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一葉の涙 2

「ねぇ、キスしよ」


暫くすると泣くのも落ち着いたのか、一葉が口を開いた


『ああ、しようか』


「…」


目を瞑って唇をこちらへ向けていた、いつもは一葉からしてくるが、今日は俺からして欲しいみたいだった


(そういえばいつもしてもらうばかりで、自分からするってあまりなかったような)


望まれて受け入れる事が多いため、自分からするという事はなかなかないと思う


(皆もそういう気持ちなのかな)


他の子達もいつも望んだらしていたが、たまには俺から望んで欲しいと思ってるかもしれないと思えた


「…ねぇ、まだかな」


色々考えていたら一葉を待たせてしまっていた、目の前で拗ねる顔が可愛くて、唇を重ねながら強く抱きしめた


「んんっ!」


少し強かったのか、一葉が反応したので抱きしめる力を緩めて唇を離した


『ごめん、痛かった?』


「ううん、少し驚いたけどしてくれたの嬉しかったよ」


目の前で頬を染めながら微笑む一葉は、眩しいくらいに輝いて見えた


(あ、何か違うかも…)


高校に入学してから今日まで、俺の周りには五人の女の子達が集まってくれた


(俺はずっと好きにならないといけないと、義務的に考えて付き合っていたのではないだろうか)


周りの子達は皆可愛いと思うし、俺を求めてくれるのは嬉しいと思っていた


(でも俺から本気で欲しい、好きだと思った事はあったのだろうか)


周りの子達への気持ちに応えないといけないと、自分の本心とは別の気持ちで対応していただけなのかもしれない


(別に嫌ではないんだけど、流されていたってのは大きい…でも)


一葉と初めてキスをした日、死んでいた俺の心に何かが宿った気がした


(もしかしたら…今俺がこういう気持ちを持てるのは一葉のおかげかもな)


そう考えると、徐々に胸の鼓動が激しくなっていた


「ん〜?」


暫く考え事をしていた俺を、目の前の一葉はずっと見て待っていてくれていた


『あ、一葉…俺さ』


「ふふ、そっか」


『んっ』


自分でもわかるくらい顔が熱くなってきている俺の唇を、一葉が塞いできた


「ねぇ、大好きだよ。もっとしよう」


一回唇を離してそう言うと、一葉は俺を逃がさないというように首の後ろに両手を回し、抱きしめるように唇を重ねた








どれくらい経ったのだろう、唇を離した一葉の口元は、外から入る光で輝いてるように見えた


「ねぇ、龍司君って…」


ガチャガチャッ


『えっ?』


図書室の奥にいたからわからなかったのだろう、たぶん鍵をかけ忘れたのに気がついたのか鍵が閉まるような音がした


「あれ?」


一葉もその音を聞いて、入り口の方へ耳を向けている


『鍵、閉められたかも』


暫く二人で息を殺していると、一切の気配は感じなかった


「そっか、そっか…」


『えっ』


一葉は俺の肩に手を置くと、ゆっくりと床に押し倒してきた


「そういえば、さっきあの人達にイイコトしようって言われてたよね」


目の前で笑う一葉は、これから悪戯をしますという目をしていた


「私達がいるのに、悪い男だよね〜」


押し倒した俺の耳元で、俺を責める様な言い方をしてきた


「お仕置きしないとね〜」


そう言いながら、自分の着ている制服のボタンを外し始めた


『あ、一葉、待って!』


「え〜、せっかく閉じ込められたんだし、しようよ」


先程の顔ではなく、拗ねるような顔で訴えてくる


『いや、学校だし…流されたら駄目だよ』


「もう、いつもそうやって!漫画とかでそういうシチュエーションもあるじゃん!」


『いやいや、それエッチなや…ぐっ…』


話をしている途中で唇を塞がれる、一葉は震えながら俺を押さえつけていた


「私だって、覚悟決めてるもん」


唇を離して照れている一葉は凄く綺麗だった、だから尚更この場の勢いではそういう事はしたくなかった


『一葉すまないが窓も開くから出れるし、それに…』


ドンドンドンッ!


