第15話 マカフシギ
「「ご馳走様でした」」
「さて、それで〝魔技〟の話をするわけだけれど……万超の知っている〝魔法〟って、どんな風なの?」
俺の知っている〝魔法〟……。ゲームとか映像だけど……
「魔法陣でドーン! 呪文でバーン! ……って」
「おおー。やっぱそうなんだ」
「やっぱ?」
「ちなみにバンチヨは〝魔法〟を使っていたの?」
「いや、全然」
「〝魔法〟の成り立ちを習ったりとかは?」
「全く知らない」
「そっかー。じゃあ歴史の勉強みたいになっちゃうけど……」
「お願いしまス」
「熱心だなぁ。とはいえ、私も魔学史で習ったことしか知らないからね」
そうか……〝魔法〟だって歴史があって、今に繋がっているんだよな……。
爪のヤツは時おり、長い尻尾をユラユラ揺らしてスヤゴロと眠っている。
「コホン、では──」
初風先生による授業、二時間目の始まりだ。
「〝魔法〟は〝魔技〟の古い呼び名、というのは前に……話したっけ?」
「うん。聞いた」
「そっか、じゃあ次。さっき万超の言った〝呪文〟……これにも語源があってね。それは樹木の〝樹〟に紋様の〝紋〟で〝樹紋〟──八百万樹の表面に顕れた紋様のことを指してそう呼ばれたの」
樹紋……。
「そしてその紋様をどこか別の場所、地面だったり壁なんかに描き写したものが〝魔法陣〟の元祖ね」
「手描きで?」
「もちろん。で、その紋様を言葉で唱え、描き写した魔法陣から様々な現象を発動させるのが〝魔法〟というわけ」
「紋様を言葉で唱えるって……絵描き歌みたいなもの?」
「そうそう。それが最初期の〝魔法〟と云われているわ」
魔法は……絵描き歌だったのか。
「でも……どうして樹の紋様なんか描き写したりしたんだろう……」
「それは、今も昔も〝魔邪者〟は脅威の対象だからだね」
「マジャモノ……」
「知らないの? ああ、出身地によっては知らない人もいるか……。地域によって呼び方も色々あるし」
へー、そうなんだ。
「〝魔邪者〟とは──これは主として人間の話だけれど──生前に強すぎる未練や怨念があると、その死後……霊魂が魔に変じ、邪に転じて現世に残り続けることがある。それが人に、獣に、植物、鉱物に憑いて彷徨う者を〝魔邪者〟と呼んでいるの」
「こ、鉱物にも!?」
「そうよぉぉ、鉱物の〝魔邪者〟は怖いわよぉぉ」
「が、岩石が動いて襲ってくるの……?」
「中でも一等よろしくないのは、偶然にしろ故意にしろ、生き物──頭、胴、腕、足──の形に配置された鉱物に憑いた〝魔邪者〟だね。肉体が岩塊の生物が暴れ回るっていえばわかるかな?」
おっかねぇ……。
「特に大きな岩石かつ人型の魔邪者は〝巨裂牟〟と呼ばれて、もんのすごく危険だから、万が一出会ってしまったら一目散に逃げること。いい?」
「わ、わかった。」
肝に銘じておこう。
「そういえば……最初に会った時お初さん、俺を〝見た所、魔邪者じゃなさそう〟って言ってたけど……」
「ああ、あれ? いやー、なんか妙な格好しているし、なんとなく……バンチヨと爪刀、霊魂の波動が尋常じゃないような気がしてさー」
──ギクリ!
