勉強会 1
『んんっ?』
少し息苦しく感じて目を開けると、百合に頭を抱きしめられていた
(ああそうか、昨日は百合と寝たんだっけか)
目の前にある柔らかいものといい匂いに、もう一度夢の中に落ちそうだったが、ふと時計を見ると予想をしていない時間だった
『あっ!』
約束は十時、現在の時刻は九時を過ぎていた
『百合、おい百合!』
「ん〜?何〜?」
『もう九時過ぎてるよ、約束は十時じゃないのか』
「あ〜、目覚まし忘れちゃった」
テヘっみたいなリアクションを見せて来て可愛いとは思ったが、焦る様子はなかった
「龍司といっぱい一緒にいたかったのよ〜」
そう言いながら首に腕を回してくる
「朝のちゅ〜」
『わかった、わかったから準備しよう』
一度だけ百合のお願いに応えて、ベッドから出た
『あれ、そういえば十時って』
「真白ちゃんの家に集合よ」
『急いで準備しろ〜!』
「ふふふ」
勉強道具は準備してあったので、急いで寝癖を直して着替えて家を出た
『も〜朝ご飯は食べれなかったし、髪もセットしてないけどいいのか?』
「ん〜、今日はいいでしょ」
百合は何かをわかってる様子だったが、それは聞かない事にした
(女の子には秘密があるんだっけか)
霞の家に集合は珍しいなと思ったが、深くは考えなかった
霞の家に近づくと、俺に気がついたのかパールの声が聞こえてきた
(お?今日も気がついてくれたのかな。ん?あれは桜か)
霞の家の前で、困った様子の桜がいた
『桜おはよう、どうしたんだ』
「あ、龍司君。この犬がずっと吠えてて真白さんも入れてくれないの」
「ふふふふ、やはり黒音は敵」
霞が門の中でパールの頭を撫でていた
(恋敵って事かねぇ、そういえば一葉達がいないな)
門の外にいる桜と門の中にいる霞が門を挟んで対峙していたが、柊姉妹の姿はなかった
「ふふふ、この子は私には吠えないものね〜」
「強者は理解している」
スッと、百合は門を開けて中に入る
「先に上がってていい?」
「どうぞ」
百合は霞の家の中に入っていった
『そういえば、一葉や双葉はまだ来てないのか?』
二人の姿が見えないので、まだ来てないのかと思ったが
「二人はもう中にいる」
『あ〜先に来ていたのか』
「いいから私も入れてよ〜」
桜がいい加減泣きそうになっていた
『霞』
「わかった、パール、めっ!」
霞が言うと、パールが静かにお座りした
『ほら行くぞ、桜』
「うん、ありがとう」
(この二人が仲良くなるのはまだ時間かかりそうだな)
門の中に入りパールの頭を撫でてから、家の中に入った
『お邪魔しま〜す』
「龍司君いらっしゃ〜い」
靴を脱いで上がるとエプロンをつけた一葉が奥から来た
(んっ?)
