠る若い官僚たちの姿や、コンビニ弁当を片手に議論する政治家の背中が映し出されていた。
放送終了後。
SNSの反応は、劇的だった。
『知らなかった。官僚ってこんなに働いてるの?』
『堂本さんって人の演説、初めてちゃんと聞いたけど泣けた』
『次の選挙、この法案を通そうとしてる人に入れたい』
そこにあったのは、「誰が一番マシか」を選ぶ消去法ではない。
「この人たちに託したい」という、積極的な意思表示だった。
数ヶ月後、選挙の日。
投票所の出口調査を行っていた剣崎は、ある大学生にマイクを向けた。
「誰に投票しましたか?」
「堂本さんです」
「理由は?」
学生は少し照れくさそうに、しかしはっきりと答えた。
「ネットで、彼と官僚の人たちが頑張ってる動画を見たんです。
批判ばかりする人より、汗かいてる人を応援したほうが、僕らの未来も明るくなる気がして」
剣崎は空を見上げた。
雲ひとつない快晴だ。
相馬が言っていた「灯」の意味が、ようやく分かった気がした。
報道の仕事は、闇を暴くだけではない。
闇の中で必死に光を作ろうとしている人々に、スポットライトを当てること。
そうすれば、国民は、正しく彼らを見つけることができるのだ。
「……さて、行くか」
剣崎はネクタイを締め直した。
彼の目にはもう、かつての濁った色はなかった。
政治家も、官僚も、そしてメディアも。
それぞれの持ち場で、この国の「明日」を照らすための戦いは、まだ始まったばかりなのだから。
(完)
これで、本当に完結です
ありがとうございましたm(*_ _)m