確かに一度死んで生きてるけど……お初さん、そういうのわかるんだ……。
「──と、いうわけで、話を戻すと、今も昔も……いえ、昔の方がずっと〝魔邪者〟の脅威にさらされていたのね」
確かに、抗う術が確立されていない時代は特に、だろうな。
「そして、なぜ描き写したか……、昔話ではこう云われているわ──
昔むかし、村々を散々に破壊した魔邪者が八百万樹の近くで立ち昇る雷に打たれ、光る粒となって霧散していく様子を見ていた者が在りました。
年老いた農夫〝マカフ〟と、その孫娘〝シギ〟です。
二人は何事が起こったのかと雷の発生した場所へ走り寄ってみると、地面に奇妙な紋様が描かれていて、ふと見上げると樹の幹にも同じものが浮き出ているではありませんか。しかし、しばらくすると、その二つの紋様はゆっくりと、まるで蒸発するかのように、きれいに消えてしまいました。そして風もないのにそよぐ葉や枝が、心地の良い旋律を奏でていました。
村へ戻り、その話をしても信じる者は誰一人としておりませんでした。
シギは、いつもおどおどしている風で、大変な人見知りでした。けれども利発で、歌うことが大好きな子でした。
よく晴れたある日、村のはずれの木の下で、シギは落ちていた枝を使って地面になにやら絵を描いて遊んでおりました。そこへマカフがやって来て、その絵を見て驚きました。シギが描いていたのは、あの日、八百万樹で見た紋様だったのです。一眼見ただけなのに、すっかり覚えてしまっていたのでした。
マカフはおおいに感心して、シギをたんと褒めました。
シギは目を伏せ、せっかくきれいな模様だったのに、忘れてしまいそうになったから、あの日聞いた調べにのせて歌にして覚えたと、はにかみながら言いました。
マカフは、どんな歌なのかひとつ聞かせてほしいと頼みますが、シギは恥ずかしがって歌ってくれません。では一緒に歌いたいから教えてほしいと、マカフは言いました。それならいいよと、シギは少しずつ歌い始めます。
マカフとシギは手を繋いで、途切れ途切れに歌いながら家へと歩き出します。
そして歌い終わったちょうどその時、二人のうしろでガラピッシャンと雷鳴が轟きました。
驚いて振り返ると、村はずれの木は真っ二つになっていて、その裂け目にはチロチロと火が揺らいでいました。
慌てて駆け戻った二人が見たのものは、あの時のようにゆっくりと消えていく、シギの描いた紋様なのでした。
間一髪、あっぶねー」
「………………」
「おしまい」
「……最後の 間一髪、あっぶねー は……」
「ええ。私のアドリブ」
「昔話をアドリブで〆た人、初めてだよ」
「まーまー。そんなわけで、最初の描き写しってのは、こんなわけだったみたいなのよ」
「なるほど……偶然、遊びで……ってことか」
「そうね。そして今度こそ〝樹紋〟は人々の知るところとなり、魔邪者への対抗手段として瞬く間に普及していったらしいわ。呼び名も、八百万樹に浮かんだ紋様の〝模倣〟だったのだけれど、いつしか〝魔〟邪者へ対抗する方〝法〟──〝魔法〟へと変わっていったの」
「おおー」
「魔法は樹紋を描き、それを歌う──つまり詠唱することで発動する。けれど実際に目にしても信じられない人は沢山いたみたいで、〝マカフシギ〟な現象って言葉もこの時に生まれたくらいよ。知ってる? 〝マカフシギ〟」
「知ってるない」
「う ん、どっちよ」
〝摩訶不思議〟なら知ってはいるが……人名合体〝マカフシギ〟は初耳だもの。知っているけど知らないもの。
「なにそのやるせない顔」
「この世界が……俺を……試している」
「お、なんか言い出したぞ」
「お初さん! 続き 頼んまス!」
「おお、どうした急に。まあ、いいけど……」
よし、じゃあ──と、言ってお初さんの話が再開する。
