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百合と策略 1

「今日はいいから、先に一人で帰りなさい」


姉と登下校をする日だったのだが、朝は何も変わった様子がなかったのに、放課後部室に行ってすぐに帰るように言われた


『他の皆は?』


「私達だけで話したい事があるから、今日は大丈夫です」


皆、こちらを見て頷いていた


『わかりました』


俺は一人で、先に帰る事にした




(なんかみんなの様子が、おかしかったな)


俺が何かをしてしまったのだろうか、朝や昼間の様子を思い出す限りは、問題なかったはずだ


(俺はみんなにとって、上手く立ち回れているのだろうか)


普通に考えて、俺なんかに五人の女の子が好意を持つ事が、いまだに信じられなかった


(今更、嘘とか罰ゲームでしたとか言われたら、もう俺は二度と人を信じる事は、出来ないだろうな)


もしもその時は、みんなの前から消えてどこか遠くに行こう、そう思えた


本当の事を言うと、いまだに俺は自分の今の立場を信じれてない


もしかしたら中学の時みたいに、俺のために母や姉が何かをしてくれてるんじゃないかと思ってる


(こんな美味い話無いもんな)


一人になるとやっぱり悪い方向に考えてしまう、俺はいつまでも成長してない


ネガティブな事を考え過ぎて、寄り道をする気にもならず帰宅した








帰宅して暫く経つと、姉が帰ってきた


『おかえり百合』


「ただいま」


『今日は何を話してたの?』


「ん〜、内緒」


『そうなんだ…』


いつもなら隠さずに話をしてくれる事が多いのに、今日はやはりおかしかった


「どうしたの?」


『いや、なんでもないよ』


「あ〜わかった、教えてもらえないから不貞腐れてるんだ」


『別に』


俺の事はなんでもわかるって顔をしている、それが悔しかった


「はいはい、大丈夫ですよ〜」


百合は俺の頭を抱きしめて、自分の胸に引き寄せて頭を撫でてきた


「よしよし、良い子だからね〜」


『もう、子供扱いして』


そう言って頭を起こして離れようとすると、真剣な顔をして唇を重ねてきた


「んっ」


少しして顔を離すと、


「子供じゃないよ、私の大切な男だよ」


そう言って抱きしめてきた






「女の子には秘密があるんだよ」


不安そうにしてる俺を心配したのか、百合はそう言った


『今日の放課後になっていきなり言われたら、それは不安になるでしょ』


「ふむ、まぁそれだけ私達の事を考えてくれてるということかな」


放課後に話をしていた事は教えてもらえなかったが、俺に気を使ったのかそう話をしてくれた


『そりゃまぁ』


(ここ最近毎日誰かしらといたしなぁ)


もしかしたら俺も、皆に依存をし始めてるのかもしれない


「とりあえず安心していいわ、近いうちに色々とわかるだろうし」


『色々っていくつもあるの?』


「そう、女の子には色々と秘密があるの」


『なんかまた誤魔化されたような』


「ふふふ、明日は私達用事があるから一日フリーでいいわ、日曜日は勉強会の予定だから空けときなさい」


『わかった、明日はゆっくりしておく』


姉の事を信じて、答えがわかるまで待つことにした








土曜日の朝、起きたら百合はいなかった


『九時か』


母も仕事でもう家にはいなかったので、一人寂しく朝食を取った


(考えてみると、俺は本当に恵まれているんだな)


優しい母と姉がいて、最近は周りに女の子達が沢山いてくれるようになった


忙しいとか疲れるとか思う事もあるが、こうやって一人になると寂しくて、皆の存在の大きさに気がつく


(大樹が羨ましいとか言うのも、間違いではないんだな)


霞や双葉や桜が、教室では毎日のように俺の傍にいる


それでも交際宣言をしていないので、チャンスがあると思っている他の男子が告白をするらしい


その時は正直に婚約者がいるからと言ってるらしいが、俺との関係を見たら信用出来るわけがない


(いつか、離れていってしまうのかな)


俺の今の立場を考えれば中途半端で、いつ愛想つかれても仕方がないと思った




(う〜ん…やはり一人じゃネガティブにしかならないな)


時間も昼に入ろうとしていたので、少し外の空気を吸いに行こうと思う


(服装はまぁ無難なやつで、髪型は今日はいいか)


気分転換がしたかったので、あまり拘らずに家を出た








土曜日の駅前は、遊びに行く若者や休日でも働くサラリーマンと、様々な人がいた


(なんか久しぶりだな)


一葉を助けた日を最後に、こうやって外で人間観察をする日はなかった


(ん〜やっぱり周りに人がいるとうるさいから、深く考え過ぎなくていいな)


家に一人でいるとどうしてもネガティブな事を考えてしまうので、これくらいの雑音があるのが良かった


(あれ?あそこにいるのって)


遠くに百合や一葉、霞に双葉と桜の五人がいるのが見えた


(今日は皆で遊んでるのか)


