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エルモ

作者: 上遠野




なんてことない。なんてことない。

大丈夫。ほら、全然平気。大したことない。全然、気にしてない。


書類を運ぶ振りをして、同僚たちの笑い声がする部屋から抜け出した。

入社2年目。大抵の業務は一人で出来る様になったし、一年若い後輩だっている。

私生活だって悪くない。大学の頃からの一人暮らしは快適だし、通勤電車にももう慣れた。

残念ながら彼氏はいないけど、でも近県に就職した友達が、時々遊びにきてくれる。

そう、順調。何もかもが順調で、だからきっと、甘ちゃんになってしまってるんだ。

私は、ぐっと口角を頬に食い込ませて、変に思われない程度に視線を下げて歩く。

気をつけなければ今にも目から大粒の涙がこぼれてしまいそうで、それを防ぐ為に顔面を凍らせた。

本当に、大したことじゃない。

きいたら、なんでそんなことで傷ついてるの?って絶対言われるような、そういうくだらない悩み。

けど、今の私には、思い出すことも耐えられないくらい、悲しいこと。


『吉田さんって得だよね。仕事してなくても、頑張ってるみたいにみえるじゃん。』


最初は、同僚の軽い言葉だった。

仕事を終えて席を立った瞬間に滑りこんできたそれを、私は戸惑いながらも笑顔で受け流せていたと思う。

帰りの電車で少しだけ痛む胸をさすって、家のお風呂で肩までお湯に浸かったら、そのまま忘れてしまえたくらいの心のかすり傷。

だけど、言葉を替え人を替え、時と場所を替えて繰り返されるそれに、私の傷はかさぶたを作ることも出来ずに、いつまでもジクジクとした痛みを覚えていた。


『忙しそうにしてるけど、本当は暇なんでしょ?』

『吉田さん、余裕よね。』

『その大げさな疲れた顔、やめた方がいいよ?』


なんでそんな風に言われるのか、分からなかった。

何度も自分の素行態度を振り返って、怠慢そうに見えるようなところは出来るだけ矯正した。

朝は誰よりも早く仕事場に来るし、昼休みだって早く切り上げて仕事をする。他の人の仕事も出来る限り手伝って、残業も進んでした。

でも、返ってくる評価は『頑張ってる振りしてる』。

確かに私の仕事は、他の人の補佐が主だし、結果として目にはつきにくいのかもしれないけど。

でも、毎日くたくたになるまで働いて、休みの日も仕事の整理なんかに追われて、自分の時間なんか全然なくて、なのになんでそんな風に言われなきゃならないのか、私には全然分からなかった。


ーーー私ってそんなに怠け者に見える?それとも、本当に私って仕事出来てないの?


