姉の提案 1
「私はさ、弟には幸せになって欲しいの」
過去の事を思い出していたのか、暫く黙っていた高梨君のお姉さんが口を開く
「過保護過ぎるかもしれないけどね」
『……そんな事はないと思います』
彼の過去を知らない私にはまだそれしか言えないが、お姉さんがやってきたことは大変だったのかもしれない
「クラスに友人も出来たみたいだし、柊さんとの出会いを聞いた感じだと少しは良くなったのかなぁ」
『初めての会話でしたが、冗談も言ってくれて面白い人でした』
「同じ学校の人…特に同級生に関してはまだわからないけど、柊さんは私と同じで歳上だから慣れてたかも?」
『そうなのですね』
過去に何かあって家族が支えてくれたおかげで彼も変わる事が出来たのであろう
「ところで確認なのだけど、柊さんは弟の事どう思ってるの?」
『え…』
「金曜日のお礼はわかる、でもそれだけではないのかなって」
高梨君のお姉さんが真剣な表情でこちらを見ている
(この気持ちを伝えていいのだろうか)
『好き、なのだと思います…』
「命を助けてもらったわけではないし、一時の気の迷いではないかな?それとも、あの顔を見たから?」
顔…はかっこいいと思った、助けてくれたのもそう
「普段の弟だったら、そう思わないわけだよね?」
『それは…まだ、知り合ったばかりでしたから』
金曜日の事が起きるまでは、私の都合で参加してもらった同じ部活の後輩でしかなかった
「中途半端な気持ちなら、弟には近づかないで欲しいと思ってる」
過去に何かあったからこそ、心配しているのは私にもわかる
『私を助けてくれて…その後の優しさに惚れたと思います…』
顔が熱くなってきたのを感じる
「んー、本気と言うならさ」
『はい』
「上で寝てる弟に、キスしてきて」
…
……
(………えぇぇぇぇぇ!?)
「好きなら、その気持ちを見せて欲しい」
顔どころか耳まで熱くなってきている
実際は真っ赤になってるのではないだろうか
でも自分の気持ちが間違ってないと証明するためには行くしかない
『わ、わかりました』
立ち上がり、リビングのドアに手をかける
「弟の部屋はわかるの?」
『………わかりません』
顔が熱くてヤカンみたくなってそうだ
『あはは、OKOK!その気持ちを見せてもらっただけで十分だよ』
元の場所に戻るように言われる
「試して悪かったと思う、ごめんなさい」
『い、いえ』
「でもそれだけ弟が大切なんだ、二度と裏切られて欲しくないから」
試されたのはちょっと恥ずかしかったけれど、彼の事が本当に大切だからと言われたら文句など言えない
「お詫びと言ってはなんだけど、柊さんが望むなら弟との事協力しようと思う」
『本当ですかっ!』
彼の事を一番に知ってるお姉さんが協力してくれるならチャンスがあるかもしれない
『でも…』
「でも?」
『私なんかが、彼の横に立てるかどうか…』
「立てる立てないは本人達の問題で、他人が決める事では無い!」
『そうですよね…』
「それにうちの弟は、別に高嶺の花ってわけでもないから」
『そんなことないです、かっこいいし優しいし…』
「あれだって私と母が丹精込めて育てたからね、そりゃいい男に仕上がらないと頑張った甲斐がない!」
(過去に何かあって、近くにこんな綺麗な人がいるのだから手強いかもしれない…)
「それに柊さんも悪くないと思うんだけどなぁ」
『えっ?』
お姉さんが身を乗り出し、両手で頬を触り髪をかき上げる
「うむ、素材は悪くない」
『本当ですか?』
「女性は化粧でいくらでも化けれるし、内面とかもっと自分に自信を持つのが大事だよ」
『それもそうですよね』
正直自分に自信がない、目立たないようにしてきた部分もある
「まぁ外面に関しては、任せてくれていいから!」
『ありがとうございます、頑張ります!』
とりあえず連絡先を交換しようと、高梨百合さんの名前が追加されたのであった




