12話 ミライ堂書店 宇宙要塞ベガ店
2回目の10連ガチャ。
レアリティトップのEXやSSRは引けなかった。それに今回はCが多い気がする。まだ2回目なのでなんとも言えないが。
改めてベガのアシスト?(ハッキング?)がなかったときのことを考えると恐ろしい。アシスト有りでこんな…おちゃめな結果なのだから。
[現在、私のシステム干渉によりスキル"天運"を用いることで高レアリティアイテムの排出率を100~1000倍に引き上げています。また、排出物に対しても要求性能、性質に出来るだけ沿うように確率操作を行っています]
物騒だが頼もしい。
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Result;;
SR P新成紀エヴォンゲリオス17 ~シン;未来への咆哮FF~
C 電子レンジ(SYONNY製)
HR 恐竜型魔導戦闘騎獣ヴァロキラプトルll
C 未来転生~俺の娘から死ぬほど求婚されてます~ 8巻
SSR 眷属:人造人間三兄妹『機械使徒シリーズ』
HR 電脳ネギ培養セット
C コカ・コーラ風練り消しゴム
HR 超時空ドリンクサーバー
C 《quest;lank C:サワダ電機で5000円以上のお買い物》
R 特殊施設:ミライ堂書店
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パッと見では使い所の分からないものばかりだ。バラエティーに富んでると言えば聞こえが良いが、些か富みすぎている。
とりあえず全部開けてみるかぁ…。
今回は低レアリティのものから開けていこう。
・C 《quest;lank C:サワダ電機で5000円以上のお買い物》
以前もあったクエスト型の景品。
確か前引いたヤツは、解放した瞬間クエストが始まる可能性があって開けていなかったな。
もしクリア可能でも時間制限とかで行動が縛られると厄介だし……これもとりあえず保留で。
・C コカ・コーラ風練り消しゴム
ただのコーラの匂いがついた練り消し。
懐かしい。小学生の頃、こいつが欲しくてやたら親を困らせたよなぁ……。その割りにすぐ失くすし。
一握の郷愁が甦る。
[日本における地球人類の幼少期は特殊ですね]
ベガからも特殊のお墨付きをいただいた。
ドラゴン裁縫セット、面白消しゴム、ロケット鉛筆。定められたルールの中で、いかに文房具の範疇から外れずにトキメキを校内に持ち込むかが肝だったのだ。
一応ベガに検査してもらったけど、至って普通の練り消しでした。
・C 電子レンジ(SYONNY製)
こちらは日本トップクラスの家電メーカー、SYONNY製の電子レンジ。
こちらも普通の電子レンジらしい。
今一度今回のキャンペーン内容を思い出す。
【キャンペーン:未来への憧憬】
【キャンペーン内容:時空間属性、物理属性、機械属性対象のアイテム、スキル、拠点、クエスト、その他の排出率が超超超Up!!!ランクEX限定解放!!!】
……まさかこいつが機械属性アイテム枠?
「……あれ?でもこいつコンセント着いてないな??」
[送電によるエネルギー供給ではなく、魔力で稼働するシステムなのでコンセントは着いていないと考えられます。本艦に於いては、動力パスを通してマスターの魔力を注ぎ込むことで稼働します]
?!?!
全然普通じゃないだろこれ!!
[確かに、家庭電化製品というより家庭魔導電子機器製品に該当しますね。以前航行した次元内の国家では魔導具等と呼ばれていました]
恐らく、ガチャのような特殊な能力持ちじゃないと現時点でこんな高性能な魔導具が手に入ることはないだろう。
これは然るべき場所に提出すればとんでもないことになるんじゃないか??
[地球上にいる魔導機器研究職や技術士系統の職業保持者に提供すれば、地球の魔力運用や魔導機器開発が大きな進歩を遂げる可能性は非常に高いです]
こいつのレアリティ自体は一番下だったが、レアリティはあくまでただのレーティングであり、地球にとっての実用性はまた別だというのがよく分かった。
こらから低レアリティでも注意深く調べることにしよう。
こいつは一旦、艦内にある俺の部屋に置いて有効活用することにします。
・C 未来転生~俺の娘から死ぬほど求婚されてます~ 8巻
見たことのないタイトルのラノベ。
なんだこの逆バックトゥザフューチャーみたいな題名。というかなんで今回のキャンペーン排出対象なんだ??練り消しもそうだけど。
……もしかして、「未来転生」の「未来」の部分に反応した??
[地球上で見受けられる至って普通の書籍です]
今度こそノーマルらしい。
魔力的な作用も一切検知できないそう。
まあ、ベガの艦内には娯楽が少ないので俺とラナで暇なときに回し読みでもしよう。このありふれたタイトル感ではあまり期待できないけど。
・R 特殊施設:ミライ堂書店
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・施設型の景品の設置には、当筐体を設置予定場所へ移動させて画面下の「設置」ボタンを押して下さい。
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β屋のときと同じ表示が筐体に出ている。
てとことは、こいつも特殊な施設型なのか…??
