GW三日目 1
(今日は絶対昼頃まで寝る!)
そう誓って三度寝に入ろうとした俺の部屋に、目覚まし姉ちゃんが現れた
「龍司!起きなさーい」
姉から隠れるために、被っていた布団を剥がされる
時刻は10時頃、窓の外から入る光が、俺の身体を直接温めてきた
「まだ寝てるの?」
『…』
寝た振りを続ける
暫く無視してれば、さすがに今日は諦めると思ったからだ
「ふーん、寝てるんだ?そっかそっかー」
諦めてくれるかと思ったら、寝てる自分の正面にぼふっと何か重みが乗る振動があった
慣れた匂いが鼻に入ってくるので、間違いなく姉が正面に寝てるのだろう
「ふふふ」
目の前から、吐息が届いてくすぐったい
「起きないなら仕方ないよね」
寝てる俺の前髪をかき上げながら、撫でてくる感触があった
(くすぐったいな)
昔から姉は、たまにこういう事をしてくる事があった
結局は、根負けして起きるわけだが
『姉ちゃん』
「はーい、お寝坊さん」
『今日の予定は?』
「お姉ちゃんと、デートだよ」
『わかりました』
ずっと頭を撫でられ続けくすぐったかった俺は、姉によって今日も起こされたのであった
「今日は、お昼を外で食べてから服を見に行こうか」
ルール通り、今日は姉の選んでくれた服装で出かける
姉も、結構気合の入った化粧や服装をしている
『姉ちゃん』
「ん?」
『気合入れすぎじゃない?』
「いいのいいの、今日はデートだからね」
家を出てすぐに腕を組んでくるので、朝もそうだったし甘えたい日なのだろうと、姉に好きにしてもらうことにした
「今日は、ここにしようか」
四月に出来たばかりの、美味しいピザやパスタが食べられるという店、クラスでも女子が話題に上げているのを聞いた気がする
オープンしてすぐの店に入り、案内された窓際の席に座る
姉はパスタのランチセット、俺はピザのランチセットにした
お互い別々に頼めばパスタもピザもシェア出来るからだ
(俺は、場違いではないかな…)
姉と出かける時は、いつもおしゃれな店を選んでくれる
センスがあるとは思うが、労力を割く相手は間違っていると思う
(どうして姉には、彼氏いないのだろうか)
弟贔屓でも足りないくらい姉は美人で、服装などもセンスがあり、気配りなども出来る
目の前で背筋をスッと伸ばし食事をする姿は、堂々としており、周りの客だけではなく、店の外からも視線を感じる
(おい、そこの彼氏さん、目の前の彼女が怒っているぞ)
近くの席に座っているカップルのうち、彼氏の方がチラチラ姉を見ているので、彼女さんの機嫌が悪い
「龍司」
『ん?』
「はい、あーん」
姉がパスタを巻いたフォークをこちらに出してくる
周りの視線に気がついているのか、見せつけたいのだろうニヤニヤしている
「美味しい?」
『ああ、美味しいよ』
素直に食べないと終わる事がないので、素早く口にいれる
「そっか、じゃあもう一口ね、あーん」
(羨ましそうに見てないで、目の前の彼女を見ろ)
先程とは別の席の男がこちらをずっと見ていた
目の前の彼女はあからさまに不機嫌だ
「じゃあ次は、ピザ頂戴」
『はいよ』
手前にある皿から、ピザを一切れ掴み、姉の口に運んであげる
「あー、ん」
手に持ったピザの先端を口に含み、三分の一ほどを奪っていった
(今度はそっちか)
先程とは逆に、周りの席の女性が羨ましそうに見ているが、目の前の彼氏に頼めばいいだろと思った
「あーん、美味しい!」
結局五口ほどで、姉はピザを食べ終わった
周りに見せつけたいのか、ゆっくり食べてるのはさすがに俺でも気がついたが好きにしてもらった
お昼時で、店の外に行列が出来ていたのもあり、周りの視線が気になるので、姉を促して店を出ることにした
その後、姉の行きつけの店に入りいくつか試着をしたのだが、まだ夏には早いからと今日は服の購入はしないようだった
「右と左、どっち!」
『あー、左』
「よし、買ってくる」
恋人でもないのに姉の下着を選択させられる弟、俺は恥ずかしがりながら店から出た
「お一人ですか?」
姉の会計を待つ間に、声をかけられた
年齢はわからないが大学生くらいで、ロングヘアーの綺麗な人ではあった
『いや』
「もし良かったらそこのお店でお茶しませんか?」
(んー?これ俺に言ってるのか?)
周りを見ても俺以外はいない
(あ、勧誘か)
姉や母からは、だいたい声をかけてくる人は怪しい勧誘か、壺を押し付けられると注意をされている
「いやー、今日はお金持ってないので」
『奢りますから!是非!』
お金がないのは姉が財布を預かっているから本当の事で、嘘ではないのだが
「お、ま、た、せ!」
姉が引っ張るように腕を組んできた
目の前の相手を睨みつけている
「うちの彼氏に、何か用ですか?」
「ご、ごめんなさい」
女性は逃げるように、離れていった
このやり取りは何度目だろうか
毎回姉に助けてもらってばかりで、俺は情けない弟に見えるだろう
(でも女性には優しくしろと言われて育ったしなぁ…)
先程の一件で、姉が組んだ腕を離してくれなくなった
周りからの視線が痛くてバカップルに見えてるのかと思ったが、姉には逆らえないので好きにしてもらっていた
暫く歩いたところで、遠くに気になるものが見えた
『姉ちゃん』
「何?離さないわよ」
『いやちょっと待って、あそこ助けてくる』
「あっ」
『少し待ってて』
姉を危険には巻き込みたくないので、少し待っててもらう事にし、駆け出した
「いいじゃんいいじゃん、ちょっとお茶しようよ」
「やめてください」
知り合いに見えたので近づいて行くと、柊先輩がナンパをされているようだった
(柊先輩だよな?)
いつも見る姿に比べて若干違和感を感じたが、助ける事には変わらないので声をかけた
『すいません』
「ああ!?」
『その子、俺の彼女なので失礼しますね』
「え?ちょっと」
「おい!待てや」
柊先輩の手を取り走り出した
ベタな事であるが、手っ取り早いと思ったのでそれで済ませる事にした
200メートルほど離れたところで手を振りほどかれた
「ちょっと!」
『いきなりすいません、もう大丈夫ですよ柊先輩』
「は?あんた誰?」
(ん?柊先輩じゃない?)
目の前の女性が怒っている
「龍司〜」
待たせてた場所から少し離れてしまったため、姉が追いかけてきた
「ちょっと、私を置いて行かないでよ」
『すいません』
「もう!あれ?柊さんじゃない」
(やはり姉も柊先輩と認識してるようだ)
いつも通りの、柊先輩の雰囲気である
「あの、私、柊ですけど、あなたの事は知りません」
俺を睨みながら言ってきた
「ねぇねぇ、もしかして柊さんの妹さんじゃない?」
「え?姉の知り合…い…」
姉を見て驚いている
「ごめんなさい!失礼します!」
柊先輩に似たその女性は、柊先輩の住む家の方角へ走っていったのであった
「あの子、妹さんだよね」
『たぶん、そう』
教室で見る彼女とは違い、地味な格好をしていたので気がつけなかったのが正直なとこであった
その後は、今日のデートとやらに満足してくれたのか、ニ人で家に帰って食事をしてGW三日目は終了した