誰かに問いつめて聞いてみたいけれど、こちらが真剣になればなるほど、彼らはひらりと逃げてしまう。


『冗談じゃん。吉田は頑張ってるって、知ってるよ俺たち。』


だから怒らないでよ、とおちゃらけて言われてしまえば、それ以上言及することは出来ないくなる。

そうと知っていて、彼らはこの言動を繰り返すのだ。

その度に、私は唇を横に惹き結んで、口元にだけ笑みを浮かべてやり過ごす。

口を開いたら、きっとドロドロとした汚染物質が溢れ出て、部屋中どころか私が今まで順調に過ごしてきた時間まで汚してしまう。 そんな気がして、たまらなかった。


でも、もう限界かも。


私は早足でエントランス近くの更衣室に向かう。

社内で一人になれる場所は少ない。 まさか社外に出る訳にもいかないから、とりあえず、落ち着くまではいつも更衣室の個室で泣かせてもらっている。

今まさに決壊しようとしている目頭を、顔を伏せた前髪で隠して、私はいつものようにエントランスを横切ろうとした。

その時。


「エルモ。」


低い、男性の声。

条件反射で、私の体はぎくりと硬直した。

視界の端に、背の高い、背広の男性が近づいてくるのが見える。


ーーー最悪だ。


決壊寸前のダムが、破裂しそうになる。

さらに口を惹き結んで、口角を頬に食い込ませて、どうにかその衝動に耐えた。

私がさっと男の声を無視して更衣室に入ろうとすると、目の前に大きな壁。

その長いコンパスで、私の前に割り込んだ180センチはあろうかという長身の男は、150センチそこそこの私を覗き込んで再び言った。


「エルモ?」


銀縁のメガネ越しの、鋭利な瞳。外回り帰りなのか、額に浮かんだ汗さえ、彼の魅力を損なうものではない。

そうだ、この男、富永は、いつだって私を”エルモ”と呼ぶ。

あの赤くてボサボサの毛の、鼻が黄色くて大口を開けて笑う、能天気なキャラクター。

それと私のどこが似ているのか分からないけど、彼は初対面から私を”エルモ”と呼んだ。


『富永さん、なんで吉田さんのこと、エルモって呼ぶんですか?』


誰かが、私の代わりに好奇心丸出しで聞いてくれたけど、彼はただ『なんとなく』としか答えない。

見栄えのする営業課に在籍している彼は、確かに見目は良く、うちの課の女の子たちも何かと気にしているようではあったから、私も彼の名前と顔くらいは知っていたけど。

でも、こんな風に人を馬鹿にする人間だったなんて、怒りを通り越してガッカリだ。


「……で、」


いつもなら、それでも笑顔でやり過ごせていた。

彼が私を見つけるたびに「エルモ」と呼んで、別に他に用もないのかそのまま去っていっても。

他の子たちが「吉田さんのことエルモって、案外言い当ててるかも。あの気楽そうなとことか。」って笑ってても。

どうにか口を惹き結んで、耐えて来れた。


でも、今日は。


もう駄目。


もう無理。


もう嫌。


もう、もう、もう!


「エルモって呼ばないで!!」


エントランス中に響き渡る、私の声。

その叫びと共に、最後の砦が決壊した。

溢れ出る涙と、羞恥と、後悔と。

なんでよりにもよってこの男の前で爆発してしまったんだという、底なしの自己嫌悪に襲われて、私は咄嗟に走り出した。

エントランスの受付嬢が、こちらをぽかんと見ている。

すれ違った背広の男性も、皆見てる。

でも、今は放っておいて。

もうどうでもいいの。私なんか、私なんか、どうせ、どうせ!

エントランスから飛び出る。

視界を刺す晩夏の太陽が、容赦なく、惨めな体に降り注いだ。


「吉田!」


ようやく自由になれる、と駆け出した足を引き止める様に、背後からあの男の声。

やめてよ、放っておいて。

こんな時ばっかり、名前で呼んだってもう遅い。最低、最低、最低!

振り返って罵ってやりたい。でも、そんなことしたらもっとみっともないことになる。

既に取り返しがつかないくらいみっともないけど、最後の見栄くらいは晴らせてよ。

私がぐん、と足に力を入れて大きく飛び出した、その瞬間。

有り得ないくらい強い力が腕をつかんだ。


「ーーーいっ!?」

「あ、」


全力で前方に力を傾けていた私と、私の腕を力一杯引っ張った男。

引き合う力が相まってーーー私は盛大に、仰向けに倒れた。

倒れる瞬間、ふわりと風を感じた。

ゆっくり、ゆっくり。

時間を水飴みたいに引き延ばして、身体が空を仰ぐ。

眩しい。

痛みよりも先に飛び込んできた、ビル群の隙間の白い空。

ああ、ここの空って、青くなかったんだ。

なんて一瞬思ったけど、どうやらガラスに反射された太陽光の所為らしい。

腰に鈍く走った痛みと、目から火花が出るかと思うほどの後頭部の痛みに、頭の中が真っ白になって、音が遠のいて。


———ああ。


音のない世界で、地面から生えた高層ビルの根元に寝転んで、私は空を見上げている。

白いティッシュペーパーみたいな雲が、存外なスピードで青い空を横切って、私の上に流れる影を落とした。


———ああ…ああ。




———今日って、こんなに晴れてたんだ。




…パーーーー、ざわ、ざわーーー、だ、ーーーしだ、ーーーよしだ!

