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土曜日 真白霞

(ピピピピッ)


『九時か、準備するかな』


朝起きたら、母も姉も家を出た後だった


リビングに行くと朝食が用意されていたが、二人共いないということは、髪のセットなどはしないでいいという事だった


朝食を食べた後に寝癖を直し、着替えて家を出た




『あー、やはり雨が降りそうだな』


空を見上げると、遠くに黒い雲が見える


風も、木々が揺れるくらい強く吹いていた


『朝のニュースだと、夕方あたりから荒れると言っていたな』


(帰れなくなる前に、真白の家を出ないといけないな)


少しでも長くいられるように、早足で向かった







真白の家に近づくと、門が揺れているのが見えた


真白の愛犬が来客に気がついたのか、門が倒れるんじゃないかという勢いで何度も飛びかかっていた


『おーす、パール。久しぶりだな』


尻尾を激しく振りながら、撫でてくれと頭を出してきた


『おいおい元気だな、ご主人様はまだかな?』


「高梨君」


真白が、窓から手を振っていた


「開いてるから上がって」


『了解、パールまた後でな』


門の中に入ると、パールが抱きついてきたが、頭を撫でてやり、庭を見ながら家に入った


(本当に、広いんだな)


奥まではわからないが、家が二軒建っていて庭も通常の一軒家の何倍もあった


「高梨君、待ってたよ」


散歩に行くからか、真白は白のブラウスに、青みのかかったデニムパンツで迎えてくれた


『今日はお誘いありがとう、家族は?』


「両親は仕事で、祖父母は旅行に行った」


『あー、真白一人なのか』


「うん、だから何が起きても大丈夫」


『何も起きないからな』


「それは、起きるまでわからない」


『よし、帰ろう』


「待って!」


『冗談だよ、ただ夕方から荒れるみたいだから、状況によっては早めに帰るかもしれないからな』


「わかった、とりあえず上がって」


『お邪魔します』







リビングに案内されると、昼食が用意されていた


『凄いなこれは』


「将来の旦那様が来ると伝えたら、出前頼んでくれた」


(もうツッコむのは疲れたぞ…)


『それはともかく、出前でこのクオリティはやばいだろ』


「弁当もやってる、懐石料理で有名なところだと言ってた」


『正直、これは申し訳なさすぎる』


(これで真白を蔑ろにしたらどこかの山に埋まるか、魚の餌になるかもしれん…)


「気にしなくていい、お腹は空いてる?」


『起きてすぐに食べたけど、軽めだったから食べられると思う』


「そう、それなら食べよう」


『いただきます』










『ご馳走様でした』


「ん」


用意されていた弁当を食べ、少しゆっくりしていた


『午後はどうする?』


「まだ大丈夫そうだから、早めに散歩に行く」


『そうだな、それなら多少降ってても帰れそうだ』


そして、玄関の前で待っていたパールの散歩に、少し広めの公園に向かうことにした








『さすがに空いてるか』


天気予報や空模様もあり、人はそんなにいなかった


すぐ帰れる近所の子供なのだろうか、親が近くのベンチに座って見守っていた


「高梨君、これ」


『おお、これやってみたかったんだ』


真白からフリスビーとテニスボールを受け取った


『それ!ほら取っておいで』


テニスボールを投げると、すぐにパールが追いかけた


咥えて戻ってくると、手に載せてきてもう一度と言ってるかのようなアピールをする


『お前は頭いいなぁ』


またボールを投げてあげる


それを何度も繰り返した





「高梨君、こっちも」


『了解、ほらパール、フリスビーだぞ』


少し力が入ってしまった、一回目は低めに飛んでいって、パールもキャッチ出来ずに咥えて持ってきた


『すまんすまん、今度こそ』


先程より軽めに高くを意識して飛ばす、パールは追いかけていってジャンプし、見事空中でキャッチをした


『結構難しいんだな』


「慣れだから、何度もやれば大丈夫。先は長いから」


(多少の含みを感じる)


一時間ほど遊んで、徐々に慣れてきた


今日は、真白がどうして俺を慕うのか、確認がしたかったがあまり時間がない


(また今度かなぁ)


そう思ってたら、ポツポツと雨が降り始めた


『真白帰ろう』


「うん」


パールと遊ぶために、真白の家から少し遠い公園に来たため、早めに切り上げた






『うわー、これはやばいな』


雨が降る前に戻れると思っていたので、傘は置いてきていた


「相合い傘したかった」


『それはまた今度すればいいから、急ぐぞ!』


「楽しみ」


走って向かうが、少し家まで距離があり雨脚も強まってきた


『真白大丈夫か?』


周りに人がいないからいいが、濡れたブラウスが透けて下着が見えてしまっている


「高梨君のエッチ」


『いや、隠す気ないだろ』


真白の家に着く頃には、土砂降りで二人共着衣でプールに飛び込んだかのようにびしょ濡れになっていた


「風邪ひくから、先に風呂入って」


『真白は?』


「パールを拭いた後でいい」


『わかった、急いで入る』


「んっ、ごゆっくり」


(ごゆっくりは出来ないから、シャワーだけでいいな)


