誕生日 1
『なんだこれ…』
俺は今電車に揺られながら、二駅先の目的地へ移動している
中間考査も終わり、土日はゆっくり寝ようと思っていたら、朝から百合に起こされた
「ごめん今日大事な用事があって、これ買ってきてくれないかな?」
『いいけどこれ、結構時間かかりそうだね』
「あ〜ごめんね、お昼帰ったら美味しいご飯用意しとくからさ」
(美味しいご飯用意する時間があれば、この買い物出来るんじゃ…)
そう思ったが、用事とやらが何かわからなかったので言わなかった
(まぁ暇だからいいか)
正直一日寝ていたい気持ちもあったが、明日も休みなので明日こそ怠惰な一日を過ごしたいと思った
(そういえば最近は、一人で出かけるのに髪をセットされなくなったな)
五人と今の関係になってから、百合も忙しいのか俺の髪のセットをあまりしなくなった
(母さんも最近は、帰るの遅いしなぁ)
母も仕事が忙しいのか平日は帰るのが遅く、朝は早めに出ていた
(土日も月末まで、休みがないと言っていたな)
月末に休みが合えば、久しぶりに母さんと食事にでも行ければなと思った
(月末にはついでに母さんに、髪を切ってもらうか)
中学一年からずっと伸ばし続けた前髪を、そろそろ切ろうと思う気持ちが出て来ていた
俺一人だったら気にしなかったのだが、周りに女の子達がいる今の現状で、俺も少しは変わらなければと思えたのだった
『ところでこのリストはなんだろうか…』
買うものがバラバラ過ぎるのと、物によっては店が指定されているためわざわざ二駅移動する事になった
(ここに来るのも久しぶりだな)
母や姉に連れられて前に来たことがあったが、一人で来るのは初めてだった
『時間もあるしゆっくり見て回るか』
電車を降りて駅前に出ると、少し先に目的地があるので移動した
(とりあえずこの書店で漫画の新刊をって、これ地元の書店でも買えるだろ)
百合の買い物リストは色々とツッコミたい事が書いてあるが、気にしたら負けだと思った
少し先に見える女性専門の店で、下着を買うというのは一度書いたが横線で消してあった
(さすがにこれは無理だろ)
百合のサイズはわかってはいるが、男の俺が買うのには勇気が必要だったので助かった
『だいたいこれで終わりだな』
リストと手持ちの物を見て、ほぼ埋まった事を確認した
念の為、買い物用のリュックサックを持ってきていたので、両手が塞がる事はなかった
(二時間くらいかかったな、帰ったら昼を少し過ぎるくらいか)
買い物が終わり、また電車に乗るのに駅に向かっていたらとある店が目に入った
『ん?そういえばあそこって』
前に一度、母と姉に連れてこられたアクセサリーショップだった
この前六人で同じアクセサリーをつけるのはどうかという話があり、少し参考にしようと店に入った
「いらっしゃいませ〜」
店に入ると女性の店員が二人いた
「こんにちは、何かお探しですか?」
明るくて笑顔の似合う店員に声をかけられる
(少しゆっくり見て回りたかったが、まぁいいか)
帰る時間も考えて、せっかくなので店員に相談する事にした
『あの、友人達と共通で持てるアクセサリーみたいな物が欲しくて』
「ふむふむ、相手は男の人ですか女の人ですか?」
『あ〜、女の子ですね』
「へ〜お兄さんモテるんですね、何人ですか?」
『自分含めて六人ですかね』
「ろ、六人!?お兄さん抜いても女の子が五人…」
俺の言葉が信じられないのか、店員は驚いていた
『あ…まぁそうですね』
「六人か〜、全員があなたの事を好きなら、指輪とかもありですけどね」
「あはははは、そんな馬鹿な話ないですよね」
「ハーレムとかで所有物にするなら、この首につけるチョーカーとか」
『う、う〜ん…』
「うちはオーダメイドも受けているのですが、軽めならこれはどうですかね?」
店員が指したものを見ると、キーホルダーだった
『あ〜、これいいですね』
デザインは同じで、誕生石に合わせた色の装飾と小さめの誕生石が嵌め込んであった
値段もお手頃で、この前の桜の誕生日の件の時に全員の誕生日は聞いていた
(あれ?そういえば今日って、まさかな)
百合の用事とやらがふと気になったが、期待はしないようにした
『すいません、これお願いします』
「ありがとうございます、一つ一つわかるように包みますね」
『あ、助かります』
店員が気を使って中身がわかるように、誕生石の名前の入ったシールを貼ってくれていた
「また来て下さいね〜」
『ありがとうございます、また来ます』
(週明けにみんなで集まった時に渡そう、みんな喜んでくれるかな?)
五人の顔を思い出しながら、家に帰るのであった




