漫画研究部 1
『さて…行くかな』
教室を出て漫画研究部の部室へは、隣の棟へ移動しなければならない
俺が通う桜木高校は、四階建てで管理棟と特別棟ニつの棟に分かれており、管理棟の一階には全学年の生徒及び教師用の下駄箱があり、職員室や保健室などもある
ニ階から四階までは、中央階段を挟んでAからFまでの三クラスずつあり、各階BとEの教室の前に、特別棟へ繋がる通路が作られている
なおニ階のB側にあるニつの棟を繋ぐ通路に広いスペースがあり、そこに売店があるため三年生の教室があるニ階は有利で、一年生の四階は不利となっている
何が不利か?個数限定のお弁当などは、なかなか買う機会がないと大樹が愚痴っていた
特別棟には各部活の部室、美術室や化学室などの授業をするための教室がある。俺が所属する漫画研究部とは別の、もう一つの部室もこちらにあるけどそれはまた後で
文化系の部活でも人数が多い部活は、規模の関係か、なるべく下の階に部室が貰える。授業でも使う美術部や合唱部などの部活は二階である
残念ながら漫画研究部は人数が少なく、弱小部の一つとなってるため特殊棟四階の一番端にある。広さは畳でいうと八畳くらいの広さで、そこに本棚や机があると結構狭く感じるもので…
部費も少ないので過去の先輩達が残していったものや、自前で用意したものが主な備品となる。活動内容としては漫画を描いてる人もいれば、俺の様にただ読書をしに行くだけの人もいる
読書が部の活動なのかと聞かれればなんとも答えにくいものだが、部長がいてくれればいいと言ってくれてるので、人数稼ぎとしてお邪魔させてもらってる
『今日は何人いるのかな?』
入部してまだ数回しか通った事ない部室の扉を開きながら思った
(俺含めて五人いるらしいのだが、まだニ人しか会ったことないんだよな)
入学してすぐに図書室に読みたかった本があるという噂を聞いて、探しに行ったのが命取りだった。そこで漫画研究部の部長に、捕まってしまったのだ…
「ねぇ、何を探してるの?」
『え?いや…ちょっと◯◯◯◯ってタイトルの本ないかなぁと…』
「ふーん…ね、それうちの部室の本棚にあるかも、ちょっと見学に来ませんか?」
『部室ですか?』
「うん、漫画研究部っていうの」
図書室の本棚を見ながら、一冊一冊確認してる探す姿が気になったのか声をかけられた
『んー?それってついて行ったら、厳つい黒服が出てきたり、壺買わされたりします?』
「んーそうだなぁ、本日限定価格でお安くしとくよ!!」
『ありがとうございます!失礼します!』
「嘘!嘘だから待って!!」
(見た目地味系な人なのにノリがいいんだな…)
「なんか、凄く失礼な事考えてない?」
『いや、そんな事ないです! でもなんで俺に声かけたんですか?』
「え?さっき私が届かなくて困ってたら、本を取ってくれたよね?」
『あー…』
(なんかやった気もする…)
本探すのに夢中で、無意識に取って渡したかもしれない
「覚えてない?」
『いや、たぶん…やりました』
「そんなに集中して、探してたんだね」
『はい…すいません』
「謝らなくていいの、で…どうかな?部室来てみない?」
『あー、じゃあせっかくなので…』
図書室を出て、先輩について行くことにした