漫画研究部廃部の危機
(土日があっという間に終わったな)
次の日、登校して自分の机に座り、窓の外を眺めながら思い出していた
柊先輩を送ってから帰宅し、リビングに入ると、目の前に鬼が立っていた
鬼といってもうちの姉なのだが…
「ねぇ、これは何かな?」
俺の首を、撫でてくる
『こ、これは、真白が…』
「へぇ、真白ちゃんが二つもつけるんだ〜?」
『えっ!?』
(ふ、増えてる…いつの間に…)
『いや、その』
「許さない」
そう言って、俺の首に噛み付いてきた
『痛っ、姉ちゃんどうしたの?』
「うるさい!」
血が出るほどではないみたいだが、噛んでから皮膚を強く吸われる感じがした
「ふー、満足満足!」
首から離れて、痕を確認して満足していた
『姉ちゃん、どうしたんだよ』
「別に〜あ、やっぱ満足しないわ」
一緒に風呂に入るわよと、手を引かれて風呂へと向かった
『あーあ、これ暫く消えないかも』
姉は先に湯船に浸かり、俺は洗い場の鏡を見て確認した
真白や柊先輩のは、首の左側の上下に離れて痕がついているが、姉のは反対側に少し大きく濃いのが残っていた
「ふふーん、反省しなさい」
『俺が悪いの?』
「そうよ、お姉ちゃんだって色々と思うとこがあるんだからね」
『それはごめん…』
「もう、謝らないでよ。本気で言ってはないわ」
『うん』
「でもなぁ、今回の土日は二人に譲ったし、次の土日は私と過ごしてもらおうかな」
『それでいいなら、俺は構わないよ』
(姉ちゃんも色々と、ストレスが溜まってるのかな?)
過去に姉がしてくれたから、俺が出来る事は返したい
その気持ちは一生変わらないと思う
「私の事、嫌いになる?」
不安そうに、こちらを見てくる
『そんなわけないだろ、大好きだよ』
俺は、好きという気持ちはわからないが、姉への好きは特別だから言うことが出来る
でも最近は、少しずつ他の好きが理解出来ている気がした
風呂から出て、夜は一緒に寝た
今日の夜は、いつもより強く抱きついてきた
「おーす、龍司」
『ああ大樹、おはよう』
「おはよう高梨君」
大樹が、挨拶をしながら近づいてきた
真白は、隣の自分の机に荷物をおいてすぐに、座っている俺の後ろから、首に手を回して抱きついてきた
「お、お前ら」
『いや、何もないぞ?』
「ねぇ、高梨君」
『なんでしょうか、真白さん』
「増えてる」
『うっ』
真白が、首を指でなぞりながら確認をしてくる
「これが私のつけたやつ、これはたぶん柊先輩」
『真白落ち着け!』
「で、これは誰?」
そう言いながら、首を絞めてくる
「浮気者」
『違う、落ち着いてくれ』
(いや、違うはおかしいんだが)
「まじかよ龍司、お前いったい何をしたらそんな事になるんだよ」
『いや、あはは…』
目の前を見ると、黒音がこちらを振り返って怖い顔をしていた
『なぁ、真白』
「何?」
『どうしてそんな事言うんだよ』
真白だけに聞こえるように、小声で伝えた
「牽制」
『牽制?』
そう言いながら、真白の視線は黒音を見ていた
『理由があるなら仕方ないな』
「でも正直気になる」
『それは、色々あったんだよ』
「なぁ龍司、俺にもその色々を教えてくれ!」
『勘弁してくれ』
朝から疲れるのであった
「ねぇ、高梨君」
昼休みに入り、黒音が話しかけてきた
『何?』
「今日、生徒会会議があるでしょ?放課後に時間をもらえないかしら」
『あー』
今日は生徒会と全部活の部長が招集されていて、大事な会議があるらしく、全部活が休みになっていた
「駄目」
真白がすぐに、横からお断りを入れてきた
「なんでよ!真白さんは黙っていて!」
「私の彼氏だから駄目」
「うそっ…」
「龍司まじかよ…」
(おい真白、この二人だけじゃなく、クラスメートまでざわざわし始めたからやめろ)
『はぁ…真白ちょっと黙っててくれ、あと真白とは付き合ってないからな』
そう言っても、あまり周りには信用されてない様子だった
(好きに言えよ、面倒だなぁ)
他人の色恋沙汰で盛り上がるやつらは、正直好きになれなかった
『黒音、いいぞ』
この前誘いを断ったのもあり、今日は時間があるから大丈夫だろうと返事をした
「そうよね、駄目よね」
『だから、いいぞ』
「私なんか…えっ!?」
(こいつ、人の話聞いてなかったな)
「高梨君」
真白が心配そうに近づいてきた
『後で、真白の言う事聞くから』
真白に耳打ちして伝えた
「ちゅー、したい」
真白から、同じく返ってくる
『…了解』