ハッと我に返る。

いつの間にか、視界一杯に富永の顔があった。

メガネの向こうの瞳に映った、ぼんやりした顔の私が、一つ、瞬きをした。


「吉田、おい、大丈夫か、動くなよ、今救急車呼ぶからーーー」


未だ思考が定まらない私に、富永の焦った声が酷くゆっくりと流れ込んでくる。

いつも冷静沈着、能面みたいなポーカーフェイスで、人ごとながらこういう無愛想な感じの人間が営業で大丈夫なんだろうか、と思っていたのだけど、どうやら彼も人並みに感情を動かすことがあるらしい。

現に今、倒れた私の為に救急車をーーー


「きゅ、きゅ、だ、いてっ!あいた〜…!」


携帯を耳に当てて「事故です、場所はーーー」と滑らかに話し出した富永を、慌てて止めようとして起き上がろうとしたが、途端に視界がぐわんと揺れて、頭が割れそうに痛んだ。

こ、これは確実にこぶになってる。

起き上がろうとして失敗した私を見た富永は、氷の仮面を鬼の形相に替えて、目で「動くな!」と釘をさしてきた。

す、すみません、と小声で謝ると、それでようやく目尻を下げる。

あ、この人でもこんな顔するんだ。

こんな風に観察出来るなんて、今の私は相当ぶっ飛んでる。

あれ、私、なんでこんなとこで仰向けになってるんだっけ?

そうそう、この男が後ろから引っ張ってーーその前はーーエントランスでーーさけん…


「〜〜〜〜〜〜っっ!」

「痛むのか、吉田。」


頭を抱えて苦悶しだした私に、電話を切った富永がオロオロと声をかけるが、もちろん答えてなんかいられない。

痛い、痛いよ、ほんの数分前の自分、超痛い!

しかも今から救急車で運ばれるって、どんだけ痛い女なの私!

自己嫌悪MAXの私に、「吉田、」と富永が至極申し訳なさそうな声で続ける。


「本当に悪かった。このこともそうだけど、呼び方のことも。」


脳内で自分を火あぶりの刑に処していたところに、彼の言葉が飛び込んできて、また我に返った。

呼び方?ーーーああ、あれか…

頭を打った所為なのかなんなのか、大切なことをポロポロ忘れているようだ。


……大切……。

…果たしてこれは、大切なことだっただろうか?


「もう、いいです…」


数分前まで、頭から火が出る勢いで怒っていたはずなのに、もうどうにでもしてくれという気分だ。

むしろなんで今まであんなに怒っていたのか…。

たかが呼び名で、しかもこんなことさえなければ好きな部類のキャラクターに例えられただけで。

エルモ。

名前も可愛いし、あの明るい赤毛の毛むくじゃらにーーー似て…るのか?私は?


「あの、」

「どうした?痛いか?すぐに救急車が来るからな。他に痛いところはないか?」


私が発した一言で、富永が焦った様に返答してくるのがなんとなく可笑しかったけど、一番問いたかったことを口にした。


「なんで私、エルモなんでしょうか…」


『なんとなく』でエルモが宛てがわれるような見た目でも性格でもないのは自分で自覚している。

私のことを『気楽』という同課の人たちでさえ、私が彼にエルモと呼ばれているのを不思議そうに見ているのだ。

しかも呼んでいるのが、このイマイチ読めない男、富永。

考えれば考えるほど、謎は深まるばかりだ。

私の真摯な問いが届いたのか、富永は困ったように眉を寄せた。

お、こんな顔もするんだ。へー。

地面に寝転がって、あんまりにもあんまりな姿なのに、一体どこにそんな余裕があったのか、私はしばし富永の困った顔を下から拝見することにした。

彼はしばらくなんと言おうかと考えていたようだが、やがて観念したように、


「吉田の口…」

「…へっ!?」


口がエルモ!?私って、あんなに大口!?

