23話 ビバ!乱数遊戯
やたら長いスキル説明文出てきますが、鬱陶しかったら飛ばしてください。なんも問題無いです。
[施設名:就職神殿・ハローワーク の解析が完了しました。
施設の特性はステータス上での就職、転職。未だ職業についていない者には適性の有る職業を斡旋。職業が最大値に到達した、または現在の職業が適していないと感じている人にも同系統上位の職業、異なる系統で適性が確認出来る職業を斡旋。就職過程に何らかの試練が設けられている特殊な職業に関しては、一部情報開示や判定上可能な支援を行ってくれるそうです。尚、全てのサービスに地球上の貨幣かDPが必要です。]
「情報量多っ?!」
どうやら、以前貰った特別報酬の解析が完了したらしい。
職業に関しては、まだまだ判明してない部分が大きい。明らかにした情報を地球に還元し、人類に自己防衛手段を持って貰うためにも職業に関する特殊施設はアンロックしておくべきだろう。
なので早速設置していこう。
いつものフロアの空きテナントに設置しようとすると、
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・当施設の最低設置面積を下回っています。設置場所を再検討してください。
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と出たのでフロアの中心部分、一番大きなスペースに設置することにした。
いざ!
設置を実行すると、周囲の景色が一気に変化する。
白亜の大理石、パルテノン式の石柱、磨かれたオークの待座席、カウンター。ハローワークにしては些か雰囲気が静謐過ぎるな。
そして、これまでの施設型と明らかに違う点が一つ。
カウンターの中に、翡翠色の髪をストレートに下ろしたOLさんが佇んでいる。
「初めまして。私はこの就職神殿・ハローワーク 宇宙要塞ベガ本店の専属巫女、イレーネでございます。」
「初めまして、よろしく。乱数神の野田です。」
久しぶりに社会人然としたしっかりめの人と接して、思わず言葉が固くなってしまう。
「この度は当施設を設置していただき、誠に感謝申し上げます。乱数神様や眷属様方の就職に関しては最大限支援させていただきますので、どうかよろしくお願いします。」
早速なので、俺はとある質問をすることにする。
「質問なんだが、今俺って転職できるの??」
「はい。乱数神様は現在149の職業に転職可能です。しかし、乱数神様の適性と職業ステータスを考慮するとあまりお薦め出来ません。現在の職業が最適かつ最善かと思われます。」
「なるほどな…わかった、ありがとう。」
[質問なのですが、就職可能な生物または対象の判断基準はどうなっているのですか?]
ベガが質問?珍しいな
「基本的に知能を有する生命体なら、管理システム上個体登録が可能なので就職が可能です。また、ほぼ完全な生命に近い自律思考可能な疑似生命も就職可能です。」
なるほど。リシュア達は「ほぼ完全な生命に近い自律思考可能な疑似生命」に当てはまるな。
「当神殿のご利用が盛んになりお布施が一定値を越えれば、干渉し合わない別地域に神殿の設置が可能になります。その場合は当神殿が本殿として扱われ、より上位の職業を斡旋することが可能になります。是非、積極的にご利用ください。」
積極的に利用して欲しいとのことなので、俺は特別に就職に必要な金銭を肩代わりすることで他次元組達に就職してもらった。
その結果、スペースエルフの全員が星霊魔導士系統に、オリジンドワーフの全員が魔導星製士系統の職業に就いた。
ヴァンパイアヘリオスは種族全員が魔恒星闘士という職業に就いた。
他次元組全員の就職が終わると、いつの間にか神殿のOL巫女が3人に増えていた。イレーネさんによるとお布施で雇ったらしい。全員が美人なのはやっぱり特別報酬だからだろうか?
◆◆◆
特別報酬の設置が終わったので、お次は乱数神になって新たに得たスキル、"乱数遊戯"の効果を確かめようということになった。
「"乱数遊戯"!」
スキルを発動しようとしたが、
【スキル"乱数遊戯"は戦闘中のみ発動が可能です】
なので現在訓練場のステージで効果検証がてらラナと対戦だ。
訓練場に入り浸っているバトルジャンキーのヴァンパイアヘリオス達や一部のエルフ、ドワーフ達が野次馬しに来たのでまあまあの観客に見守られている。
今回は断神剣は封印。あれは余りにも強力過ぎてテストにならない恐れがある。
「ふふふっ…マスターと言えども遠慮はしませんよ??」
「勝ったら1ヶ月ラーメン無料な。代金ラナ持ちで」
「むっ、言いますね!