(明日の放課後は、先輩が来る前に行かないとな)
『で、どうするんだ?』
「行くわよ!よろしくね」
『あいよ』
放課後は、黒音に付き合うことになった
会議に出る生徒以外は、一斉下校になった
真白には、今日だけは一人で帰ってもらった
行きたいところがあると黒音に言われ、ついていくことにした
最初は、駅前の書店に寄った
「これ、新刊出てる」
『あー懐かしいな、昔読んでたな』
俺が小学生の頃に連載が始まった、壮大なストーリーで描かれた漫画だった
『まだ続いてるのな』
「長いよね〜、これ私の好きな人と、一緒に読んでたんだ」
『そうなのか』
中学に上がる前までは読んでたような記憶があるが、あの件以降読まなくなった
(幼馴染の影響で、読み始めたからな)
『黒音って好きな人いるのか、彼氏か?』
「興味あるの?」
『いや、別にないな』
「なんでよ!」
「幼馴染でさ」
『話すんかーい!』
ついついツッコミを、入れてしまった
「別にいいじゃない!次行くわよ」
黒音が先に行くので、少し後から追いかけた
駅前から歩いて来ると、家の近くの公園についた
『俺の家ここらへんだけど、黒音も近いのか?』
「うん、そうね」
『へー、子供の頃よく遊びに来たな』
「遊んだよね」
(黒音も、子供の頃に来てたのか)
もしかしたら会っていたかもなぁと思ったが、記憶には無かった
「私の大切な幼馴染がさ、この滑り台が好きでさ」
『あー、俺も滑り台は好きだったな』
「そうよね」
記憶にある頃よりは、ところどころ錆びていた
(ピロリーン)
会議が終わったのか、先輩からメッセージが来た
「聞いて欲しい事があるの」
(何かあったのかな)
先輩の事が心配になり、帰る事にした
『黒音』
「うん」
『悪い、急用が出来たから帰る』
「そう、今日はありがとう」
『ああ、すまんな』
自宅の方へ向かおうとすると
「なんで覚えてないのよ…」
黒音が何かを、言った気がした
『黒音?』
「何でも無いわよ」
『そうか』
先輩の事が気になり、急いで帰宅した
『廃部?』
前日に柊先輩から連絡をもらい、次の日に部員全員で、漫画研究部の部室に集まった
俺、真白、柊先輩と柊先輩の妹の四人がいる
「そう、このままじゃ廃部になるの」
前日の生徒会会議で、五月末までに条件が揃ってない部活は、廃部になると話があったらしい
『でもうちは五人いますよね?』
「実は二年生の子が、親の都合で転校になったの」
俺は一回も会わなかったが、家の事情が複雑でバイトが多く、都合がいいからと漫画研究部に参加してくれていたらしい
(親の離婚とかかもしれないな)
それについては、まだ他の人を誘えばどうにかなるはずだが
「四月から学校長が変わって、部活の参加は一本に絞って集中すべきというのと、新しい生徒会長も同じ考えだったの」
(そういえば、入学してすぐにそんな話があったような)
だがそれは、来年以降の話だと思っていた
他には、部室が埋まってて条件をクリアしてるのに、部室を持てない部活もあるらしいとの事だった
実際は、一人一つの部活という話になれば、他の部活もどうなるかわからない
「私と真白さんはいいんだけど…」
先輩が、こちらを見てくる
俺と柊双葉の二人は、掛け持ちだった
「あと一人も見つかるかどうかで…」
『なるほど』
二人と過ごせる漫画研究部を、最近は好きになっていた
廃部になったら、今の関係も薄くなるかもしれないと思ったが
(俺と先輩の妹が漫画研究部を選んでも、あと一人)
そこが、一番の問題だった
残り約二週間、暫く各自考えようとなり本日の部活動は終わりにした
その後、柊先輩と真白と三人で、下校をしていた
「高梨君、負担をかけてごめんなさい」
『いや、大丈夫ですよ』
「高梨君、どうするの?」
どうするの?とは、漫画研究部か料理部、どちらを選ぶのかということだろう
「正直悩んでいるけど、元々の目的があって、最近はそれもなんとなく薄れてきてさ」
二人が、こちらを見ている
『二人と、これからもいたいなぁと思ってる』
「高梨君!」
二人が胸に、飛び込んできた
『ただ料理はこれからもやりたいからなぁ、たまに先輩とレシピ本とか見ながら作ったりしたいかな』
「私も料理を覚える」
真白も、やる気があるのをアピールしている
『やる気があるなら手伝うよ、だから先輩もう少し頑張ってみましょう』
「うん!」
(最悪は、姉に相談するしかないか)
まずは自分に出来る事をしようと思い、二人を送り届けた




