六人の平穏
「久しぶりに二人で行けるね」
双葉はそう言いながら俺と腕を組んできた
昨日俺達六人での交際を宣言した後、一日で学校中にその話は広まった
基本的には他人事なので周りは最初は興味を持つも、自分の事ではないと今までとは違いわざわざ見に来るまではなくなっていた
(まぁそれでも一部の男女は納得してなかったり、廊下などですれ違うと見られるけど)
俺の立場を羨ましく思うやつや、髪を切った後から興味を持って狙って来られても、それはもう遅い思う
(後の祭りって事だな)
俺はこのまま六人で仲良くしていければなと思った
「今日からはまた曜日ごとのペアで登下校しましょうか」
朝にいつもの六人で挨拶をすると、百合がそう提案した
「昨日の朝の件で結構広まったし、もう私達に声をかけてくるような人もいないでしょ」
昨日の朝に、百合と一葉が教室に来て俺達の交際を宣言した後、自分達の教室に帰ると一部噂が回っていたらしく、同級生達に聞かれその場でも宣言をしたらしい
「柊さんもこれで男子から声をかけられる事もなくなったわね」
「正直助かりました、いきなり声をかけられても男の人って慣れてなくて…」
一葉はずっと目立たないようにしていたため、あまり他人との交流はしてなかったらしい。特に異性となれば余計に話す事はなかったので、声をかけられるのは苦手だったみたいだ
『そういえば例の三人の件はどうなったの?』
一葉の目の前で俺の事を誘惑し、暴言を吐いて傷つけた三人の事を思い出した
「あ〜それなら昨日柊さんを見て驚いていたわね、それに私が柊さんと教室内で仲良くするようになったからもう何も出来なくなってるわ」
『なるほどね、助かるよ』
百合が一葉の傍にいてくれるなら安心だと思う、俺が助けられないのは悔しかったけど
「今までは軽く挨拶するくらいだったけど、これからは学校でも仲良くしましょうね〜」
「はい、お願いします!」
「いいのよ、もう私達は家族みたいなものだからね〜」
百合の言葉を聞いて土曜日の事を思い出した、一葉と関係を持った事により百合も一葉をまた一段と受け入れたということなのだろうか
「え〜、なんかいいなぁ」
「つまり龍司君ファミリーに入るには条件がある」
『いや別にないと思うけど…』
他の三人が、百合達の会話を聞いて羨ましそうにしている
「まぁまぁ、先は長いんだから皆もこれからもっとお互いを知っていきましょう」
「は〜い」
普通の関係ではない分、皆が仲良くしてくれるなら俺は嬉しいと思った
『じゃあ、双葉行こうか』
「うん、そうだね」
「じゃあ私達もゆっくり後ろからついてくから」
俺は双葉と二人で歩き始めた
(相変わらず見られはするか)
朝の登校の経路や時間はいつもと変わらず、別に覚えてるわけではないが同じ学校の生徒はいつもすれ違う人達だと思う
ただ前に比べて異性として見るよりも、可愛い女の子達が歩いているのを見ているって風に感じた
『流石に、ある程度俺達の事は知られてそうだな』
「あ〜まぁ昨日は私も結構友達とかに聞かれたし、でも好意的というか羨ましいって言われたかな」
『羨ましい?』
「龍司君と付き合えていいなぁって」
『そう言われて悪い気はしないけど、俺には双葉達がいてくれればいいしな』
ちなみに俺は友達がいないので、大樹ぐらいしか男子は連絡先を交換していない
(まぁその大樹からも昨日の朝に話したから何も来なかったけど)
朝に大樹に話して、その後昼休みに皆でご飯食べてる時に、龍司はやっぱり主人公じゃんとか言われた
学校に着いて百合達と分かれた後に教室へ行くと、昨日の件のおかげか周りは静かだった
「お〜す龍司」
『ああ、おはよう大樹』
昨日と変わらず朝の挨拶を交わす、大樹もいつも通りだった
「今日も朝から仲良さそうで羨ましいぜ」
『ありがとう、俺達はずっと変わらないさ』
「く〜言うねぇ、そういえば龍司をカラオケに誘ってくれと言われたが、断っておいたからな」
『カラオケ?』
「こっちの男子五人と他校の女子五人で、カラオケに行くって同じ部活のやつから誘われててさ」
「東本君、あなた死にたいの?」
話を聞いていた桜達が入って来る
「いやいや、だから龍司の事は断ったからさ」
『それが正解だろうな、助かるよ』
誘いがあるのはありがたかったけど、彼女達が悲しむ事はしたくなかった
『そういう話は一切いらないから』
「おう、俺も命が大事だからちゃんと断るわ」
双葉や霞は少し不機嫌そうに大樹を見ていた、大樹も間に立たされただけだから悪いわけではないと言っておいた
(周りを見る限り、今日は大丈夫そうかな)
俺達の関係は今のところ問題なく進めそうだと思えた
「ねぇねぇ龍司君、今日の放課後付き合ってくれない?」
昼休みにお弁当を食べ終わってゆっくりしていたら、双葉が声をかけてきた
『今日は双葉と帰る日だし大丈夫じゃないか?』
「うん、ちょっと買い物デートみたいな?」
『あ〜いいよ、買い物するなら少し早めに下校しようか』
皆にメッセージで、放課後は早めに帰る事を伝えておいた
「ん〜、二人でこうやって歩くのも久しぶりだね」
『あ〜たしかにそうかも』
先週から色々と忙しくてゆっくりする時間がなかったので、こうやって二人っきりで歩くのは久しぶりだった
『そういえば土曜日はありがとうな』
双葉に聞いてたおかげで、一葉と過ごす事が出来た
「いえいえ、お姉ちゃんも龍司君との事は気合入れてたのでそろそろかなって思ってましたし」
『そうなんだ』
この前の図書室の事を思い出す、姉妹だし双葉には相談をしていたのかもしれない
「あの日龍司君が帰ってから少しお姉ちゃんと話したんですけど、凄く幸せそうにしてて羨ましかったです」
『あ〜それなら良かったけど』
俺も経験がそこまであるわけではなく上手く出来たかわかってなかったけど、ただ一葉とした事は良かったと思っている
「私も、龍司君とする日を楽しみにしてますからね」
『急ぐ事でもないからゆっくりとね』
「わかってますよ〜、ただお姉ちゃんの話を聞いてたらいいなぁって思ってたり」
双葉も初めてのはずだし大切にしてあげたいと思っている、ちゃんと思い出に残るようにしてあげたいと思うのは間違ってないはずだ
『そういえば買い物って何?』
「あ〜土日に龍司君のお母さんに色々教えてもらえたので、ファッション系の雑誌が欲しかったのと後は二人で話をしたかったなぁと」
『なるほど』
先程の話は皆の前で堂々とする事でもないし、俺もちょうどメンズ雑誌が買いたかったところだった
『じゃあそれ買いに行きますかね』
「うん、行きましょう!」
双葉と書店に行き、お互い雑誌を買った後に送っていった
久しぶりに落ち着いた一日を過ごせた、やっと俺達の平穏が戻って来たと思えた




