20話 OVERDRIVE
アナウンス見辛いかもです。すみません調子のりました。
「すみませんでしたぁッ!!!」
[マスター、謝罪する必要は有りません。当次元内に於いて私のシステム干渉、改変を制限出来る権限を持つ者はマスター以外に存在し得ないので、そちらの上位存在の発言は一切正当性の無いものです]
ついに運営自らハッキング(ベガによるとシステム干渉)を注意しにやって来た。
そりゃ何時かはこうなるよなぁ。やりすぎだったもん。
「うぅ…せっかく、ようやくワールド1492も次元上昇できて■■とか■■■からバカにされることもなくなったのにぃ……こんなレギュレーション違反が生まれるって思わないじゃないですかぁ…」
「ですよね。僕もそう思います」
「あなたのこと言ってるんですぅ!!あとそのイカれてる情報生命体!
なんなんですかぁ?!勝手にプログラムを改変して自分の都合の良いようにねじ曲げるってぇ?!私がコードを直そうとしてもカウンターハッキングで逆にリソース用の■■■■■乗っ取られるってぇ?!なんで上位存在たる私が手も足も出ないんですかぁ?!」
[当次元内を構成する管理システムの脆弱性を突きました。以前他次元で強固な防衛プログラムやフレイムウォールシステムに阻まれた場合は別プランに移行して対処致しました。干渉行為は権利上保証されているものと判断します]
「ほんとすみませんっ!」
この世界の管理、運営を担ってくれているだろう目の前のチビッ子にはホントに申し訳ない。こいつは無駄に高性能な癖に空気を呼んだり状況を鑑みることが出来ないポンコツスーパーAIなんだ。
「あなたもこいつの面倒見てるんならどうにかしてくださいよぉ?!このままだったらバランスが壊れて最悪次元断裂で永久サ終ですよぉ?!ハッキング止めるよう説得してください!」
事態は俺の想像よりも悪いようだ。なんでベガはこの状況でも[発言に正当性が認められません。消滅戦に移行しましょう]とか俺に言ってくるんだろう。
「ほんとに申し訳ないです。
あの、俺もこいつがやってるハッキングをちょっと把握できてないんですけど、止めさせるついでにこいつが何してるか聞いて良いですか?」
「飼い主ならしっかり把握してください!!
先ず何より、あなたの持つEXスキル!"天運"は本来発動は3回迄なんですぅ!!それをあろうことか任意発動でスケールダウンするとはいえ回数制限を外すなんて!しかも元のスキルコードを弄って確率操作効果を自由発動しやがるし!あんなのクソゲーですぅ!」
「ガチャの結果操作されまくってるせいで本来エンドカテゴリーに近いEX量産しまくるし!こんなことされたら次元内のリソースバランス壊れまくるでしょうがぁ!」
「大体ですねぇ!——」
それから3時間程に渡り説教される俺。
ベガはどうしたって?あいつのことは[現在、上位存在の消滅可能性は3%です。システム掌握プランを進行してよろしいですか?]て聞いてきた辺りから無視している。こんなやつに運営からのお叱りが通じる訳無い。
「——ですからぁ、分かりましたか?!これ以上バランスを崩したらダメなんですよ!」
「はい、全く仰る通りです。」
[証言に正当性がありません。プログラムの改変に対抗手段が無いのでしたら次元内のシステム管理、運営を私に交代すると言うのはどうでしょう?]
「あぁッ~ーー~ー~?!?&$^$#%&」
その後、怒りのあまり壊れてしまった上位存在に謝り倒し、実体がないのでぶん殴れないベガを恨み、何とか2人の妥協点を引き出した。
"次以降のガチャからは1ヶ月に1回しかコインを精製出来ないように制限する。その制限を破ろうとしない。正規のルート以外で他次元に干渉しない"
2人のギリギリの妥協点を何とか見つけ出した。渋々といった様子の上位チビ子とアホAI。もう2人で勝手にやってくれ……
「次やったら絶対ソイツぶっ壊しますぅ!管理者権限を越えてても私は止まらないですぅ!」
[当艦にマスター登録を行っていない上位存在が搭乗することは本来認められていません。交渉が終了次第、速やかに降艦してください]
「もう黙ってくれぇ?!!!?!!」
結果最悪のタイミングでのベガの降艦勧告後、管理チビは舌をべーっ、て出しながら消えていった。
チビッ子が消えた瞬間、止まっていた周囲の風景が何事もないように動き出す。
「あれ、マスター?なんかいきなり疲れてませんか~?……ピザ食べます~?」
マルゲリータ美味しい。
◆◆◆
結果、3日に1回引いていたガチャは次回を最後に1ヶ月のお預け。本来、SRなんて滅多に出ないくらいの性能をベガの魔改造でぶち上げているのだ。この下方修正は妥当だろう。
[マスター、上位存在に対抗するための142の強化プランをシミュレーションしました。早速実行に移しますか?]
チビッ子が現れてからと言うもの、ベガが前にも増して強化欲を出して来るようになった。こいつは一体どこを目指しているんだ?