「八百万樹を観察することで新たな〝樹紋〟も発見され、どれも魔邪者へ有効だったことから、〝魔法〟はいよいよ人々に認知されていったわ」
「詠唱はひとつひとつ違うの?」
「旋律はどれも同じらしいわよ。ただ紋様は異なるから歌詞が違うって話ね。初期の魔法は〝雷、火、風〟──どれも最初に詠唱を成功させたのはシギ。この三魔法は〝三つのか〟を文字って、讃える歌──〝讃歌〟と、名付けられたと伝わっているわ」
「シギ、スゴいな」
「そして後に加わる〝水、土〟を合わせて〝讃歌満つ地〟──魔法のおかげで、魔邪者に脅かされない土地になったという意味だね」
「平穏な時代の到来だー」
「けれど、人というのは慣れてしまうと不満が出てくるもの」
「不満?」
「そう。魔法は予め樹紋を複写しておいた場所でしか発動しないし、詠唱には時間がかかるので不便と感じるようになっていったらしいの。まあ実際、魔邪者相手の場合は誘導が必須になるしね」
「うーむ、確かに」
「人が樹紋を描き、詠唱するだけで魔法が発動するのはなぜなのか。長い研究の末、やはり八百万樹だろう、という結論になった。八百万樹を通じて世界と繋がることで、マカフシギな現象を起こし得るのだろう、と」
「なるほど」
「それで試しに、八百万樹の落ち葉で紙を作り、本にして、樹紋をいくつか描いておいて、詠唱だけで魔法が発動するかの実験が行われたの」
「あ、危なくない?」
「どうして?」
「だって、魔法は樹紋から出てくるんでしょ? ──てことはそれが描かれた本からボボンて……」
「ところがドッコイ、そうはならなかったのよ。なんと詠唱すると、思う場所へ樹紋を浮かび上がらせ、魔法を発動することに成功したのよ」
「なぜ どうして ホワーイ」
「三 回 聞くなし。その答えは、本は八百万樹の落ち葉で作られていたから。マカフとシギが見た雷、それが八百万樹自身に当たったりすると思う?」
「自分で自分を攻撃はしない……でも落ち葉なのに?」
「落ち葉でも神気は帯びていて、それはそう簡単に消えたりしない。つまりその本を持った人は八百万樹自身になったも同じってことよ」
それって……別の意味で危ない気がする……。
「八百万樹の落ち葉で作られた本は、魔法を導く書──〝魔導書〟──そしてそれを扱う者は〝魔導士〟と呼ばれるようになる。詠唱だけで発動するようになったので〝樹の紋様〟から、〝樹の文言〟──〝樹文〟と表記され始めたのも、この頃と云われているわ」
「魔法がより便利になったわけだ」
「ただ一つ縛りがあって、魔導書を持っている状態でなければ、発動はしなかったらしいわ」
「所有権とかではなく、実際に触れている状態ってこと?」
「うん、そう」
「みんなで魔導書に手を置いて詠唱したらどうなるんだろう」
「…………面白いこと考えるわね……。それは習ってないから分からないわ」
「残念……ところで、マカフとシギの時代からどのくらい経ってるの?」
「どうだろ……二人の生きた正確な年代とかは伝わってないからなぁ。大陸移動で国土や歴史的資料が失われるなんてザラにあることだし……」
そういえばこの世界、張り切って大陸移動中なんだっけか……。
「あ、それと落ち葉以外では魔導書は作れなかったの? 枝から葉を毟って──とか」
「それが取れないのよ。自然に落ちない限り、ビクともしないんだから」
そうなんだ……スゴいな。
「枝から葉は取れない──と、なってくると、なにが起こるか」
「なにがって……うーん……あ! 八百万樹の落ち葉が、拾い尽くされちゃう?」
「大正解。でも、そうしたところで入手できる総量は知れていて、魔導書はどうしても数に限りが出てくる。高い希少価値がついて、所持することそれ自体が段々と特権化していったの」
おっと……不穏な感じになってきたぞ。