ラナにもご褒美用意しててください!」
ラナのご褒美か…何が良いかな?
まあ負けたら考えてやろう。
[それでは両者、規定の位置に着いてください。……ready,…Fight]
戦いの火蓋が切られた瞬間、俺達は亜音速に迫るスピードで肉薄した。
どちらも獲物は剣。STRで俺の優位に立つラナは、超重量級のバスターソードを軽々と振るう。
射程もあり、一撃が致命と成り得る一振を紙一重で避ける。
「"乱数遊戯"!」
【戦闘行為中の発動を確認。対象となるパラメータを設定してください】
(……?…とりあえずSTRで良いか??)
【乱数遊戯:対象 STR に設定。通常抽選に移行します】
「意識が逸れてますねっ!!」
「うぉッと、!」
発動に気を取られていたものの、間一髪で一閃を避ける。
スキルの効果が分からない現在、一先ず作戦として、AGIの有利を活かしインサイドで回避を続け一撃を狙い続けることに集中する。
袈裟に、上段に、横薙ぎに。振るう度に剣筋が冴え渡るラナは恐ろしいが、まだ回避可能な範囲だ。
連撃を躱しきり、ラナに一瞬の隙が生まれた。剣でカバーされようと、仕切り直してこちらのペースに巻き込むつもりで一撃を放つ。
瞬間、俺の身体は剣毎吹き飛ばされた
「ッ?!……くっ!」
以前、模擬戦をしたときとは比べ物にならないラナの膂力。
逸れもその筈だ。ラナの持つ職業は特殊職。毎日ラーメンを作り、提供することでリソースを得ることが出来る。その分STRも成長している。
予想外だったのは……上がり幅だ。
Lv.1の状態でも6桁の値を誇っていたラナのSTR値は、今では7桁という前人未踏の域に到達している。
事実、今のカウンター染みた一撃に於いても俺に少なくはないダメージが通っていた。
只でさえ不利な状況の中、俺は更に状況を悪くしている有る一つの事実に気づいた。
(STRの値が……減少している?)
本来、全ての桁の値が7で固定されていた5桁の俺のSTRは現在、
STR:54444
約2万以上も減少していた。
(…なぜ?減少するだけ、と言うことはないと思うが……今のところ、メリットらしいメリットが見当たらない…)
「"暗黒戦撃"!!」
「!!!」
危険を感じ距離を空けた俺に、闇魔力を乗せた飛翔する斬撃が襲い掛かる。
どうやらラナは、様子見のターンを終了し本気で仕留めるつもりのようだ。
避ける手段が無かったので、俺は"時空間魔導"という奥の手で短距離転移を行い回避した。
「?!…くっ」
やはり、まだ使いなれてないスキルだった為か……俺の左手の肘から先が、転移前の地面に転がっている。
そんな俺を睥睨した闇を司る竜姫は、
一切追撃の手を緩めなかった。
「!!…無理せずっ、降参してっ、良いです…よっと!!」
「……ッ。言っとけ」
手がないだけでこんなにも水平感覚が狂うのか…なんて思いつつ、容赦ないラナの連撃を避け続ける。
今戦っているアンドロイドの肉体には痛覚が無いため、左手の欠損が堪えるということは無いが……戦闘ではどう見ても俺が不利な状況だった。
ラナはAGIで勝る俺の優位性を潰すように、遠距離から面を制圧する魔法攻撃を仕掛けてくる。
「"炎熱爆斬"!!!」
「……ッ…うぉっ!あぶねッ!!」
着弾するなり広範囲に爆炎を撒き散らす魔法斬撃。以前よりもパワーアップしている。
物理、魔法共に俺の優位に立つラナに刃を届かせる方法は…断神剣を持たぬ今の俺には無い。
誰がどう見ても、今の俺は絶体絶命の窮地に立たされていた
——筈だった
(……?!?!)
望み薄の勝ち筋を探していた俺の脳内に、何かを祝うようなファンファーレの音が鳴り響いた。
【当選を確認しました♪当選報酬を STR に加算します】
STR:7,816,588
「!なっ…」
アナウンスを契機に突如、俺のSTRの値が爆増した。
「また余所見っ!!