真白が風邪をひいたら困るので、急ぐ事にした








『おー、凄い』


脱衣所で服を脱ぎ洗い場に入ると、全面檜風呂だった


(これは、旅行でしか見たことないぞ)


入ってすぐわかる匂いが、風呂に入る楽しみを与えてくれる


(今日でなければ、ゆっくり入りたかったな)


洗い場や風呂は、一般家庭の風呂とは違い三倍近い広さがあった


真白を待たせてはいけないので、急いでシャワーを浴びることにした







「高梨君」


『おわっ!真白どうした?』


シャワー浴び始めてすぐに真白が来た


「服濡れてるから洗濯するね、来客用の浴衣があるから」


『あ、ありがとう』


(これは乾くまでは帰れないな)


バタンッ


何かが閉まった音がした


(んっ?)


「高梨君」


『ま、真白さん?』


「ん」


『つかぬことを、お聞きしますが…』


「一緒に入る」


(うわわわ、やっぱりだ〜)


『駄目だ真白、落ち着け!俺達は健全な高校生だ』


「大丈夫」


『大丈夫じゃない!』


「でも風邪ひく」


『わかった、それなら俺が出るよ』


「それは駄目」


『なんとか、折衷案を下さい』


「大丈夫、水着を着てるしタオルも巻いてる」


『なんだ、それなら良かっ…』


真白の方を振り向く、何も身に着けてなかった


『おい』


「あ、忘れてた」


『わざとだろ』


「気のせい」


『もう出るよ!』


「出ようとしたら抱きつく」


『ぐっ』


「お背中流すのやってみたいから、諦めて」


『わかった、もういいから早く温まってくれ』


(風邪をひかれるよりはマシか…)


真白に背中を洗ってもらい、出るのを塞がれたので諦めて湯船に浸かった


真白の洗う音だけが、響いている




「高梨君」


真白が湯船に入ってきた


『とりあえず、くっつくのだけは止めてくれ、理性がもたなくなる』


先程色々と見てしまったので、限界が近そうだった


「別に構わない」


『俺は構うの!』


真白には、少し離れてもらった





『そういえば、凄い風呂だな、旅館かと思った』


「祖父母が旅行が好きでよく行く、だから家の風呂もそうした」


『な、なるほど?』


簡単にそう出来るものではないと思うが、真白の家族はそれなりに稼いでいると聞いたことがあったので、納得をした


『また機会があれば、入りたいかも』


「いつでもいい、毎日でもいい。でも将来的には毎日入れる」


『お前また、そういえばその件を教えてくれる話は』


「ここだとのぼせるから、出たら話す」


『わかった、十分温まったしそろそろ出るよ』


「私も出れる」


『せめて俺が、着替えて出てからにして!』


明るいとこでちゃんと見たら、本当にもたないと思った








風呂から出て少し待つと、真白がお茶を出してくれた


「お揃い」


『何故お前も、浴衣を着ている』


「二人で、旅行気分」


(わざとなのか?今日は攻めてくるな)


真白の本心はわからないが、俺の理性にどんどんダメージを与えてくるのであった







「こっち」


案内され、真白の部屋に来た


(女子の部屋に入るとか、先輩の部屋ぶりなんだが)


先程の、風呂の話の続きをすると言われたため、従うしかなかった


「あっ」


真白に続き部屋に入ろうとしたら、真白が慌てて何かを隠した


(真白にしては珍しい)


「これはまだ見せられない」


『言いたくなるまでは聞かないし、見ないよ』


「小説を書いてる、まだ途中だから」


『なるほど、完成してもし良かったら読むよ』


「うん」


真白は照れていたが、嬉しそうだった







『なるほど』


真白の部屋はお金持ちというイメージとは違い、シンプルに大きめのタンスとベッド、そして本棚があった


ただ部屋は俺の部屋の倍はあるし、家具も全体的に高そうなのはわかる


床で良かったのだが、ベッドに座ってと言われてベッドに座り話を聞いていた




「つまり、高梨君は運命の人」


『いや、そう言ってもらえるのはありがたいのだが、他にも同じような人が出てきたら、どうするの?』


「過去にこんなことなかった、パールも馬鹿ではない」


『いやパールを馬鹿だとは思ってないけど、それで俺を好きって言うのは』


「GWに出逢ってから、意識をするようになった。気がついたら高梨君の事ばかり考えていた」


(有り難いことだ、俺なんかがなぁ)