「さらには〝樹紋〟──いえ、この時はもう〝魔法陣〟──に改良、改変を施す研究も盛んに行われた。誰のものよりも優れた、強力な魔導書が追求されるようになるの。競合時代の幕開けね」
「あぁ……やっぱそういうことになるのか……」
「魔導士間での争いも月日が経つほどに多くなり、今までは〝魔邪者〟だけに向けられていた〝魔法〟が、人に対しても使われるようになってしまうの」
「マカフとシギの時代に帰りたい」
「ホントよね。で、そうなってくると魔導書を持たない人々は、魔導士を脅威に感じ始める。樹の文言の〝樹文〟が、呪われた文言の〝呪文〟に変わってしまったのも仕方がないことだったのよ」
いつの時代も、どこの異世界でも、人間は人間なんだなぁ……。
「魔導書は、魔導士の親から子へ継承されるのが通例だったのだけれど、代を重ねていくとその血筋に特異な〝眼〟を持つ者が現れたわ」
「特異な眼?」
「〝魔素〟や〝燦素〟が視える能力を持った眼」
「おお!」
「それによって、〝神合成〟の仕組みを理解したり、〝魔法〟は〝忍惨禍嘆素〟を消費するってことが発見されたの」
「なるほど……。しかし……魔法を使って忍惨禍嘆素を減らすって、魔導士は本当に八百万樹みたいな存在なんだな……」
「神々を穢れから遠ざけるという意味に於いてはそうね。──で、そんなこともあって魔導書、魔導士の価値は彌増していく。特に軍事国家間の戦では重宝されたみたいね」
「戦……」
「大陸の移動で、強い武力を持つ国同士が搗ち合うことも少なからずあったのよ。おかげで忍惨禍嘆素──つまり魔素はいよいよ濃くなり、魔邪者も大量に出現した時代ね」
魔法と聞いて、なんとなく想像していた事と全然違うんだな……。
「そんな時代に──いいえ、そんな時代だからこそ、魔導書無しでもどうにかして魔法を使えないか──と、考える人がいたの」
「待ってました」
「と、いってもその人も魔導士なんだけどね」
「えー」
「でもその魔導士は、国や権力には一切靡かず辺境に暮らし、年老いて尚、ただ純粋に魔邪者で苦しむ人々の助けになりたい──と、腐心していた人だって言ったら?」
「待ってました!」
「老魔導士には子がおらず、弟子を取って魔導書を継承させた。そして自身は一線からは引退した身だったの」
「弟子を取るってのは珍しいことだったの?」
「恐らく史上初──と、云われているわ。魔導書は親類縁者が骨肉の争いをするような代物よ。赤の他人に継がせるなんて、当時の常識では考えられなかったんじゃないかな」
「なんとあっぱれな」
「──だね。それでその老魔導士はどうしたら世界と繋がれるか、に日々を費やすことになる」
「世界と繋がる……魔導書の最初の実験の時の……?」
「そう。〝八百万樹を通じて世界と繋がる〟──その結果、落ち葉で魔導書が作られたわけだしね。万超ならどうする?」
「どうする?」
「老魔導士になったつもりで考えてみて。気に入ってるみたいじゃない」
「確かに老魔導士の実直な感じ、好きだけど……」
うーん……俺だったら……ん〜〜〜……
「やっぱり、八百万樹にヒントがあるんじゃないかな……」
「つまんない」
「つ、つまんない!?」
「バンチヨってばホンットに勘が鋭いよね……。正解よ」
「おお、やったぜ」
「でもそこは一回トンチンカンなこと言って、んなわけないっしょ──ってのが、お約束じゃないの?」
「んなわけないっしょ」
「──ッ! こいつぁ、一本取られたわね……ふっ、なかなかどうしてやるじゃない。これは私も本気を──」
「ヤメテ。それより続きをオシエテ」
「……むぅ……仕方がない。一旦勝負は預けるわ」
いつ……勝負が始まったのだろう……。
「老魔導士は八百万樹へと赴き、手がかりを探した。すると樹の根元になぜか透明な水晶玉が二つ三つ落ちていて、何かに使えないかと一つ拾い、衣服の懐へ入れて持ち帰ったの」
水晶玉が根元に……?
