五人の彼女
「高梨お前ふざけるなよ!」
俺は今、目の前にいるクラスメートに胸ぐらを掴まれている
(正直こうなるのは予想外だったな)
朝の登校後早々に、教室で周りに公にする機会が来てしまったようだ
『おはよう』
「あ、龍司君おはよう!」
「おはよ〜」
一葉と初めて関係を持った土曜日が過ぎ、皆との交際を公にしようと相談した日曜日の明けの月曜日の朝に、いつものメンバーが高梨家の前に集まった
『お〜皆可愛いね』
昨日母から学んだ化粧や髪型のセットなどを、本日から実践していた
「龍司君、私はどうかな?」
一葉が声をかけてきた、土曜日の様なセットは母の腕でないと無理だが一葉なりに頑張ったようだ
『いいと思うよ、三つ編みはやめたんだね』
一葉は髪を切る前の双葉をもっと綺麗な感じにしたイメージで、少し大人になった感じがした
「柊さんは今日から男子にモテるだろうね〜」
「え、その時は高梨さんが助けて下さい!」
百合と一葉でやり取りをしていた、同じクラスだったのは幸いかもしれない
『では行きますか、機会があれば早めに周りに周知出来るようにします』
自分から堂々と宣言をつもりはないが、大樹に伝えてそれとなく広めてもらうのもありかもしれないと思った
登校中も教室に行くまでも、やはり女の子達は周りから見られていた
(見られるのは先週からの流れで慣れてはいるけど、やはり男子の視線が増えたな)
霞達が前より可愛くなってるのに気がついたのか、同級生の男子が結構見ていた
「お〜す龍司」
『おう大樹、おはよう』
「ああおはよう、あれ…なんか柊さんいつもと違う?」
「東本君おはよう、よく気がついたわね」
「東本君おはよう」
「うわ、真白さんとかもなんか可愛くなってね?」
朝の挨拶をしてきた大樹が、双葉達を見て気がついたらしく驚いていた
『ちょっと昨日、うちの母が皆に教えたんだ』
「あ〜龍司のお母さんってそういう仕事だったな」
前に大樹には聞かれたので話した事があった
「そのせいでまた周りの視線が凄い事になってるな」
『あ〜』
(ちょうどいい機会だから、今大樹に話をして公にするか)
『大樹、聞いて欲しいんだけどさ』
「おう、どうした?」
『実は俺達さ、付き合ってるんだ』
大樹以外の周りも聞いていたのだろう、徐々に騒がしくなる
「あ〜俺はそうだろうなと思ってたぞ、てか最近男子も女子も断られ続けてたから、お前達はもうそうだろうという噂も流れていたわ」
先週の事で雰囲気的にも伝わっていたのかもしれない、それならそれでありがたいと思った
「あ〜やっぱりそうなんだ」
「まぁ仕方ないよな」
「柊さん達の様子見てたらわかるよね〜」
「もっと早く高梨君に気がつければなぁ」
周りからの反応は、今のところ悪くはなさそうだった
(これならもっと早く公にすれば良かったかもな)
そう思っていたのだが、俺達の様子を見ていた男子が声を上げた
「おかしいだろ、お前らもう少し違和感を持て!」
たぶんクラスメートの男子だと思う、俺達の様子を見ていたのだが近づいてきた
「真白さん、高梨なんかじゃなく俺と付き合ってくれ」
「無理」
目的は霞だったらしく、すぐに霞に向かって告白をして断られていた
「ぐっ…いやおかしい、高梨お前なんかしただろ」
霞に告白を断られた男子の怒りの矛先が俺に向いてきた
『いや俺は何もしてないよ、霞が無理っていうなら無理なんだろ』
「なんで真白さんは高梨なんかに、そうかわかったぞ」
霞の事を見てまたこちらを振り返った男子は、胸ぐらを掴んできた
「高梨お前ふざけるなよ!」
「龍司君!」
「龍司、おいお前止めろよ!」