『真白の気持ちは嬉しいけど、焦らずゆっくり考えて欲しい』


「わかってる、でも日に日に好きな気持ちは高まってるから」


ずっと、俺の目を見つめて話す真白は、本気なんだろうとは思うが


『俺を好きだと言って、人生を無駄にして欲しくない』


「それはない、今のこの時も、一生の宝物」


『うーん』


(まぁ信念というものがあるし、否定するのは失礼なんだよな)


真白の気持ちは大切にしないと、そう思っていたら不意に部屋の電気が落ちた






少し前から、ゴロゴロと、遠くで雷の鳴る音が聴こえていた


『真白大丈夫か』


「高梨君」


目の前にいたはずの真白に、手を伸ばす


(よし掴めた、震えてる?)


暗くて見えないが、真白は雷が苦手かもしれないと思った


『真白大丈夫か?』


「う」


(誰だって怖いものはあるよな)


『真白、おいで』


真白の手を引き、抱きしめた







外では、近くに雷の落ちる音がしている


俺の前で、体を丸めて抱きつく女の子は大人しかった


『大丈夫だ』


「うん」


真白は話かけると答えてくれる


「温かい」


そう言いながらも、雷が落ちるとビクッとして震える


(雨も強いまま止まないか、どうしようかな)


乾いた服を着て、全力で走って帰るという手もある


さすがに傘は、嵐のような風の中では差せそうない


「高梨君」


電気はまだつかず、少し暗闇に慣れた目を真白に向けると目が合った


真白は、震える両手で俺の両頬を包み、顔を寄せて唇を重ねてきた


俺は少し驚いたが、それで落ち着けるのならと、真白の好きにさせてあげた


「ありがとう」


暫く重ねていた唇を離すと、また丸まって抱きしめてきた


俺もまた抱きしめて、全身で真白を包んだ








二時間ほど経ち、やっと部屋に明かりが灯った


急な明るさに目が眩しくて、暫くは真白を抱いたまま下を向いていた


俺が下を向いてると、真白が上を向いて軽く唇を合わせてくる


「好き」


『んー』


吊り橋効果みたいなものだろうか、俺も少し真白の事が愛おしく感じてしまった








『やべぇ、もうこんな時間だ』


停電の事などで、着信が来ていることに気がつかずに放置したままになっていた


停電は復旧したが、外の嵐のような様子はあまり変わってなかった


『もしもし、姉ちゃんごめん』


「あんた、何してんのよ」


『まだ真白の家にいるんだが、ちょっと今日は帰れそうにない』


そう言ったら真白が、胸に飛び込んできた


「あんた泊まるの?」


『ごめん、でも気をつけるから』


「ちゃんと後で報告しなさいよ、お母さんにも言っておくから」


『ありがとう』


姉との連絡を終えて、真白と目を合わせる


『姉にはそう言っちゃったんだが』


「大丈夫」


『ああ、うん。ありがとう』


「高梨君、もしかして…する?」


真白が浴衣の間から、下着を確認していた


『いやしない、流されるのは駄目』


「私はいいよ」


『正直さっき真白の事いいなと思った、今日はこれで勘弁してください』


そう伝えると、真白は珍しく顔を耳まで真っ赤にした


「わかった、ベッド大きいから一緒に寝よ」


『いや、それは…』


「床だと硬いから、明日辛くなる」


(たしかに、明日先輩に迷惑かかることになるのは)


「何もしない、約束する」


『わかった』


そして二人で寝ることにした、抱きしめるくらいはしたいと言われたので、真白の抱き枕になった








朝起きると、昨日の嵐が嘘かの様に晴れていた


「高梨君、おはよう」


俺は横を向いて寝たつもりだったが、気がついたら仰向けになっていた


仰向けになっている俺の上に、真白が乗っていた


「しちゃったね」


『…』


(ん?いやいや)


『いやしてねえよ!』


「バレたか」


(ちょっと一瞬、不安になったじゃねえか)


「んっ」


真白は、いたずらをしたような笑みを浮かべると、そのまま顔を寄せて唇を重ねてきた


「好き」


『ありがとう』


真白が俺に向ける好意の理由がわかったおかげか、少しは受け入れられるようになった




『今何時だ?』


「八時」


『あー、約束があるから帰るぞ』


「寂しい」


『また月曜日、会えるだろ?』


「うん」


濡れていた服は、乾いていたのでそれを着て帰る事にした




『じゃあ真白、ありがとうな』


「うん、また来て」


『パールもまた遊ぼうな』


真白に言われて、大人しくお座りをしているパールにも声をかけた


「高梨君、最後にもう一回」





そして俺は、自宅へと向かった


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