素っ頓狂な声を上げた私に、富永がフォローするように続けた。


「いや、いつもってわけじゃなくて、吉田、何か我慢してると、口が真一文字になってて、」


で、目が爛々としてて、テレビで見るセサミ・ストリートの赤い毛むくじゃら…エルモの口を閉じた姿に似ていた、というようなことを必死に彼が説明してくれたけど、後半の謝罪は私の耳に完全にスルーされた。

…そうか、私、我慢、してたんだな。

他人から見ても我慢しているように見えたなら、本当に私は限界だったんだろう。

そう思った瞬間、ほ、と肩の力が抜けた。


そうか。我慢してるの、彼は気付いてたんだ。

私が楽してないって、知っててくれたんだ。

それだけで、どん底だった気持ちが少しだけ浮上できる。

それと同時に、今までめくったこともなかった劣等感の裏側が見え始めた。


そうだ、私はきっと。

私は頑張ってるって、誰かに伝えたかった。気付いて欲しかった。

わざとらしく目の前でため息ついたり、誰かの仕事まで取り上げて自分のものにしたり。

そうまでしても、誰も『頑張ってるね』と言ってくれないのは、きっと周りが私のことをちゃんと見てないからだなんて思ったりして、恨んだりして。


でも、本当は。

周りが見えていなかったのは、私の方。


他人の評価が怖くて、必死に理想の自分に縋り付いて。

その評価が追いつかないから、苛立って、怯えて、勝手に居場所を取られた気になって。


ああ、馬鹿みたい。

大体、私だって誰かに『頑張ってるね』なんて言ったことない。

自分の事で手一杯で、他人の仕事なんて目に入ってもいなかった。

なのに私ときたら、自分のことばかり…あああ恥ずかしい!

というか!言い返せば良かった!

へらへら笑って、全然平気じゃないのに、平気な振りして。

傷ついたなら傷ついたって顔しなきゃいけなかったのに。

自分で本音隠しといて『気付いて欲しい』なんて、恋人に甘える女じゃないんだから!


うああっ やっぱり私超痛い女じゃんかーー!


「よ、吉田、大丈夫か? 意識はあるか? 俺がわかるか?」

「わ、わ、わかるんでちょっと放って置いて…!」


再び頭を抱えて悶え出した私に、心底心配そうに問いを畳み掛ける富永。

でも悪いけど今はそれどころじゃない。


遠くから、救急車のサイレンが聞こえる。

私の為にこの忙しい時間帯に道を譲って救急車を通してくれた車や人々に、羞恥と申し訳なさで消え入りたい心地だ。

ああもう本当に消えてしまいたい…


色んな感情がごちゃまぜになって、顔を両手で隠して一人悶える私を、富永が不安そうに励ましている。

その甲斐甲斐しい姿に、まるで出産に立ち会う夫のようだと思ったら、少しだけ気が楽になった。

私も気まずいけど、きっとこの男も今、人生で上位に入るくらいの気まずさを味わっていることだろう。

ソツのない冷たい男だと思っていたけど、そう考えると少し親しみが湧いてくる。

私は周りに集まり出した野次馬をなるべく意識しないようにして、手の隙間から富永を見上げた。


「…セサミストリート、ですよね。」

「え?」


突然話を振られた男は、戸惑いに声を揺らす。

もしかしたら、私がまだ怒っていると思っているのだろうか。

というか、ただのヒステリー女だと思って恐れられてたり…と考えて凹む。

いやいや、今更だし、そんなの。思われてて当然だし。

全然フォローになってないフォローで自分を励まして、話を続けた。


「私、子どもの頃に見てたんですけど…。確かエルモの他に青いのも居ますよね?」

「クッキーモンスター?」

「あ、はい。…あれも、口は真一文字じゃ…?」


別にエルモに例える必要はないんじゃない?という実に素朴な疑問だ。

だがその質問に、彼は一瞬真顔になり、次いでかぁっと頬を赤らめた。

え、何? 何この過剰反応!