とりあえず今回もベガの艦内で程良いスペースを見繕った。
場所はβ屋から30mくらい離れた空きスペースで同じフロア。移動の際β屋の前を通ったのでハチマキ姿でスープを調整してるラナに手を振っておいた。熱心でよろしい。
設置予定場所の土地面積はβ屋の2.5倍くらいの広々空間。 本屋さんらしいから、出来るだけスペースは確保しとくのが吉だろう。
このフロアから上下5フロアくらいはショッピングモールの空きテナントぐらいのスペースがたくさんあるので、排出された施設の設置にちょうど良い場所が多い。
もうちょっと上のフロアには、ここより狭い個室タイプの部屋が何百何千とある。恐らくベガが運用された当初はクルーも千単位で存在したんだろうな。
その上各種施設や格納庫も何十と備えている。空間魔法で拡張しているとはいえやはり圧倒される規模だ。
[ここなら特に設置に際して問題はないです。マスター、お願いします]
ほーい
設置!!
一瞬で、ほぼ何も無かった空きスペースはどこか見覚えのある町の書店に早変わりした。
看板には、「ミライ堂書店 宇宙要塞ベガ店」と書いてある。
ここ以外にも店舗あるときしか書かないよ?それ?
それでは潜入捜査だ!
店内は本当に普通の本屋さん。
一般書、雑誌、児童書、漫画や実用書、文庫本etc…
「全然普通だな」
[マスター、推測するにランクRに該当するものはどこか以前の地球と違うシステムが働いている可能性が高いです。注意深く観察してください]
「そうは言われてもなぁ……」
どこも通常通りだぞ?
言ってもβ屋も不思議パワーで材料調達したり従業員が特殊な職業に就く以外は今んとこ普通のラーメン屋だしなぁ…
実用書のコーナー…政治…哲学…思想…ダンジョン…文化…
やっぱりどこにも……
…………ダンジョン?
……ほんとにダンジョンだ。
「誰でも制覇!富士ダンジョンの歩き方」
「東京駅ダンジョンの真実 著・有川一馬」
「にゃこちのまったりダンジョンさんぽ」
…なんじゃこれ
[…解析完了しました。
マスター、この施設内にある紙媒体製品に関して一つだけ全体に共通する特殊な点を発見しました。
この施設はどうやら、紙媒体製品を未来から取得してそれを販売している様です]
それを聞いた俺は、一冊一冊つぶさに調べた。
すると確かに、僅か3,4日前の出来事である超常現象を「ワールド・アップデート」という数10年前の事件として扱っている書籍が大量に置いてあった。
未来の情報が取得出来る。どう考えても特大のアドバンテージじゃないか?
試しに俺は、「エッフェル塔ダンジョンを救った天才ダンジョン経営者 著・パリス=ダードリー 訳・吉村メリー」を手に取って開こうとすると、
【お客様、立ち読みはご遠慮ください。当店の商品は購入した後に楽しみましょう】
何か特殊な力がかかっているのか本が一切開けない。
無人のレジに持っていくと、
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購入する商品は「エッフェルダンジョンを救った天才ダンジョン経営者 著・パリス=ダードリー 訳・吉村メリー」でお間違いないでしょうか?
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と出てきたので首肯する。
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こちらお値段が、
地球価格 3000万円(日本)
ダンジョン価格 3万DP
となっております。購入でよろしいですか?
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はぁ?!3000万??!!
[未来に関する情報の重要度と地球の貨幣価値で試算した所、値段は適正かと思われます。また、条件として当該情報に対する価値が高かったのもあるかと]
…それにしても、とてもじゃないが手が出る値段ではないな。
なるほど、ここは未来の情報を高値で手に入れる情報屋としての役割も果たしているのか。
やはりガチャは低レアリティでも油断できないな…
それから、2~3時間ぐらい店内を物色した。
それで分かったことは、「店頭に出ているのは必ずしも未来のものだけではない」「情報の重要度に比例して値段が釣り上げる」という2つのことだ。
例えば、何でもないファンタジー児童文学。昔ながらのシリーズものは普通に置いている。
漫画コーナーでスマホとにらめっこしながら調べたが、既出の本と未出版の本がちょうど5:5くらい。他のコーナー、特にダンジョンやスキル、職業に関する場所では比率も大きく変わるだろう。
先ほどガチャから出てきた未来転生がシリーズで置いて有ったので、興味本位で一冊レジに持っていってみる。880円で販売されていた。地球では未発売らしい13巻も同じく880円の定価だった。
ここから分かることは、何も未来から取り寄せてるだけで法外な値段は付けないということ。
その後も検証すると、やはり情報の重要度と値段は高確率で相関がある。当然と言えば当然だった。
……宗教のコーナーにとんでもない一冊があった。
「運命神野田翔斗神様の聖句ガチャ 編・運命の賽広報部」
見なかったことにしよう。