恋愛ゲームの主人公 3
あれは、高校に入学してすぐの頃だった
「あー高校生になったし、彼女欲しいなぁ。お前もそう思わないか?」
目の前の席に座っているクラスメートが、声をかけてきた
俺ではないだろうと、無視して読書をしていた
「いや、お前だよ高梨」
『へ?俺?』
「おう!」
目の前で元気に笑っている男子は、今日初めて話す相手だった
『俺はいいかなぁ』
「なんでだよ!高校生になったら彼女作って、デートとかしたいだろ」
『いや、別に…』
「うわ〜枯れてるなぁ、もっと女の子と親密な関係になりたいじゃねえか」
『そうか?碌なことねぇぞ』
「いやその考えはおかしい、どんな経験をしたらそうなるんだよ」
『何もねぇよ』
(中学生の時に、今までよりも関係を深めたいから恋人になって欲しいと言われて、舞い上がって裏切られたやつがいるんだよ)
『なんて、言えないよなぁ』
「え?何が?」
『別に〜』
「先輩でも同級生でもいい、一緒に登下校したりしたい」
『まぁ、楽しいかもね』
「お互いの家に遊びに行って、一緒に過ごしたり」
『あー、あるね』
「雰囲気良くなってそのまま」
『それは知らん』
「なんでだよ!そういうのよくあるだろうよ」
『いやそうだろうけど、実際経験しないとわからないものじゃないか?』
「まぁたしかにな、そこでこれですよ」
バックから携帯型ゲーム機を取り出す
『どらえ?』
「違う」
『なんだ、お役に立つもの出してくれるパターンじゃないのか』
「そうじゃなくて、これよこれ!」
携帯型ゲーム機の、画面を見せてくる
『春夏秋冬-ようこそハーレム学園へ-って、何これ?』
「ふふふ、これぞ恋愛シミュレーションゲームよ」
『は?』
「つまりだな、これで恋愛のノウハウを得るわけよ」
先程から熱く語る男が、画面を操作しながら説明してくる
『マジでやめとけ』
「いや見てみろよ、この春奈ちゃんは幼馴染でさ、主人公といつも一緒にいるけど、関係が進まないわけよ」
『ああ、うん』
(とりあえず、幼馴染ルートはないな)
「夏希ちゃんは活発な子でさ、主人公の事が前から気になってて、勇気を出して声をかけてくるとこから仲良くなるんだわ」
『うん』
「秋穂ちゃんが良くてさ〜、美人でお嬢様で、主人公が肉食べたいと言ったら、牛一頭買ってくるんだぜ」
『頭おかしいじゃん』
「そして冬美ちゃんは」
『設定とかはいいから』
「いやいや、これ凄いんだよ。全員一周クリアするとハーレムルート入って、そこからは…ムフフフフ」
『俺達まだ、高校生だよな』
パッケージを確認したが、全年齢版と書いてある
「例えばさ、ここの選択肢でセーブしておいて」
『ふむ』
「はい、春奈ちゃんとの選択肢、一緒に帰るか一人で帰るか」
『帰って漫画読みたいから、一人で帰る』
「最低な男だな」
『うっせぇ』
「だが残念だったな、ここで一人で帰ると春奈ちゃんルートは消えて、秋穂ちゃんルートになる」
『なん…だと』
俺が主人公だったら、全力で一人になりたい
「春奈ちゃんルートをやりたいなら、さっきのセーブポイントにロードすれば選択肢をやり直せる」
『便利だな、俺もやり直したい』
「え?マジで」
『あの時選択肢ミスってなかったら、今頃石油王だったのになぁ』
「そんなわけないだろ」
俺達はそれから、話をするようになった
俺は、大樹が好きな恋愛ゲームの主人公には、なることはないと思った