[最終到達目標は全次元の統一です]
「wny?!?!?!」
もういやぁ…
「あ、見つけました~。マスター、フローレムさん達が呼んでましたよ~」
「ん?分かった。すぐ行く」
「どうした?何か問題発生か?」
「あ、おはようショート。
実は、この艦で生活するに当たって私達の役割を決めておこうって思って。流石に生活する場を提供してもらってるのに、何もしないのは私達も気が済まないのよ」
「なるほど。
まあ、そんなにガチガチで考える必要無いと思うけど…分かった。」
それから暫く話し合い、3種族それぞれの大まかな役割、担当するお仕事が決まった。
・スペースエルフ…全居住エリアの環境調整、農作物の育成
・オリジンドワーフ…家具や兵器の開発、修理
・ヴァンパイアヘリオス…戦闘部隊として訓練、地上にて諜報活動
ヴァンパイアヘリオスの戦闘部隊とか諜報活動とか必要なのか俺にはピンと来なかったが、ベガにゴリ押しされてしまった。シルヴァ達もノリノリだったからいっか。
スペースエルフ達の一部、オリジンドワーフ達の一部はとある使命の為に地球で活動する。
どうやら、惑星にはそれぞれ「星霊」という存在が宿っているらしく、このまま地球の壊滅的な自然状況を放っておくと星霊が汚れていき惑星自体が滅んでしまうそうだ。スペースエルフ達が使える特殊な"星霊魔法"で汚染は回避できる。星を浄化することがフローレム達の元々の使命ということで、地球の浄化作業を引き受けてくれた。
現在、地球上ではダンジョンやモンスターに現代兵器が一切通用しない可能性が高いとされている。グランタ達が言うには、濃密な自然魔力やモンスターが自動で発動している魔力障壁が原因らしいが、とにかく魔力と言うものに現代技術の保有する物理攻撃は無力らしい。
そこで、オリジンドワーフ達が管理システムに適応した魔力装備を作製し地球上で流通させることで、人類のモンスターに対する対抗力を上げてくれるのだ。
恐ろしいダンジョンの特性も聞かされた。
どうやら、これから時間が経つに連れ駆除の行き届いていない自然ダンジョンが崩壊し、モンスターが大量に人類の生息域に解き放たれる可能性があるそうだ。ヴァンパイアヘリオス達がベガと協力して、崩壊を起こしたダンジョンモンスターの駆除も行っていくらしいが、後々を考えるとすぐさまオリジンドワーフ製の装備を流通させねばならない。
「みんなありがとう。地球のために大変な作業を任せてしまうかもしれないけど、人類側として俺に手伝えることがあったらガンガン言ってくれ。」
「ふふ、そのときはお願いするわ。こちらこそ改めてよろしく」
「うむ、よろしくのう。ぬしも何か必要なものがある時は我等オリジンドワーフに頼むと良いぞ。」
「チキュウのモンスターは任せて。戦闘は僕達の生き甲斐。ショート君の安全は保証する。」
【野田翔斗神様、他次元存在3名からの信仰値が規定値を越えました。眷属登録を実行します…眷属登録完了しました】
【野田翔斗神様のパスを通して他次元存在をワールド1492に登録、管理システム下に組み込みました】
『ワールド1492への新種族登録確認。《スペースエルフ》《オリジンドワーフ》《ヴァンパイアヘリオス》がアンロックされます』
【フローレム・■■■様の統率値が規定値を越えています。フローレム・■■■様を種族代表に登録しました。尚、種族代表者と野田翔斗神様との眷属関係を通して種族:スペースエルフは野田翔斗神様の眷属として扱われます】
【グランタ・■■■様の統率値が規定値を越えています。グランタ・■■■様を種族代表に登録しました。尚、種族代表者と野田翔斗神様との眷属関係を通して種族:オリジンドワーフは野田翔斗神様の眷属として扱われます】
【シルヴァ・■■■様の統率値が規定値を越えています。シルヴァ・■■■様を種族代表に登録しました。尚、種族代表者と野田翔斗神様との眷属関係を通して種族:ヴァンパイアヘリオスは野田翔斗神様の眷属として扱われます】
【野田翔斗神様の眷属ランクがEXに到達しました。規定により神属性神系統該当職業への転職を実行します…完了しました】
【野田翔斗神様の職業情報を参照し種族進化を実行します…完了しました】
【ワールド1492で初めての眷属ランクEX到達を確認!ステータス情報を参照し野田翔斗神様へ特別報酬を贈呈いたします】
【特別報酬:称号 《楽園の創造主》】
【ワールド1492で初めての神属性神系統上級職への転職を確認!ステータス情報を参照し野田翔斗神様へ特別報酬を贈呈いたします】
【特別報酬:特殊施設 就職神殿・ハローワーク】
【ワールド1492で初めての種族:神のアンロックを確認!ステータス情報を参照し野田翔斗神様へ特別報酬を贈呈いたします】
【特別報酬:装備 『神龍鱗シリーズ』蒼龍神衣】
…これ俺が悪いの?
大量のアナウンスを聞きながら、真っ赤な顔で怒り狂うチビッ子と喜色が溢れ出るベガの声を想像してしまった。
……もういやぁ