姉の逆襲 1
ガチャッ
ツンツン、ツンツン
(…ん?)
頬に軽い刺激を受けて、徐々に意識が覚醒してくる
誰かが寝てる俺に、イタズラをしていた
姉なら、いつも勢いよく扉を開けて声をかけてくるため、違う人なのかもしれないと寝たふりを続けた
ツンツン、ぷにぷに
つついたと思えば、指の腹で押して弾力を確かめたりしている
「ふふふ、寝てるならイタズラをしちゃうぞ〜」
(いや、もうしてるんだが)
俺を潰さないように、四つん這いにベッドの上に乗ったようだった
「ちゅー」
仰向けで寝ていた俺の唇に、少し重みがかかる
目を開くと、姉の顔があった
『姉ちゃん』
「んー?」
『どうしたの?』
「何が〜?」
「いや、いつもと違うじゃん。姉ちゃんじゃない人かと思ったわ」
「ふーん、誰を想像したのかな?」
(あ、しまった)
『いや、そうじゃなくて』
「私じゃないと思ったら、すぐに起きないとねぇ?」
『その通りです、すいません』
「ふふふーん」
姉は、朝から機嫌が良いようだった
姉に起こされた後、着替えて朝食を食べている
『姉ちゃん何かあった?』
「んーん、何もないよ〜」
姉の機嫌の良さは、この後の事を示唆していたのかもしれない
『これは、どういう事だ』
俺は、姉と腕を組んで登校していた
その少し後ろに、柊姉妹と真白が不満そうな顔をしながら、ついてきていた
いつもなら姉が先に行き、両腕を二人に確保されるっていうのが流れだったのだが…
家から出ると、三人が待っていてくれた
俺の顔を見ると笑顔になり、近寄って来たのだが姉に制止された
「今日は私が独占するから!学校に着くまでに弟に触れたら、二度と触らせないからね!」
笑顔で三人に言うと、俺の腕を引っ張って歩き始めた
そして三人が、距離を空けてついてくる
「ズルいよ〜」
「教室までの我慢、教室までの我慢」
「やはり、姉はラスボス」
後ろから何か聞こえてくるが、少し離れていて聞こえなかった
『そういえばさ、急にどうしたの?』
「何が〜?」
『俺と腕組んで登校とか、もういつもの場所過ぎてるし』
いつも姉と分かれる場所は過ぎていた
「あー、この前の件で私達の関係バレたからもういいかなぁって」
『私達の関係って…姉弟なのがバレたから気にしなくていいのか』
「そうね〜関係はバレてないわね〜」
含みのあるような言い方をしてきたが、つつくと面倒になりそうだったのでスルーをした
ここ最近は、毎日みんなと登校していたので、見られるたびにひそひそ話をされたり、視線が痛かったりしたのだが、今日は過去一酷かった
「嘘だろ、高梨先輩だけはそんなことないと思ってたのに…」
「あの先輩を落とすとか、何をしたんだよ」
「あ、あれが噂の弟君か〜」
「えっ!あれ高梨さん!?」
俺の腕に絡みついてベタベタしてくる姉を、周りは驚いた顔をして見ていた
「また後でね」
そう言って姉は、自分の下駄箱へと向かった
すぐに同級生なのか女子生徒に囲まれていたが、そして俺にも我慢してた三人が近寄ってきた
柊先輩だけは下駄箱が別なので、周りにバレないように手を握って離れていった
そして教室に入るまでは、真白と双葉に両腕を組まれたのだった
教室に入ると、大樹がすぐに寄ってきた
「おいおい、聞いたぜ。お姉さんだったのかよ」
『ああ、姉ちゃん?』
机に荷物を置き、椅子に座りながら答えた
「あの有名な高梨先輩が姉とはな、たしかに苗字一緒だから気がつくべきだったが」
『まぁ俺とは似てないからな』
「いや、姉があの美貌なら、弟もという噂が流れてる」
学校についてから女子の視線を感じたのは、それだったのかもしれない
(もしかして…)
廊下からこちらを覗く女子が、ちらほらいるのは気になっていた
「高梨君はかっこいい、だけど誰にも渡さない」
真白が、後ろから抱きついてくる
「うん、かっこいいよ」
双葉が椅子を寄せてきて、頬を染めながら手を握ってきた
「えっ?え!?まさかお前ら…」
「高梨君は、私の事彼女と言ってくれたから…」
『ふぇ!?』
驚いて変な声が出てしまった、てかあの時の彼女ってそういう意味ではないはずなんだが…
「え…柊さんと付き合う事になったの?」
前の席の黒音が、悲しそうにこちらを見てきた
『お前らなんか色々と、全員落ち着いてもらっていいですか?』
