霞と散歩
「相合傘」
今日も朝から、雨が降っていた
(ニュースで、午後には晴れるとか言ってたな)
霞は自分の傘を畳んで、俺の傘に入っている
「この前出来なかったから、今日は出来て嬉しい」
『また今度って言ったもんなぁ』
「うん」
(あの日は二人で、雨の中走ったっけ)
その後の風呂での事や、部屋での事を思い出すと、ちょっと恥ずかしくなってきた
横を見ると、俺と腕を組んでいる霞が、顔を覗き込んできていた
「あの時の事を思い出してるの?エッチ」
『えええ、違うよ』
「嘘、エッチとか思ってない。もっと私の事考えて」
無表情で話す霞は、たまに感情がわからない時がある
(今のは甘えてくれてるのかな?)
『そういえばあの日』
「うん」
『霞を抱きしめた時に、愛おしいと思ったなぁ』
「…」
これはさすがに恥ずかしかったらしい、下を向いて照れていた
「朝からそれはズルい」
『ごめん霞』
「ん〜」
傘を持ってない手で、頭を撫でた
「もっとして欲しい」
『学校に近づいて人も増えてきたし、また今度な』
「む〜」
物足りなかったようで、少し拗ねていた
「龍司君、お願いがある」
昼ご飯を食べ終わって読書をしていたら、霞が後ろから抱きついてきた
『どうした?霞』
読書を中断し、振り向くと霞の顔が目の前にあった
「ちゅう?」
『いや、駄目だぞ』
さすがに周りが見ている前では、出来るわけがない
(てか、俺の身が危ない)
俺の前方では、双葉と桜が目を光らせていた
『それでどうしたんだ?』
「今日の放課後付き合って欲しい」
『お?いいぞ、何か欲しいものでもあるのか?』
「ううん、パールの散歩に行きたい」
(付き合って欲しいってそっちの事か)
『了解、今日は早く帰ろうか』
「うん」
午後には雨が止むという予報だったので、放課後なら大丈夫だと思った
『じゃあすいません、今日は早めに上がります』
「うん、龍司君また明日」
放課後になり、雨は止んで晴れていたので、遅くならないように早めに下校して、散歩に行くことにした
『霞が付き合っていうから、何かと思ったよ』
「昨日雨で散歩に行けなくて、パールが可哀想だったから」
『なるほど』
「あと、龍司君と一緒にいたかった」
『う、なるほど』
「ふふ」
(こういうとこ、ズルい時があるな)
思っている事を素直に話してくれるのは、霞のいいとこだと思う
(たまに、隠して欲しい事も全部言われちゃうけど)
それもまた霞の可愛さだと思うのは、俺の甘さなのかもしれない
帰り道の途中で霞と分かれ、走って家に帰った
(荷物置いて、着替えたらすぐに向かおう)
散歩するだけなので、髪のセットはしなかった
霞の家の近くまで行くと、俺が分かるみたいでパールの声が聞こえてきた
『お待たせ』
「大丈夫」
霞は、パールと家の前で準備して待っててくれた
「今日は龍司君にリード預けるね」
『お、任せてくれ』
そう言った事を、後悔するとは思わなかった
『凄い力だ』
昨日散歩に行けなかった鬱憤と、今日は霞がリードを持ってないので容赦なく引っ張られて行く
『霞大丈夫か?』
「うん、大丈夫」
走るまでは行かなくとも結構早歩きに近く、俺も少し疲れるくらいだった
(やっぱり自分のペースではないと、疲れるものだな)
元気なパールが飽きるまで、ついて行った
「ごめんね、大丈夫だった?」
公園についてベンチに座ると、霞が謝ってきた
『大丈夫だよ、どうした?』
「龍司君に無理させて、嫌だったかなって」
『そんなことないよ、しっかり運動出来て楽しかったよ』
「そう、良かった」
申し訳なさそうにしてた霞が笑顔になったので、俺も少し嬉しくなった
『気にしなくていいから、また散歩してやろうな』
「うん」
霞が抱きついてきたのだが、
「ワンッ」
俺の後ろからパールが飛びついたので、
『危ない!』
霞を押し倒す形になった
『ごめん霞大丈夫か』
「ふふふ、パールナイスアシスト」
そう言って、俺の顔を両手で包んで唇を重ねた
(う〜ん、パールがこれを狙ったのなら頭いいな)
霞が信頼を置いてるのもわかる気がした
帰りは霞にリードを戻し、ゆっくり戻った
「結構汗かいたし、一緒にお風呂入る?」
『入りません、次一緒に入ったら我慢出来ないかもしれない』
「ふふふ、いいよ」
霞は微笑んでいるが、俺は少し顔が熱くなっていた
『また今度な』
「ふふふ、また今度ね」
今度がいつになるかわからないけど、次霞の家に入る時は気をつけないとないけないと思った