朝食を抜いていた俺は、すぐに何かいい匂いがするのに気がついた
「今ご飯作ってるから、上がって先に勉強しててくれていいからね」
「龍司君、こっち」
霞に手を引かれて奥のリビングへ移動した
リビングに入ると隣のキッチンで一葉と双葉、そして百合が料理をしていた
『いい匂いがする』
「朝ご飯食べてないっていうから早めに作るね、今日はカレーだよ」
「ここに座って」
大きめのテーブルには椅子が六つ置いてあり、俺は片側の三つのうち真ん中に座るように言われた
「もう少しかかるから勉強してていいからね」
『あ、すいません。ありがとうございます』
俺は椅子に座り、持ってきた鞄から勉強道具を取り出した
「あ、ご飯まだ炊いてなかった」
「私がやるよ、真白ちゃん研ぎ方教えるからやってみようか」
「はい」
百合に教わりながら、霞が米を研いでいた
(一葉と双葉は…)
「お姉ちゃんサラダは?」
「今日はこれとこれとこれを使うよ」
冷蔵庫から野菜を取り出していた
『それで、俺の斜め前に座る桜は』
「出遅れたのよ」
パールに入れてもらえなくて立ち往生をしていたので、桜は料理組には入れなかったらしい
「私も料理は出来るんだから!今度食べてよね」
『ああ、わかったよ』
今日食べれない分、次回に期待する事にした
(お腹が空いて集中出来ないな)
一応勉強は始めたものの、匂いに空の胃袋が反応して集中は出来なかった
(しかし、エプロン姿いいなぁ)
料理部に参加していた時は、周りの女子に興味はなかったのであまり見てなかった
いざ見てみると、やはり異性のエプロン姿には男は惹かれるものだと思った
(個人差はありますってか、う〜む)
俺が見ていると、一葉が視線に気がついて笑顔を向けてきた
「龍司君どうしたの?」
『ん〜?みんないいお嫁さんになりそうだなぁって』
「えぇっ!?」
「お姉ちゃん!」
一葉が驚いてお玉を落としそうになったが、双葉がなんとかキャッチしていた
「こら、料理してるのだから変な事言うのはやめなさい」
『すいません』
料理組は照れているのか、顔を赤くしていた
(下手な事は言わないようにしておこう)
俺は料理が出来るまで、黙っていることにした
「ぐぬぬ」
桜だけは輪に入れなくて悔しがっている様だった
「出来たからテーブルの上片付けてね〜」
勉強道具をしまい、テーブルの上を一度拭いた
「ドレッシングは和風と胡麻だけど大丈夫?」
『大丈夫です、和風をもらいますね』
ご飯とカレーが盛られた皿と、きゅうりとトマトやレタスなどの彩りのあるサラダが、テーブルの上に並べられていく
『凄い…』
「え〜、普通だよ〜」
料理もそうだが、俺一人に女の子五人で食べる今の状況にも感動していた
(俺って幸せだよな)
そう思わなかったら世の中の男達に申し訳ないと思い、五人には感謝をした
「ではいただきます」
『いただきます』
先程と同じ席に座り、左右を百合と一葉に挟まれた。正面には霞が座りその左右に双葉と桜がいた
「皆食べれるように甘口にしてるからね」
『双葉は甘口派だもんな』
「言わないでよ、恥ずかしいなぁ」
双葉が食べながら照れていた
「私も辛いのは苦手ね」
桜も甘口派だったらしい
「ふ、黒音はおこちゃま」
「そんなことないわよ!」
霞が黒音に言うが、嫌味ではないみたいだった
(少しずつでいいから仲良くなってくれるといいな)
そう思えた
カレーを掬うと、たまに大きいじゃがいもや人参がいた
『これってもしかして』
「私が切った」
霞が手を挙げた
「最初はそういうものだからいいのよ、気持ちが大事なの」
「うんうん、だから真白さんが切ったそのままで、龍司君には食べて欲しかったんだ〜」
『なるほど、うん、美味しいよ』
「ありがとう」
霞は喜んでいた
(具材は大きめでもちゃんと火を通してあってフォローしてるのも流石だな)
皆の優しさに感動した
『ご馳走様でした』
「ご馳走様でした」
『あ、俺が洗うよ』
流石に全てを任せるわけにはいかなかった
「あ、私も」
「私もやる」
俺と霞と桜で、片付けをする事になった
桜に運んでもらい、俺と霞で洗っていた
「龍司君」
『ん?』
「美味しかった」
『ああ、美味しかったよ』
「良かった」
横で、頬を染めながら微笑む霞が可愛かった
「では頑張りますか」
早めに昼食を取れたので、少し休んだ後、途中途中に休憩を入れながら勉強をすることにした
おやつの時間には、六人でクッキーを焼いて絵を描いたりしたが、五人の名前を書いたクッキーを一枚ずつと俺の名前を書いたクッキーが五人数分用意されていて、お互いに食べ合うという羞恥プレイをされたのが恥ずかしかった