桜と大樹が目の前の男子を止めに入ろうとしていた
『ぐっ、何がふざけてるんだ?』
「しらばっくれるなよ、お前真白さんの弱み握って脅してるんだろ!」
(俺が霞の弱みを?何を言ってるんだこいつは)
勝手に決めつけて俺が悪いかのように叫んでいる
『そんなものないぞ、俺達は合意の上で今の関係なんだ』
「そんなわけないだろ、それじゃなきゃなんでお前なんか」
俺が何を話しても聞き耳を持つ様子はなかった
『ところで、お前はいつから霞の事が好きなんだ?』
ふと疑問になり聞いてみた
「俺は前から気になってたんだよ、でも最近可愛くなって、今日も先週より可愛いからさっきの話聞いて告白したんだよ」
『それならもっと早く告白しろよ、なんか霞が可愛くなったから告白しましたとしか思えないぞ』
結局霞には断られてるわけだし、告白した勇気は認めるが俺のせいにしてるのには納得いかなかった
「五月蝿えよ、お前は真白さんの事を解放しろ」
『だから弱みなんて握ってないって』
「信じられるかよ、お前だけがなんで三人も彼女がいるんだよおかしいだろ」
常識的に考えて目の前の男子の言うことは間違ってはないが、実際に起きてるのだから仕方がない
「ちょっと髪切ったくらいでちやほやされやがって、お前より良いやつなんていくらでもいるんだからな」
『いやそれは知らないけど』
別にモテたいから髪を切ったわけではないし、いい加減どうにかしないとと思った
「は〜い、そこまで!」
『えっ?』
声をする方を見たら、百合と一葉が俺達の教室に来ていた
『百合!?一葉も…』
教室の入口に二人の姿が見え、こちらに歩いてきた
「いや〜教室行ったらやっぱり柊さんが男子の注目の的でさ〜、そしたら双葉ちゃんからメッセージが来たからこっちに逃げて来ちゃった」
一葉達も大変だったらしい、一葉の様子を見ると少し疲れているようだった
「あ、高梨のお姉さんですか?あなたの弟がやってる事をどうにかしてくださいよ」
先程の男子が百合に声をかけた、百合に俺をどうにかさせようと思ったらしい
「何?龍司のやってる事って」
「ここにいる真白さんの弱みを握って彼女にしてるんですよ、他にもそこの柊さんや黒音さんも彼女にしてるらしくてどうにかしてくださいよ」
先程の男子に言われ、百合が少し考えている
「おかしいでしょ三人も彼女がいるなんて、弱みでも握らないとそんな事になりませんよ!」
あくまでも俺が悪いかのように大声で話をしていた、教室の中だけではなく廊下まで人が溢れていた
「三人…?五人だけど?」
「はっ?」
百合の言葉に、俺の胸ぐらを掴んでいた手が緩んだ
「だから私達五人が龍司と付き合っているのよ」
「そう、こういう事」
霞が近寄って来て俺にキスをした
『か、霞!?』
「他の皆も」
霞に言われて皆が近づいてくる
「そうね」
「わかりました」
「それがわかりやすいか」
「ちょっと恥ずかしいかも」
他の四人も、次々に周りの目がある中、俺にキスをしていく
「これでわかった?全員龍司の女よ」
『いや百合、言い方』
「えええええええええ!」
「嘘だろぉぉぉぉぉ!」
今まで静かだった周りが一斉に叫び出した
「そういう事だから、つまらない事で私達の男に突っかからないことね」
百合が決め台詞のように周りを見渡しながら言って、一葉と自分達の教室へ戻って行った
(なんか俺の考えていた事と違う…)
結果公にする事は出来たが、その後も注目の的になるのは変わらなかった
(まぁこれで告白とかそういうのはなくなるといいな)
今日の事で少しでも静かに、学校生活が送れる事を祈った




