GW初日 3
(ピロリーン)
先輩を、送り届けて帰ろうとしたところで、姉からメッセージが届いた
(もし、そっちが終わってこのメッセージに気が付いたら、カレールー買ってきて。でも遅くなりそうなら、無理しないでいいからね)
すぐに、姉に電話をかけた
「もしもし〜?」
『どういうことだ』
「いや、柊さんの部屋でいい感じだったら、邪魔しちゃうなぁって」
『そんなわけないだろ!』
「え?マジ?ヘタレじゃん…」
『おい、なんでだよ』
「本当に柊さんと、何もなかったの?」
『当たり前だろ、先輩はそんな人でもないし、俺の事も別になんとも思ってない』
「まじか」
(何を言ってるんだ、この姉は)
先輩を勝手にそういう風に見るのはよくないと思う、友達なんだから尚更だ
『で?なんでカレールー?』
「あー、夕方のニュースの特集でさー」
『あーわかった』
誰でも経験があるからわかるだろう
何故夕方のお腹が空く時間に、ああいう特集が組まれるのか
『ルーがないなら肉じゃがにしとけよ』
「いーやーだー、今日はもうカレーの口なのー!」
『はぁ…甘口?』
「甘口」
姉もたまにこうやって、甘え(?)てくる時がある
弟だから姉のために行くしかない
『今送り届けたところだから、少しかかるからね』
「りょうかーい」
少し遠回りして、駅前の方にあるスーパーに向かうことになった
『カレールー確保したし帰るか』
先輩を送り届けた時は、まだ空もほんのり明るく街灯に頼る必要もなかったが、もう明かりがないと暗くて、周りが確認出来ない時間になっていた
ただ帰りの道は、いつもランニングで通る道とほぼ同じのため、後は真っ直ぐ帰るだけだった
(ここ曲がったら、後はほぼ一直線だな)
家まであと少しのところで、暗がりから何かが飛びかかってきた
『うわっ!』
いきなり何かが正面から飛びかかってきて、その勢いに倒され尻もちをついた
(いきなりなんだ?熊か)
目の前にある大きい顔から舌が出てきて頬を舐められる
(ハッハッハッハッ)
その物体の奥で大きな尻尾が激しく揺れていた
(暗くてよくわからなかったが、これ犬か)
たしかゴールデンレトリバー、大型犬の一種だ
ゴールデンの名前の通り、金色や黄色に近い色のふさふさな体毛、大きい体は小さい子供を乗せて走り回れるくらいだろう
その大きな顔から出てくる舌で、俺はずっと頬を舐められていた
『おいおい、くすぐったいぞ、ご主人様はどうした?』
「パール、どこぉ」
少し遠くから女性の声が聞こえてきた
(こいつの飼い主かな?)
「あ、いた」
横にいる犬を撫でてると、飼い主が近づいてきた
「あっ」
飼い犬が、地面に座っている男にじゃれてるのに、びっくりしたようだ
「ごめんなさいうちの子が、大丈夫ですか?」
『いえ、大丈夫ですよ。あれ?まし…』
「まし?」
『いえ!毛が真っ白でふさふさしてていいなぁって』
「えー、白よりはちょっと黄色に近くないですかー?」
(あっぶねぇぇぇ!なんで真白がここにいるんだ、つい名前を呼ぶところだった)
目の前で(うふふ)と笑う女の子は、自分の記憶がたしかなら真白霞という人物に間違いはないが、いつもと違う様子に疑問を持つ
「本当に大丈夫ですか?」
少し黙ってしまった俺に、心配な顔を向けてくる
『ええ、大丈夫です。もしかしたらなのですが、お姉さんか妹さんはいたりしますか?』
「私はひとりっ子ですね、どうかしましたか?」
『いえ、知り合いに顔が似てるなと思って』
「世界に三人は、そっくりな人がいるとか言いますからね」
学校ではまず見ることのない笑顔を、こちらに向けてくる
(むしろお前誰だ…)
そう思ってしまうくらい学校とは別人が、目の前にいるのである
自分だってそこまで詳しいわけではないが、教室内でも誰か特定の個人と仲良く話すわけでもなく、部室でも毒舌キャラだ
(ピロリーン)
(遅い!)
少し時間がかかってしまい、姉からお怒りのメッセージが届いた
『やばい、行かないと』
姉からのメッセージを確認し、すぐにその場に立ち上がる
「もう、行っちゃうのですか?」
『夕飯のカレールー頼まれてたんだ、ごめんね!』
「あのっ!お名前教えてもらえますか?」
『あー、タカシマです』
「タカシマさんですね、また会えますか?」
『機会があればまた!では失礼します』
いつもと違う真白の姿に困惑しつつ、俺はその場から駆け出した
家に帰ると拗ねた姉をなだめつつ、先程の事をうまくぼかして説明したのであった




