GW二日目 1
「龍司〜!起きなさい」
GW初日から色々あった俺は、今日こそは好きなだけ寝るぞと思い、三度目の寝直しをしていた
だがそんな希望は、姉によって打ち砕かれたのであった
いつもの様に姉に起こされ、寝間着のままリビングに入ると、今日は母がいた
『母さん、おはよう』
「龍ちゃん、おはよう」
母は、普段ヘアメイクアーティストをしており、仕事も忙しく、帰りが遅い事も多い
なので普段は、姉とニ人で夕飯を取ることが多いのだが、今日は珍しく昼間から起きていた
「今日は予定ないわよねー?」
『今日はこれといってないよ、少し夕方運動はしてこようと思ってたくらい』
「そうなのね、お姉ちゃんも予定ないみたいだから、久しぶりに三人でお夕飯デートしましょう!」
最近はなかったが、時間がある時は母や姉によく連れて行かれた
家族で外食は、入学式以来かもしれない
「お母さんが楽しみにしてるから、もしランニングに行くなら早めに済ませなさい」
「あー、そうだね」
今はお昼ちょうどなので、一時間ほど運動をして、戻ってからお風呂に入り、少しゆっくりしてから出かける準備が出来る計算になった
焼き立てのパンを一枚と牛乳を胃に入れたら、ジャージに着替えて出かけようとした
「あ、ついでにこれ買ってきて」
姉から、欲しいものを書いたメモを受け取り、家を出た
ただ、この時に重大なミスをしており、後でその事を凄く後悔することになった
家を出て10分ほど経ち、いつものランニングコースを周っていた
毎回同じでは飽きるので、決まった地域を周るパターンと、遠くまで真っ直ぐ行って戻るパターンなどを作って、その日の気分や体調によって変えていた
今日は、先程姉に頼まれた買い物もしたかったので、どちらかというと前者のパターンだった
向かってる最中に、財布がない事に気がついて家に戻ろうとして、前日に起きた事を再現する事になるとは思わなかったが…
『うわっ』
財布を忘れた事に気がついて、来た道を戻ろうとしたら、目の前が覆われた
俺に飛びかかってきた物体に、前日のように押し倒され、ニ日連続尻もちを着くことになった
「ふふふ、また会いましたね」
俺に向けていたずらをしたような、小悪魔的な表情をしている目の前の子は、今日は明るいところで確認出来たため、間違いなく真白霞だということがわかった
(やはり、真白…だが何故)
学校での態度とこうまで違うのか
自分の知る限り、教室でも基本無口で、特定の誰かとつるんではおらず、話かけられれば他の女生徒とは会話している
(男は苦手というか、嫌いらしいんだがな)
多少は噂程度に聞いたことがあったので、目の前の子とのギャップに前日から違和感しか起きなかった
「ランニング中ですか?」
俺が着ている運動用のジャージを見て、そう思ったのだろう
前回みたいなミスは犯さず、学校の指定ジャージではない
『ああ、そうですね、ちょっと財布を忘れて家に取りに帰るとこですが』
「そういうところもあるのですね、また一つあなたの事が知れました」
と、普段は無表情に近いはずの顔が、笑みに溢れている
(てか、やっぱり笑うと可愛いんだな)
目の前の女の子にたいして、純粋にそう思った
あまり目立つ事はしてないのに、告白されている噂は聞いている
それはやはり本人が持ってる魅力のせいだと言う事なのだろう
「タカシマさんは、この近所に住んでいるのですか?」
タカシマ、昨日分かれる時にバレたくなくて、咄嗟についた偽名
それをそのまま呼ばれるのは、申し訳ない気持ちがあるが、この先も部室で顔を合わせる事を考えたら、今の俺を認識されるまでは必然的に隠したくなる
『そうですね、あっちの方かな』
家とちょっとズレた方角を指してみた
「私はこの近所で、いつもは夕方に散歩しているのですが、うちの子、パールっていうのですが、この子が今日は出かけたいというので、タカシマさんに会えたのは運命ですかね」
と、笑って微笑む目の前の子は、本当に嬉しいようだった
(いや、よくわからんけど…何故俺?)
「あれ?龍司?」
これはバレたらやばいなと思ったところで、後ろから声がかかる
「あっ」
振り向くと姉がいた
「そんなところで、何をしてるの?」
地面に座って、横の犬を撫でている俺を、不思議に思ったらしい
「あ、お姉さん」
「あ、いつもの散歩の子」
(ん?ニ人は面識あるのか)
「先程龍司と呼んでましたが、お姉さん知り合いなのですか?」
先程とは違い、少し真白が暗くなった気がする
「あー、こいつ?」
『ちょっ、まっ』(ちょっと、待って!)
「弟だよ」
(あぁぁぁぁぁ、終わった…)
「あ、タカシマさんの弟さんなのですね」
姉の言葉を聞いて、先程よりも笑顔になる
「タカシマ?うちは高梨だけど」
「たか…なし…?」
「うん、あなた一年生よね?前に会った時もうちの制服着てたし、うちの弟とは同じ学年ではないかしら?」
もう俺には、ニ人の会話を止めるすべはなかった
「たか…なし…龍司」
何かを思い出したかのように、真白がこちらを向く
「騙したのですね!」
『…』
(いや違うんだと言ったら、浮気男みたくなりそうだしな…でも正直に言うか…)
『騙していた形になったのは悪かった、でも教室や部室では普段関わらなかったし、今の俺を見せた事はなかったから』
今の俺、髪を上げた姿は、家族以外では柊先輩くらいだ
(怒っただろうか、まぁそうだよな)
おそるおそる真白を見ると、ゴミを見るような目を予想してたのだが、キッと目をこちらに向けているがぷくーっと頬を膨らませて、拗ねてる感じで予想外の反応をしていた
(想像していた反応とは違うな、もっとボロクソに言われると思ったのだが…)
部室での毒舌を思い返せば、当たり前の予想である
「少し、整理します」
手に持ったリードを引っ張り、俺の横にいた犬と帰っていった
「んー?よくわからないけど、あんたが悪い!」
と、姉も来た道を戻っていったので、渡された財布を持って買い物をし、急いで帰宅した
確認をしたら、やはり姉は真白と面識があるようだった
「ん〜!カッコいい!」
「まぁ、いいんじゃない?」
本日は母により、髪型やメイク、コーディネートまでセットされた
ファミリーレストラン的なとこや、気持ち高い店に行くと思っていたので、想像より高い店に行くようだった
いざ店に入ると、周りはセレブ的な人達しかいないように見えて場違いな感じがしたが、周りからは母や姉が目立って見えるらしく、チラチラと視線が向いてるのがわかった
自分にも向いてる気がしたが、このニ人に俺はバランス悪いよなと、少し申し訳ない気持ちにもなったが、料理が美味しかったので忘れる事にした
食事での話題は、学校の事を聞きたいと言う母に、姉が柊先輩の事や今日の真白の話をしていて、母はそれを聞いて嬉しそうにしていた
こうして俺のGW二日目は終わった
ただ少し、真白の事は気になってはいた




