同級生の誘惑
「ねぇ高梨君、私と付き合わない?」
俺の首には、目の前にいる知らない女子の腕が回っている
(なんでこんな事になってるんだ?)
目の前の女子が、俺の唇へ向かって顔を近づけてきた
『放課後ですか?』
一葉と図書室に閉じてこられた日の、次の日の昼休みに、クラスメートから放課後に図書室に来て欲しいと言われた
(昨日の事、バレたのかな?)
前日に一葉と二人でいた時に、何か不備があったのかもと確認したい気持ちになった
(とりあえず、行くなら一人の方がいいかな)
一葉と百合以外は昨日の事は知らないはず、だから図書室に一緒に行って何か悟られるのは良くないと思った
(別に隠すような事ではないかもだが)
それでも一葉の気持ちを考えると、土曜日までは言わないでおきたかった
「龍司君、行こう」
放課後になり霞達が声をかけてきた
『ごめん、ちょっと図書室に用事があるから、その後に部室に行くよ』
「一緒に行く?」
そんなに時間かからないなら付き合うよと霞達三人がこちらを見ていたが、自分一人で大丈夫だよと伝えた
(しかしなんだろうな…)
昨日一葉と過ごした時には、周辺は綺麗なままだったが
(本が落ちてたとか、何か忘れ物をしたとかかな)
まずは昨日の状況を確かめたくて図書室へ向かった
(何も問題はなさそうだな)
図書室へ入り奥へ向かうと、昨日一葉と二人でいた場所は綺麗なままだった
(そうなると、何故俺は呼ばれたのだろう)
俺に声をかけたクラスメートは、普段は話す機会はなくどちらかと言うと初めて話す相手だった
(まさかこんなとこで告白とかはないだろうし、何か大事な話でもあるのかな)
暫く昨日の事などを思い出し、考えていると背後に気配を感じた
「高梨君、待ったかな?」
『ん?』
振り向くと見覚えの無い女子がいた
(誰だっけ?)
どこかで見たことはあるが、会話などはした事がない相手だと思った
『もしかして、俺の事をここに呼び出したのは君?』
「ええ、ごめんなさい、高梨君とお話がしてくて」
目の前の女子は、微笑むと距離を詰めてくる
『えっと…』
周りを見るが、自分達以外はいないようだった
「私、高梨君の事いいなって思ってて」
『うっ』
異性には慣れているのだろうか、俺との距離を一気に詰めてきて抱きつこうとしてきた
『いや近いんだけど』
「ふふふ、ねぇ高梨君、私と付き合わない?」
俺の首に回してきた腕が、目の前の女子との距離を近づけようとしてくる
(こういうの慣れてる人なのかな、あれ?)
顔や髪型をよく見てみると、少し知ってる人だと思い出した
前に、移動教室の時に廊下で見かけて大樹が言っていた、同級生の中でも一番可愛いと言われてる女子だった
(なるほど、あの時の人か)
本人とは話をした事は勿論なく、何故今の状況になってるのかもわからなかった
『あのさ』
目の前の同級生の肩を押し、距離を離した
「はい?」
『俺、君の事を知らないんだけど、なんでこんな状況になってるの?』
距離を離されて呆然としている同級生は、俺にされた事が信じられない様だった
「高梨君が噂になってたから、見たらいいなと思って」
少し考えるような仕草をしながら答えてくる
「連絡先を聞いたり告白しようとして呼び出そうとすると、相手にしてもらえないと聞いたので、友達にお願いしちゃいました」
悪さをしましたという仕草は少し可愛いと思ったが、そういう事をされたのには驚いていた
『悪いんだけど、俺大切な子達がいるから』
俺にそう言われて驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔になり
「じゃあ私もその一人になりますね」
そう言いながら抱きついてこようとした
『いや、間に合ってるので』
俺は両肩に置いた手に力を入れて距離を保ち、近寄らせないようにした
「なんでですか、私も仲間に加えて下さいよ〜」
『いやそういうのはいいから』
抱きつこうとする子とその肩を押さえて距離を取ろうとする俺との戦いが始まった
「龍司君、何してるの?」
暫くすると、霞の声が聞こえてきた
「誰これ?」
『とりあえず同級生だ』
俺と力比べをしている風になっている同級生を、霞が指を指していた
「なんか入口が塞がれていたんだけど、そういう事ね」
桜が霞の横から出て、目の前の女子の首根っこを掴んで引っ張った
「ほら離れなさい」
「きゃうん」
犬の鳴き声みたいな声を上げながら、俺に向かっていた力が離れていった
『全く、なんでこんな事したんだ?』
桜に捕まっている同級生を見て、俺は疑問に思った事を聞いた
「だって〜噂の高梨君が好みだったんだもん」
「この子、図書室の入口に友達を立たせて、入れないようにしてたわよ」
『え、マジか』
やけに人の気配を感じないと思っていたが、入口が塞がれていたらしい
『二人はどうやって入れたの?』
その状況で入れた二人は、無理をしたのではないかと心配になった
「あなたのお姉さんよ、今柊さん達と廊下で説教してるわ」
『あ〜』
俺が来ない事が心配になったらしい、皆で様子を見に来たらこの状況だったという事だった
その後図書室から出て百合達と合流し、今回の件を説明した
『手荒にはしないでやってくれ』
百合がどこかへ連れて行って説教をするというので、相手の事を思ってお願いしておいた
「龍司君も後で説教だからね」
『え、なんで?』
笑顔なのに怒っているのがわかる一葉達を見て、俺はまた何かをやらかしたのだなと思った
その後、戻ってきた百合が言うにはもう俺には関わらないと約束させたらしい
俺もこういう事がないように、次からは誰かと一緒に行くことと釘を刺された
後日大樹に話をすると羨ましいと言われたが、俺はうんざりだと言っておいた