買い物をしていたのか、皆紙袋を持っていた


(百合はセンスあるし、服とか買ってるのかも)


休日も皆で仲良く過ごしてくれてるのが正直に嬉しかった


(ちょっと、寂しいけどね)


五人はこちらには来ず、反対方面へと消えていった


ここで普通なら追いかけて見つかるまでが王道なのかもしれないが


(今日は五人で楽しんでね)


フラグは折っておいた






(う〜む)


前は見る人見る人を自分なりにコーディネートするのが楽しかったのだが、今日はそんなにする気にならなかった


(一人で暇だったから、やれてたのかねぇ)


そんな事を考えてると、目の前で五歳くらいの男の子が転んだ


『大丈夫か』


俺は咄嗟に立ち上がり、近づいて起こしてあげた


「うっ…ぐすっ」


『泣くな泣くな、男だろ』


泣きそうになっている男の子の頭を撫でてやる


「お姉ちゃん」


『ん?お姉ちゃんと来てるのか、近くにはいるのか』


周りを見ると、こちらに近づいてくる女性がいた


「すいません弟が、ありがとうございます」


『いえいえ、今少し転んでしまったので起こしてました。お姉ちゃん来たからもう大丈夫だよな』


「う、うん」


『うん、良かったな』


また男の子の頭を撫でてやると、笑顔になっていた


「あれ?もしかして高梨君?」


『ん?』


そう言われて目の前の女性を見るが、記憶にない


「あ〜話とかしたことないもんね、同じクラスなんだけど」


『あ〜そうなのか』


見覚えはないが、活発そうな女子だった


「高梨君って普段教室では静かだけど、優しいんだね」


『ははは、ありがとう』


(なんか久しぶりに他の女子と話したな)


「弟の事ありがとう、また学校でね」


『ああ、そうだね。お姉ちゃんと仲良くするんだぞ』


「うん」


二人は手を繋いで歩いていった


「ねぇあのお兄ちゃん、お姉ちゃんの彼氏?」


「違うよ〜」


何か去り際に聞こえたが、よくは聞こえなかった


少し歩いてから二人でこちらを向いて、手を振っていたのはわかった




それから暫く駅前の景色を見ながら、ゆっくり過ごした


梅雨に入っていたので少し曇っていたが、風もあり涼しく過ごせた


『そろそろ帰るか』


雨が降る予報ではなかったが、気分転換にはなったので遅くならないうちにと帰ろうと思った


(あれ?)


帰宅しようと歩いていると、地面に座りこんでいるお婆さんを見つけた


『すいません、大丈夫ですか』


「あたた、ぎっくり腰をやっちまってね」


腰を押さえながら辛そうにしていた


『あ〜きつそうですね、家は近くですか?』


「少し歩いたとこなんだが、動けなくてね」


買い物をしていたのか、近くには野菜などが入った袋が落ちていた


『いいですよ、俺の背中に掴まって下さい』


お婆さんを背負い、近くの荷物を両手に持った


『大丈夫ですか?運ぶので家を教えて下さい』


「あっちだよ、すまんね」


『お気になさらずに』


お婆さんの示した方向に、ゆっくりと歩いて行った




「お兄さん若いね、何歳なんだい?」


『高校一年なので十五歳ですかね』


「そうなのかい、うちの孫と同じだねぇ」


『あ〜、お孫さんがいるのですね』


お婆さんと話をしていたら、すぐに目的地まで着いた


家の呼び鈴を押して少し待つと、俺と歳の近い女性が出てきた


「この子が孫じゃよ」


『あ〜そうなのですね、こんにちは』


出てきた女性は大人しい感じで、優しそうな人だった


先程の状況を伝えてお婆さんを玄関に降ろしてあげると、御礼をしたいと言われたが丁重にお断りした


『たいしたことはしてないので』


そう言って立ち去ろうとしたら、お孫さんに声をかけられた


「あの、隣のクラスの高梨君ですか?」


『えっ?』


「同じ高校なんです」


話を聞くと、向こうはこちらの事を知っていた


(最近目立ち過ぎたのかな)


霞達と関わるようになってからは、一時期は見世物みたくなっている時期もあった


「お兄さん、うちの孫はどうかね?」


お婆さんに声をかけられた


「お、お婆ちゃん!」


言ってる事が理解出来なかったが、目の前の女子は顔を赤くしていた


『礼とかいいので、お大事にしてください』


「うん、高梨君ありがとう」


そう言って家路についた








「ただいま〜」


『おかえり百合』


「龍司ただいま」


飛びつくように抱きついてきた


「寂しかった?」


『ああ、寂しかったよ』


「えっ?本当に?」


俺は正直に、ここ二日間寂しかったのを伝えた


「そっか〜今日は一緒に寝よっか」


『そうだね』


「なんか本当に素直ね、何かあった?」


『何もないよ』


何もない、ただ本当に寂しかっただけなのかもしれない


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