知的クールを絵に描いたようなハンサムの、普段にない狼狽えっぷりに私の方が動揺してしまう。

き、聞いちゃいけないこと聞いた…?

内心冷や汗を流している私など目に入っていないように、富永はそわそわと周りを伺っていたが、やがて何を思ったか急に携帯を開くと、その画面をどこぞの印籠のように私に突き出した。

そこには赤い毛むくじゃらの、大口を開けたキャラクターの待ち受けが。


「エルモ…?」

「こういう、ことだから。」


富永が頬を染めて言う様を、私はぽかんと見上げた。

確かに、富永みたいな如何にも”出来る男”の携帯の待ち受けが『エルモ』なんて…ちょっと…いや、引いたりはしないけど…でも、こんな状況でなければ思わず笑っちゃうくらい意外だ。

まさかそんなにエルモが好きだったとは…


———……ん? …”こういうこと”?


油を注していない自転車のタイヤみたいに、きゅるきゅる音をたてて回り始めた思考を遮る様に救急車が到着した。

救急隊員さんが駆け寄って来て、仰向けでオロオロする私にいくつかの質問(意識はあるか、誕生日はいつか、この指は何本だなどなど)をすると、念のためといってストレッチャーで車内に運ばれることになった。

その間、事情を説明していたらしい富永は、一緒に病院に行くと言い張っていたが、いつの間にか現れていた彼の同僚らしき男に止められて悔しそうな顔をしていた。

いや、多分本当に大した事はないんだけど…。

最初はあんなに怒っていたけど、今は富永に大しての怒りなどない。むしろ申し訳ないくらいだ。

サイレンの音で更に野次馬が増していく。

どこからか「殺人事件!?」「怨恨じゃね?」という非常に物騒な勘違い発言まで聴こえてきて、恐らく外傷の所為ではない目眩を感じた。

ああいっそ誰か私を殺して…!


私の気持ちを察するように、救急隊員が素早く私をのせたストレッチャーを車内に収納する。

だが、さぁ扉を閉めて出発だという瞬間ときに、富永が閉まる扉を押さえこんで、言葉を投げ込んできた。


「あの、返事はいつでも!…ああ、でも、出来れば早い方が…あ、でも無理はしないで」


『出来る営業』とは到底思えないグダグダな言葉を残して、扉が閉まる。

ストレッチャーに横になって、天井しか見えない状況で、私は富永の言葉を必死に整理していた。


———返事……返事って………


呆然とする私に、救急隊員の一人が、笑いを堪えるような仕草で言った。


「プロポーズですか?」

「違います!!」


髪はぐちゃぐちゃ、顔は真っ赤。

ああ、今なら確実に『エルモ』だ。


耐えられない羞恥を押し隠すように、私は赤い顔を、血圧を計られていない方の手で覆った。


———ああ。


車内に差し込む柔らな光を見る。

何も変わらない。いつも通りの太陽。

ビル群の隙間を縫う様に、コンクリートに降り注ぐ。


———ああ。


…変わりたい。

変わりたいんです、神様。

きっとすぐには変われない。私は臆病だし、見栄っ張りだし。

でも、変わりたい。———そう思い続けていたい。


病院に着くまでの短い時間、そんな真摯な気持ちを噛み締めていた私は知らない。

救急車が去った後、現場を目撃していた社員達が、「富永からのプロポーズに動揺した吉田が転んで頭を打った」という誤解を丸々信じて、社内に広めて回っていることを。

その噂を、富永は否定も肯定もせずに、ただ甘んじて受け入れていることを。

そして、事情を洗いざらい聞き出した富永の同僚たちから、今後ずっと「富永のエルモちゃん」と呼ばれ続けることになろうとは———


今はまだ、知る由もないのであった。




全国のセサミストリートファンの皆様、スミマセンでした!(汗)

読んで下さってありがとうございました〜★

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