…そろそろラストスパートですッ!!」
いい加減幕締めを図ったのか、竜の覇気を滾らせたラナが眼前まで迫り来る。
【継続中の当選を確認しました♪当選報酬を STR に加算します】
ラナの振るうバスターソードが、俺の脳天に叩きつけられ——ない
「ッ?!…それが新しいスキル、ですかっ??」
ラナの渾身の一撃を、頭上に構えた剣で跳ね返した俺は、溢れんばかりのパワーを確かめるようにゆっくりと立ち上がった。
STR:789,475,388
(…なるほど、そういうスキルか)
どうやら、勝利の女神はようやっと俺に振り向いてくれたらしい。
「……1ヶ月間、チャーシューは二倍で。よろしくな」
勝利を確信した俺は、トップギアでラナへと接近。
焦りの所為か、がら空きとなった右脇から剣を振り抜き……そのまま、ラナの身体毎弾き飛ばす
「……ぐはぁッ?!?!」
STRでも勝る俺に、ラナが打てる手は遠距離戦のみ。ここから積極的にインサイドファイトを仕掛けていけば、
俺が勝つのは必然だった。
◆◆◆
その後、何戦か繰り返し"乱数遊戯"の大体の性能が明らかになった。
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・乱数遊戯
戦闘時のみ発動可能。
戦闘行為中、HP,SP,MP,AGI,STR,END,DEX,LUCの内、任意のパラメータを指定し、その1%に当たる値を1秒毎に減算する。100秒が経ち任意のパラメータが0になった場合、戦闘行為中の値は0で固定されそのパラメータにはいかなるバフ、デバフも効果作用が出来ない。
減算時間中、毎秒1/319の確率で抽選を行う。当選した場合、(元々のパラメータの数値)×100の値をステータスに加算する。そこから100秒間、減算無しで抽選が行われる。この場合の抽選は当選確率81%で固定される。100秒間で当選しなかった場合、減算を伴った通常の抽選に移行する。「減算無しの100秒間抽選」は当選を続ける限り継続する。継続中当選した場合、(今回の当選直前の数値)×100の値をステータスに加算していく。
尚、増減した任意のパラメータの数値はスキル解除後も戦闘行為が続く限り固定される。
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……要はステータスの値を対価にしてるだけで、1/319、初当たりからオール10R、大当たり中の継続率81%のパチスロである。残保留とかあるのかな?
乱数神って、もしかしてパチスロの神様なのか?今度7の付く日にパチ屋に突貫して確かめなければならない。職業やスキルの効果検証は大事なのだ。
とりあえずお腹が空いたので、みんなでβ屋に来た。何と言っても無料だしな!
「この宇宙要塞を御したりとんでもない権能を持っていたり……前々から只者じゃないのは知ってたけど、ショートってあんな強かったのね…」
「今回たまたま戦闘に向いたスキルが出ただけだ。能力も安定してないしな」
「……ふむ。ぬしは気付いてないのかもしれぬが、ぬしに宿る神性は今とんでもないことになっておるぞ。我等がこの船に乗り込んだ日と比べても桁違いに強まっておる。」
「ショートくん、戦ろうよ。絶対楽しいよ」
「………時間があるときな」
スキル検証の模擬戦から、何やら皆が俺を持ち上げてくる。特にヴァンパイアヘリオス達からの熱い視線……気付かない振りでもしとくか。
俺自身は別に戦闘狂ではないのだ。剣術の訓練は楽しいでのスポーツがてら日課にしているが、必要が無いのに争うようなことはしたくない。
分からないけど、地球にも強いやついるだろ。多分。
「お待たせしました!チャーシュー2倍、β屋特製、竜姫ラーメンですっ!!」
「!!ちょっとぉ!!!私の手料理も食べてくれないのにこの女の料理を食べるって訳?!?!完璧な浮気じゃない!!どうゆうことよ翔斗!!」
ただ、その強いやつが、俺達に対して牙を向いてきたら……この艦のマスターとして一切容赦するつもりはない。チートだろうがバグだろうが運営に怒られようが、徹底的に叩き潰してやる。
そのためにも、もうちょっと戦闘の訓練増やそうかな…なんて思いながら俺は無料のラーメンを啜った。
……坐◯博徒
2/19 短編「本当に読んで欲しい本命投稿に誘導するバズ目的の短編」を投稿しました。この作品のpvを伸ばした過ぎて書いちゃいました。"ガチャ神"の宣伝目的で書いたものをここで宣伝してもあんま意味は無いですが、個人的に面白く書けたので是非読んで下さい。