暖簾との別れ 1
「ふふふ、寝顔可愛い」
「あの髪の隙間から、チラッと見える泣きぼくろがいいよね」
「抱きつきたい」
「皆少し静かに!」
夢の中にいたらドアの開く音が聞こえて、意識が徐々に覚醒してきていた
俺の部屋に誰かいるのかと思った時には、四人の気配があった
「おはようのちゅーしたら起きるかな」
一葉の声が聞こえる
「じゃあ、私やる」
霞がそれに乗っているが
(もう起きてるんだけどな)
俺はそれに付き合うかどうか悩んでいた
(時間は何時だろう、皆が来るって事はいい時間だよな)
人数が多いので、今日は十時に美容室に行くことになっていた
(なんとなく、八時くらいな気がする)
まだ時間に余裕がありそうなのでそのまま付き合うことにした
「じゃあ順番にしていって起こした人の勝ちで!」
「賛成」
「いいですよ、負けません」
四人はそう言って近づいて来る気配を感じた
(皆朝から元気だな)
そう思っていたら、勢いよく部屋の扉が開いた
「龍司、起きなさい」
「ひゃぁっ」
俺に一番に近づいてたのは一葉だったのだろう、突然の百合の乱入に驚いていた
「あなたたち、朝から龍司にイタズラ?好きねぇ」
「あはは、なかなか起きなくて」
「もう起きてるわよ、わかるもの」
「えっ」
百合に言われたので目を開く、目の前には霞の顔があった
「んっ」
一葉が離れたので霞がしようとしてたらしい、いやされたのだが
「おはよう、龍司君」
『ああ、おはよう』
唇を離して微笑む霞が、朝から可愛く見えた
「あ〜!ズルいよ〜」
一葉が涙目で見ていた
『皆おはよう』
「龍司君おはよう!」
「早くリビングに来なさい」
『了解』
各自部屋を出ていくので、追いかけるように部屋を出てリビングに向かうことにした
『朝から俺は贅沢だな』
「ふふふ、実感した?」
朝から家に女の子達がいる光景に、幸せを感じていた
百合がご飯を作ってくれて一葉が運んでくる、霞がコップと飲み物を用意してくれて、双葉と桜はソファーに座りながらこちらの様子を見ていた
(この先もずっと、こんな風に皆といられたらな)
贅沢な事を言ってるのはわかっているが、理想の形だなと思った
「ご飯食べたら準備して行くからね」
百合に言われたので時間を確認しつつ、朝食を済ませた
食事が終わると、先程は出番なかったからと双葉と桜が片付けと洗い物をしてくれた
(これじゃただのヒモになりそうだ)
俺もちゃんと男として、皆の横に立たないといけないなと思った
「それじゃ行くわよ〜」
皆で家を出て、美容室に向かう
「髪切ってセットしてもらったら皆でデートしようか」
「いいですね〜」
「龍司君とのデート用に服欲しいかも」
「百合さん、選んでもらえますか?」
『荷物持ちくらいはするよ』
皆に楽しんでもらえる一日になるといいなと思えた
美容室の場所は一駅隣にあるらしい、電車の中でも目立つのか、他の乗客に女の子達が見られていた
(痴漢とかは大丈夫そうだが)
チラチラと皆を見る視線が周りの男達から感じられたので、俺は少しでも壁になれる位置に立っておいた
(やっぱり皆可愛いんだろうな)
自分の置かれている立場は、やはり特別なのだなと感じられた
「いらっしゃいませ〜」
駅を出て少し歩くと、母や姉のお気に入りの店に着いた
中に入ると、落ち着いた雰囲気の女性の店員に迎えてもらえた
「あら高梨さんいらっしゃい、他の皆さんも今日はよろしくね」
『よろしくお願いします』
「よろしくお願いします!」
皆で挨拶し、二人ずつということで最初に一葉と双葉が切る事になった
「次は真白ちゃんと黒音で、私と龍司は最後ね」
お楽しみは最後にしておきましょうという姉の笑顔に、俺の髪がどれだけなくなるか不安になった
(ボウズだけは避けたいな…)
そこまではならないだろうが、久しぶりに髪を切るのでどうなるか正直ワクワクはしていた
「私は髪の長さはそこまであまり変わらずに、このような感じがいいですかね?」
一葉が渡された雑誌を見ながら相談をしている
「私は、少し切ってもらってこうする感じで」
双葉はスマートフォンの画面を見せながら、店員に説明をしていた
「ふふふ、皆が龍司のためにどう変わるか、楽しみにしてなさい」
百合に言われて自分のためと意識させられると、少し恥ずかしい気持ちもあったが、楽しみに感じられる
「終わりました〜」
一葉が先に終わりこちらへ来た
「龍司君どうかな?」
切る前と比べて全体的に髪先が整えてあり、普段かけてる眼鏡にかかっていた前髪が眉くらいまで切ってあり、前より明るい感じになっていた
『凄く可愛いよ』
「やったぁ!嬉しい」
全体的な長さは前髪以外は変わらないけど、印象はかなり違うなと思えた
「交代で真白ちゃんね」
霞が座ると百合が近くに寄っていった。店員と何かを話をして戻ってきた
『何を言ったの?』
「ん?この前家に来たでしょ、その時の事を参考にアドバイスかな」
この前母が霞の髪をいじった時は、かなり可愛いと思った
(そこら辺を参考にしたということかな)
霞が切り終わるのを楽しみに感じた
「私も終わりました」
双葉も終わり戻ってきた
「どうかな?」
双葉は切ってセットされた髪をアピールしてきた
(うわぁ、可愛い)
正直な気持ちがすぐに出てきたが、外見で惚れ直した事が恥ずかしくて言葉が出なかった
「龍司君?」
双葉が不安な顔で見てきた、俺が驚いて黙っていたからだろう
『ミディアムくらいと思ってたけど、もう少し短めにしたんだな』
「うん、これくらいが似合うよって言われたから。おかしいかな?」
『いや、凄い可愛いよ』
「本当に?嬉しい!」
照れながら言う俺を見て、頬を染めながら喜んでいた
「む〜龍司君、私にももっと言ってよ〜」
横で一葉が拗ねていた
『ごめん、一葉も可愛いからさ』
正直双葉の印象が変わりすぎて、驚いていたのは間違いなかった
「次は私ね」
桜が立ってこちらを見た
「龍司君はどんな私がいい?」
『ん?』
桜に聞かれたがいきなりだったので少し悩んだ
『ん〜桜は黙ってれば美人で清楚な感じだし、それが際立つ感じだと長いままのがいいかなぁ』
「黙ってればは余計なのよ!」
そう言いながら席に座り、店員と話をしていた
「私はどうしようかなぁ」
百合も雑誌を見ながら考えている
『モデルのバイトとかって影響出ないの?』
「あ〜まぁ一応長いままでとは言われてるから軽くいじる感じかな」
『なるほど』
百合の仕事の関係上そこまでは切るわけにはいかないらしい
『まぁ百合はどんなでも可愛いし似合うよな』
「ふふふ、当たり前よ」
百合は自分に自信があるらしい、余裕の笑みを浮かべていた
「終わった」
霞が終わりこちらへ戻ってきた
「じゃあ私が行くから、龍司は最後ね」
『了解』
百合に先を任せて、俺は最後に切ることになった




