8話 要塞と竜姫と野田
「……もう、マスターもラーメンも知らないです……。どうせ私は出来損ないのダメ戦乙女なんです……略してダメヴァルですぅ…」
床にしゃがみこみ何やらナルト模様を描いてるラナは無視し、腹拵えも十分なので早速残りの景品を開封していこうと思う。
あ、ラナの作ったラーメンは頑張って食べました。
何事も経験である。修行を重ね、血の滲む思いで改良を重ねていくのだ。ラルティア・ラナ・ルナムーンの麺覇道は始まったばかり。
・HR 豊穣神印の醤油:1本
場所は再び指令室。
開封して出てきたのは、スーパーに売ってる1Lのボトル入り醤油。パッケージにはデフォルメされた豊穣神?が描かれている。
『名称:こいくちしょうゆ(本醸造) 現在料名:脱脂加工神豆(神豆(豊穣神農場直送))(分別生産流通管理済み)、超小麦、喰塩、神豆(分別生産流通管理済み)/アルコール 内容量:1L 賞味期限:なし 保存方法:お任せ ※人間種、またはそれに類する種族が摂取すると栄養過剰で重篤状態になる恐れ有り』
「……俺は食べても大丈夫ってことだよな?」
[マスターは現在種族:亜神なので経口摂取は可能だと推測されます]
ちょっと怖かったけど一舐めしてみた。
……うんまぁっ?!?!
ラナが立派なラーメン職人に育ったらこれを使ってもらうことにしよう。
『皆様からのご意見により、一部ステータスシステムの修正、改訂を致しました。今一度、ご自身のステータスを確認お願いいたします。』
おっ。ステータスシステム変わったのか。
どれどれ。
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Name:野田翔斗神
Type:亜神
Job:見習いガチャ神
Lv.13 -New!!
HP:1000000/1000000
SP:10000/10000
MP:infinite
AGI:7777
STR:7777
END:7777
DEX:77777
LUC:-※計数中です。今一度お待ちください。
《Skill》
・天運(Unique)EX
・キャンペーンガチャ設置(Unique)SSS(Lv.2/10)
・神威 S (Lv.2/10)
・ガチャコイン精製 B(Lv.MAX)
《眷属》
・ラルティア=ラナ=ルナムーン
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職業欄の下にレベルの項目が追加されていた。
言われてみると、こんなにゲーム感満載でスキルレベルまであるのに個人のレベル表示がない方がおかしかった。
それにしても、何もした覚えが無いのにもうLv.13になっている。
その割にパラメータは一切上がってないけど。あ、スキルの"神威"もなぜか1レベル上がってる。
[恐らく先ほど口にされた"醤油"なる食品が原因と推測されます。豊穣神が関係しているのか、保有リソース量が非常に高かったので]
………………。
た、たった一口だけだぞ?!
一口で13レベル上がるんだったら、これ1本使いきったら凄まじいことになる?!?!
すぐさまもう一口飲んでステータスを見る。
……全くステータスは変わっていない。
[どうやら最初の一口だけにリソースが集中していた様ですね。残りは通常の食品となんら変わらないかと]
やっぱりレベル上げはコツコツとやるものなんですね。
・R 魔力式自動小銃MS2.5
気を取り直して次!!
