放課後ボディガード
柊先輩を、放課後家まで送り届けると決まってから、一週間が経過した
部活動の時間は、最大18時までが基本なだけで、早めに終わるのは問題ないため、送る時間も考え遅くならないように最近は17時頃に下校をしている
料理部のミューティングや金曜日の実習の日は、終わりしだいにしており、それもだいたい17時頃には終わるため、多少は前後しても他の日と同じように下校出来る
先輩が安心して帰れるように、最初は少し離れて歩こうとしたのだが…
「ねぇ、高梨君」
『はい、なんでしょう』
「これは、いったいどういうことかな?」
前を歩く先輩から三メートルほど斜め後ろの位置を維持しながらついて行く
『俺、先輩のボディガードなので』
「そうじゃないの!一緒に帰りたいの!」
『一緒には、帰ってますよ?』
朝の登校だろうが放課後の下校だろうが、男女が歩いていたら、そういう目で見る人もいる
姉と登校する時も、ある程度人が増えて来る場所まで行くと、姉は少し先に行くねと学校へ向かう
「私、目立つからさ」
そう言ってくれるが、俺のせいで姉に迷惑をかけるのは避けたいと思った
『先輩、男女がニ人で歩いてるだけで、勘違いするやつらもいるんですよ』
「いいよ、別に勘違いされても。知らない人には関係ないもん」
『いやー、先輩には迷惑かけたくないし』
「迷惑?迷惑って何?」
『いや、俺なんかと歩いてたらね』
「何それ?その人達は高梨君の何を知ってるの?」
俺は別に周りから何と言われようが構わない、もうそういう経験は嫌というほどしてきたから
でも先輩には、学校で後ろ指を指されるような対象にはなって欲しくない
『恋人とか、そういう関係だと思われるのは先輩には不利益だと思うので』
本人達だけの問題にしたいのに、何故かこういうものは周りは無関心でいてはくれない
特に学生の頃は、知らない男女の事にまで興味を持つやつらもいる
「不利益って何?高梨君の価値は私が決めるから関係ないじゃん」
『いや、でも…』
「わかった!いいよ、私と付き合おう」
少し顔を赤くしながら言ってきた
勢いで言っただけだろうが、そう言われて嫌な男はいない
『先輩』
「何?」
『もっと、自分を大切にしてください』
「うぅー、じゃあ付き合うか横に来るか選んで!」
『はぁ、横で…』
先輩に近づき横を歩く、(別にいいのに)とどちらとも取れない言葉が聞こえたが気のせいだったのだろう
ただ先程よりは、機嫌がよくなったように見えた
「そういえば、そろそろGWだね」
先輩の横についてからは、漫画の話や部活動の事、そして入学して最初の連休の話になった
『先輩はGW予定あるんですか?』
「去年までは結構、旅行とか行ったりしてたんだけど、今年は妹も入学したし私も受験だからね」
『あーうちも似たようなものですよ』
先輩と同じく姉が大学受験の年だ、去年までは毎年旅行に行ってたが、今年は家で過ごす事になりそう
「そういえば、私の妹と同じクラスだけど、話をした事はあるの?」
『いや、ないですね』
部活動も同じでたまに顔を出してるみたいだが、俺とはまだ一度も部室では会った事がない
「顔合わせしたかったのだけどね、妹は教室ではどうかな?」
『んー、喋る機会がないのでわからないですが、結構友達多いのかクラスの中心って感じですかね』
俗に言うカースト上位とか、陽キャって言われる部類なのだろうか
「そっかー、学校ではそうなんだね」
先輩はなんともいえない顔をしてるが、何か思うところがあるみたいだ
『双子ではないけど、先輩の妹だなってわかるくらい似てますよね』
普段の髪型や雰囲気は違うが、なんとなく先輩の妹だなって最近は見ててわかる気がした
「私達ニ人共、お母さん似なんだよね」
『へー、なるほど』
前に、先輩を助けて家まで送った時に会ったが、たしかにお母さん似かもしれない
「あったあった、新刊出てるよ」
先輩の希望で駅前の書店に寄り、お互いが共通して読んでいる漫画を購入した
(そういえばこの先で、あの時先輩を助けなかったら、今こうやって一緒に歩く事はなかったのだろうな)
あれからまだ一ヶ月も経っていない
先輩の心の傷は、癒えてるのだろうかと心配になった
(あの時の事、思い出したりしないだろうか)
買い物後一緒に歩いていたが、先輩は笑顔でいたので問題はなさそうだった
「今日も送ってくれて、ありがとう」
『いえいえ、お気になさらずに』
「もし良かったら、上がっていかない?」
『いや、男を家に上げるのは感心出来ませんね』
「私は構わないし、お母さんも会いたいって言ってくれてるのだけど」
『時間も時間ですからね、そのうち機会があればということで』
「そっか、残念」
先輩にはもう少し警戒心を持っていただきたい
妹さんとかもいるのだから軽々しく男を家に上げてはいけないと思います
『では、帰りますね』
「GW会えないのは寂しいけど、少しの我慢だね」
『あはは、では失礼します』
そういう勘違いさせるような事を言うのは、やめたほうがいいですよ先輩
(高校に入学して一ヶ月か、なんかあっという間だったな)
死んだように過ごした中学時代、終われば一瞬だったが過ごした日々は地獄のようだった
あの頃に比べたら、今は明るい生活を送れていると思う
それも全て家族のおかげだなと思いながら、家路についた