「そして庵に戻り、弟子へ炎の詠唱を指南している時、それは起きたのよ」
ゴクリ……。
「その弟子は巧く炎を発動出来ずにいた。何度やっても小さな火がポッと出るだけ。けれど老魔導師は経験しているから知っていた。その詠唱で生まれる炎はそんなもんじゃない。もっと強い、圧倒的な火炎が──それを思い描いた瞬間、突如としてイメージ通りの魔法が発動したの。その手に魔導書を持っていなかったにも拘らず」
「おおー!」
「二人とも驚いて、すぐ原因を探り始める。すると、持ち帰った水晶玉の中に赤い泡のようなものがプクプクと踊っていて、さらに表面には双葉が一本、ちんまりと生えていたの」
「中に赤い泡……、表面に双葉……」
「そう。それで老魔導士が心を鎮めると赤い泡はゆっくりと消えたけれど、双葉はそのまま。これは何かあると、二人は研究に明け暮れる」
ワクワク。
「その結果判明したことは、水晶玉は八百万樹の種子ってこと」
「種子!?」
「そう。八百万樹は種子を根元へ落とし、成長させて自身と同化することによって、より強固に、より巨大になっていくと分かったの」
俺は、すぐそばの八百万樹を仰ぎ見る。
「何世代も合体し続けてこの大きさってことか……」
「ホラ、あの根元に石みたいなの、見える?」
「ああ、見える。けどあれはただの石でしょ?」
「あれが種子なの。雨が降って、葉や枝から雫が垂れるでしょ? 種子はその雫が滴った時間が永いほど、丸く、透明度が増していくの。そして赤い泡は持ち主の血液」
「え!? 自分の血!?」
「そうなのよ。血を初めて取り込んだ時に萌芽して、2回目からは双葉を自由な形に成長させられるのよ」
「それは……スゴい発見……?」
「ええ。種子と自身の血で世界と繋がる。そして魔導書も詠唱も不要。魔法のさらなる進化ね」
「うおお、さすが老魔導士だぜ!」
「そしてその水晶玉、現物がここにあります。私のだけど」
そう言ってお初さんは、自分の体から水晶玉を出してみせる。
「え……それ、どうやって出したの?」
「〝ポッケから出すぞー〟って強く意識して。逆に〝ポッケに入れるぞー〟って意識すると仕舞えるのよ」
「な、なるほど」
その水晶玉は直径五センチくらいで、想像していたよりずっと小さかった。そして本当に、双葉がちんまりと顔をのぞかせていた。
「見ててね」
次の瞬間、水晶の中に赤い泡がプクポコと発生し、同時に双葉がシュルシュルと──まるでタイムラプス動画の早送りを見ているかのように──成長し始めた。それもただ真っ直ぐに伸びるのではなく枝が複雑に絡み合って、まさに自在という言葉通りに。そして──それは杖の形を成して止まった。
生でこの現象を目撃すると……なんというか、息を呑むな。
「まだ終わりじゃないよ」
「え?」
お初さんがそう言うと、再びシュルシュルと動き出し、今度は剣の形になる。
「まだまだ」
お次は逆再生のように小さくなって、指揮棒みたいな形で止まる。
俺は呆気にとられ、口をポカンと開けて、言葉が一つも出なかった。
「どーよ」
「……………………」
「あれ? どした?」
「すっっっっっっごいな! お初さんってすごいんだな!」
「へへー。そお? えっへん」
「いやホント、ブッたまげた!」
「これで魔技が使えたらもっと格好良かったんだろうけど、残念」
「充分スゴいって!」
「なんかそんなに褒められると照れますな」
お初さんが目を閉じると、シュルリシュルリと形を戻し、双葉となって赤い泡もプツと消えた。
「これが水晶玉。ただ私たち魔導士が〝スイショウダマ〟と言った時、それは〝瑞〟を〝意〟〝召〟す〝魂〟で──〝瑞意召魂〟ね」
「難しいなー」
「ま、忘れちゃったらその時はその時よ」
「あれ? お初さんも〝魔導士〟なの?」
「そうよ」
「なんか……イメージよくないなぁ」
「なによ。私のせいじゃないでしょ。老魔導士のことは気に入ってるくせに」
「老魔導士 は カッコいい」
「コ、コンニャロウ……」
いやーしかし、本当にスゴかったな。お初さんのこと、尊敬せざるを得ないぜ。
「──と、ここまでが〝魔法〟の誕生、その発展と隆盛、そして〝魔技〟の話の導入よ」
「魔法の歴史、思ってた以上に複雑怪奇で面白かった」
「疲れちゃった?」
「俺よりお初さんの方が疲れたでしょ。粗茶ですが、どーぞ」
「わあ、ありがとう! クピクピ──ってそれ私が用意したお茶なんですけど!?」
「んなわけないっしょ」
「んなわけあるわい! 使い所間違ってるっしょ!」
「………………」
「………………」
「「 どっ 」」
「さ、ひと笑いしたところで、魔技編を始めましょうか」
「うぃス」