その時図書室の扉が激しく叩かれる音がした


「えっ?」


(あ、来たか)


実は図書室に入る前に、他の皆にはメッセージを送っていた


「龍司、柊さん!いるの?」


入口から声が聞こえる、驚いた一葉は乗っていた俺から離れた


『制服直しておいて』


そう一葉に伝え、入口へ向かった


『百合いるぞ』


「あ、良かった〜柊さんもいるの?」


『一葉もいる、少し話をしてたら鍵を閉められてさ』


「あ〜、ちょっと鍵貰ってくるから待ってなさい」


『ああ、ありがとう』


百合が扉の前から離れる気配がした、いや結構いい音が聞こえるので走っていったのだろう


「あ〜あ、残念だな…」


制服を直したのだろう、横に一葉が来ていた


「龍司君としたかったな、本気だったのに」


一葉を見ると、先程とは違い泣きそうな顔で落ち込んでいる様に見えた


『あ〜、一葉もし良かったらさ、土曜日出かけないか?』


「それって、デートって事?」


こちらを見た一葉の顔が、少し明るくなった


『まぁ、さっきの詫びじゃないけどさ』


「そっか〜、わかった!楽しみにしてるからね!」


笑顔に変わったので、誘って良かったと思えた


『ん?てかこれって内側から開くじゃん』


鍵を開けて廊下に出ると、ちょうど百合が鍵を持ってきたところだった


「あはは、漫画の世界みたくはならないんだね」


少し残念そうな顔している一葉には、申し訳ない事をしたかと思った


「でも、土曜日楽しみにしてるから」


そう耳打ちをしてきた一葉の言葉に、土曜日のプランをしっかり考えないとなと思った




図書室の鍵を閉めてから百合と共に三人で鍵を返しに行き、下駄箱へ向かうと他の三人が待っていてくれた


一葉や俺は、他の子達に図書室で二人でいて何かあったのかと言われたが、ただ閉じ込められたところだったと誤魔化した


『たまたま読みたい本があって図書室に行ったら、閉じ込められたんだよ』


「そうですよ、びっくりしたよね〜」


挙動不審な俺達に疑いの目があったが、百合の言葉で話が変わった


「そういえば今週の土日は、お母さんが家にいるから皆高梨家に集合ね」


「あ、楽しみです!いっぱいお化粧とか教わらないと」


双葉達がそれを聞いて、やる気を出していた


(すまん、百合)


何かを察したのか、フォローしてくれた百合に感謝しつつ土曜日の予定をどうしようかと思った


(後で相談するか)


全員を家に送ってから、二人で自宅へ戻った






「で?実際はどうだったのよ」


図書室での事を気になったのだろう、家に入ってすぐに聞かれる事になった


『その前に相談があるんだが』


放課後二人で歩いていたら、三人組に言われた事を百合に報告した




「なるほどね、それで図書室か」


『ああ、たまたま鍵が開いてたから入れてさ』


三人組の事より、一葉との事が気になったらしい


「とりあえずその三人組には心あたりがあるから、後で処理しておくわ」


『処理って』


「それより柊さんとはどうだったのよ?」


どうしても聞きたいらしい、俺は百合には隠し事はしないようにした


『一葉は俺としたかったらしい』


「ふ〜ん、なんでしなかったの?」


百合の気持ちが読めないが、こちらを目を細めて見ている


『いや、だって一葉は初めてだしそういう勢いではさ』


「他の皆としたくはないの?」


『そんな事はないけど、初めてはその…思い出になるような感じがいいのかなって』


言うのがちょっと恥ずかしくて、百合から視線を逸らした


「はぁ、そんなの関係ないわよ、私の同級生とかも皆初めては彼氏の家でとか、結構場所関係なくしてる子もいるわよ」


『う、それはそうだろうけど』


「他の子達は龍司としたいと思ってるんだから、もっと応えてあげなさいよ」


『そんな簡単でいいのか?もっと大切にするべきかと』


「龍司がしたいかはどうなのよ」


(俺?俺はしたい…か?)


今日一葉へ気がついた気持ちは、間違いないと思えた


『そういえば土曜日なんだけどさ、一葉と二人で出かけたいんだけど』


「ああ、いいんじゃない」


問題はないらしい、一葉は日曜日に母さんにお願いすればいいだろう


「てか龍司さ、柊さんの事本気で好きになったでしょ」


『えっ!』


「見ればわかるわよ、良かった…龍司もちゃんと変わってきているのね」


『え?あ、うん』


そう言いながら微笑む百合は、母のように温かく見えた


「他の子達は土曜日はこちらに任せなさい、その変わり柊さんと仲良くね」


『ああ、わかってる。百合ありがとうな』


「いいわよ、ただし今日は一緒に寝ようかなぁ」


『いいよ、寝ようか』


ただ寝るだけでは済ませない雰囲気だが、そこは気にしない事にした


(さて土曜日はどうするかな)


今日の詫びにちゃんと一葉を楽しませないとと思えた




だが俺は知らなかった、百合達へ一葉からとあるメッセージが届いていた事を

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