俺は朝から帰りたくなった
「なるほどな〜」
お昼休みになり、弁当を食べながら説明をした
(てか何かあるたびに、説明しないといけないのかこれ)
「別に彼女でもいいと思うけど、その方が告白とか断りやすいし」
「私は奥さんになるからいいけど、彼女を経験するのもあり」
双葉や真白に言われるが、俺が良くないのは頭にないようだった
『二股はなぁ』
「お姉ちゃんもいるから三股よね?」
「お姉さんもいるから四股」
『…』
自分の置かれている状況が、よくわかりました
『一人になりたい、俺は独身でいいんだ』
「それは無理」
二人同時に言う
「なぁ龍司、お前はどのみち刺される運命なんだよ」
『おい、死亡フラグ立てるな』
「高梨君さ、本当はどうしたいの?」
『知らないよ〜』
そんなことしている時間でさえも、廊下から教室を覗く生徒はそれなりに来ていた
(もしかしたら姉ちゃんが、昼に来るかもと思っていたが来ないな)
朝の様子から昼に来そうだったが、放課後まで顔を出す事はなかった
「いや〜さすがに疲れたね」
放課後、部室に行くと柊先輩と姉がいた
『てか姉ちゃんいるのは珍しいね』
「朝からやばいの、一日中質問攻め。昼も行けなかったし」
『だから、退避してきたと』
「うん」
(ああ、やっぱり来ようとしてたのか)
『俺も朝から大変だったよ、姉ちゃんが凄いのはよくわかった』
「でしょ〜?」
笑顔を向ける姉は、褒められたと思ったのか嬉しそうだった
「まぁ土日挟むし、少しは落ち着くでしょう」
『そうだといいけど』
人の噂も七十五日と言うが、それだと一学期終わるなと俺は思った
「あの、高梨君」
柊先輩が近寄ってきた
『どうしました?』
「うぅぅぅ、充電させて〜!!」
泣きそうになりながら、抱きついてきた
「私だけずっと足りないんだよ〜」
そう言って、俺の胸に顔を埋めてきた
(え、姉ちゃんいるけど大丈夫?)
姉を見ると、笑顔でこちらを見ている
「今のうちに充填しておきなさい、土日は会えないんだから」
「えっ!?」
三人が驚いて姉を見た
「高梨さん、そんな…」
「当たり前でしょ、今週は駄目よ」
「…」
三人が黙って震え始めた
(てか、俺ずっと一人で過ごす時間ないよね)
考えてみたら、最近誰かしらとずっといるような
(いや、嫌ではないんだけどさ)
「土曜日は雨みたいだから、家で映画でも観ようかな。日曜日はデートにでも行こうかしら」
姉は楽しそうにしてるが、それ以外は落ち込んでいた
「私も鬼ではないわ、月曜日はまた弟と登校させてあげるから」
「ど、土日さえ我慢すればいいんですね」
「そうね〜そういえば来週の土日は、またバイトだったかもしれないなぁ」
(何この飴と鞭)
誰も姉には逆らえないなと思った
「じゃあ夕飯作っておくから、早く帰るのよ」
帰りも俺を独占している姉がいて、三人が可哀想だったので先に姉を家に送った
その後真白を送り、柊姉妹を送ってから帰宅した
三人と分かれる前に、各自のお願いを聞いてあげたので、土日は我慢してくれそうだった
(姉ちゃんのおかげで色々疲れた、これからどうなっていくんだろうか)
毎日が忙しくて疲れるけど、この日常が急に無くなったら嫌だなとは思った
「龍司〜!起きなさい」
姉が前の起こした方に戻った、おかしかったのは昨日だけだったが
『うわっ、もうこんな時間』
疲れて寝過ごしたらしく、時刻は昼を回っている
窓から外を見ると、予報通りの雨だった
「今日は映画を観ましょう」
姉の両手には、出前を頼んだのかピザらしきものと、菓子類に炭酸飲料という定番セットが揃っていた
リビングに降りてソファーに座り、まずは一本目に俺が観たかったものを観ながらピザなどを食べた
二本目をセットして戻ると、先程までいた俺の横ではなく、俺の膝の上に乗り足を開いた間に入ってきた
「抱きしめて」
そう言うのでお腹の前に手をまわしたが、胸の前に手を持ってかれそのまま手を重ねられた
『姉ちゃん?』
「ぎゅっとして」
そのまま恋愛ものの映画がはじまり、終わるまで俺にくっついていた
「ふー、良かったぁ」
『うーむ、話題作なのもあって良かったね』
「でしょでしょ」
二人で感想を言いあって風呂に入り、土曜日は終わった
「明日は晴れるからデートだからね!」
『了解』
そして二人で眠りについた