今回の景品で2つ目のがっつり武器。
はじめて生の銃を持ったが、想像より実物は大きくて重い。引きニートの俺はこれを扱うだけでもまあまあ疲れそう。
[魔力を適宜充填しそれを魔力弾として射出するタイプの魔導武器ですね。充填する魔力の属性を帯びた魔力弾を創弾するものも有りますが、これはその様な機構が付いていないので違うものです。恐らく魔力属性に関係なく無属性の魔力弾が射出されます]
実はさっきからベガさんの鑑定(仕組みはよく分からない)&解説が非常に役立っている。流石はEXランク。
「とは言っても俺は魔法の使い方知らないしなぁ」
「マスター、それなら私に試し撃ちさせてくださいっ!!」
幽鬼の様だったラナがいつの間にか回復したのか、魔銃に興味津々だった。
良いでしょう。
[後程戦闘訓練施設にご案内致しますので、そこで試験運用致しましょう]
後でね。
・C 炎熱神ガールズ 3rdアルバム『クリシュナ』
β屋、醤油に続いて明らかに運営のおふざけ枠その3。
見慣れたというか、サブスク全盛の現代からしたら最早時代遅れと言われることもあるCDのパッケージ。
赤を貴重とした豪華絢爛な衣装と共にダサすぎる決めポーズを取る4人の女の子達、その名も炎熱神ガールズ。
どう扱えばいいか戸惑っている俺に[専用設備で再生しましょう]と助け船を出してくれたベガに乗っかり(宇宙要塞ってCDを再生する設備いるのか??)、再生を開始する。
~~♪~♪
司令室に響き渡る、2010年代ガールズバンド特有のポップでライトなロック調の音楽。
……気付けば俺は、存在しないギターを手元でつま弾いていた。
あれは、高校の頃だ。
某軽音部アニメを見たのが切っ掛けで軽音部に電撃入部。なんとかギターを覚え、最後の文化祭で披露。ハイテンションの余り借り物のギターを破壊。周囲からは詰められ、やりきった爽快感どころではなかった。ギターを貸してくれた同級生の女の子は、確かに真っ直ぐ俺の目を見ていったのだ、「死◯」と。
……もう一回ギター買おっかな。
俺は、炎熱神ガールズに自分の青春時代を見た。
感傷に浸る俺の視界の端では、ラナが待ちきれないのか魔銃を構え射撃のイメトレをしている。
……案の定ベガに諫められていた。
・C フライパン
ただのフライパン。
ほんとに、ただのフライパン。
[組成上も地球で取れる鉄鉱石を精錬した物で間違いないです]
後でβ屋に寄付しようかな。
いや、俺が持って帰って使うか?家のフライパンも大分古くなって傷んでるし……。
家……傷んでる……あっ!!
「おいベガそういえば!おまえが天井に開けた穴どうすんの!?」
[そちらは既に修復済みです。つきましてはマスター、マスターの住居を本艦に完全に再現致しますので居住場所を変えて頂くのはいかがですか?]
ええ……
なんか俺にずっと艦内に居て欲しそうな言い草。
どのみち俺は毎日地球に帰らないといけないぞ?
食費もあるし家賃も毎月払わないといけないしさあ……流石に宇宙空間で労働は出来ないでしょう。
[突発的な事態における決裁権、エネルギー供給源としてマスターにはなるべく本艦に常駐して欲しいのは事実です。しかし、現在は経済的理由から地球上を拠点に活動する必要性も理解致しました]
まあ、今はたまたま、たまたまなにもすることがないから、基本的にベガに居てやっても良いけどね??たまたまね??
[只今、マスターが本艦に常駐可能な状態を維持できるプランを構築しています……プラン数2542の中から実現可能性と倫理性から鑑みて最適なプランに絞ります……完了しました。マスター、人間社会に倫理的、道徳的観点から問題のない干渉を行いたいのですが了承を頂けますか?]
なにやらまた悪巧みを始めたベガ。
どうせ止めても、こいつは手を変え品を変え目的達成のために企み続ける気がする。
まあ、倫理的道徳的に問題がないって言っているし高性能な演算能力は正直信頼できる。
こいつとこれから関わってくのは間違いないのだし、ある程度好きに任せるしかないのだろう。
「……許可する。」
[ありがとうございます。早速プランを実行致します]
…………おい、暇だからってマスターの頭に銃口を向けるな、ラナよ。
今日1日、世界が恐らく変わってしまった1日。
適当な性格の俺自身、未だに混乱している。
それでもこの宇宙要塞で過ごせてとても楽しかった。
これまでの人生で俺は大した権力も能力も無かった。しかし偶然が重なり、今やこの巨大で無駄に高性能な宇宙要塞やラーメン素人の竜娘のマスターだ。
正直に言って、めちゃくちゃワクワクしている。
この変化した世界で俺が何をするかは決まっていない。力を持つと言うことは何でも出来ると言うことだろう。
これからもこの凶暴で運任せなガチャの力を使って、人の迷惑にならない範囲で好き勝手していくつもりだ。
ああ、早く次のガチャが回したい!!
何となく一旦区切りです。もし、面白いなと感じて頂けた方がいらっしゃったなら評価の方もよろしくお願いいたします。